〜天河真嗣の記憶スケッチみたいな〜

というわけで、原作の肩書きなんかを背負っております天河でございます。
製作発表の席でも明言しましたが、
この<トロイメライ>は僕が高校の時分に書いたシナリオをベースにしている作品。
旧作と共通するキャラクターと、リメイク(と言うべきなのかな)に当たって新規に作ったキャラクターとが
夢の共演を果たすステージとも言えるわけで。
今回は主人公キャラクターが全員出揃った記念と言うことで、
原作シナリオで作った設定などを中心にマル秘バナシを明かしていこうかと思っております。
ただ、原作シナリオも既にデータ自体が物理的に失われている為、
多分におぼろげな記憶が頼りなのですが………。
(天河 真嗣)



■変わらざる主人公たち
それぞれの頭文字を取って、アフシェトリオ(たのきんトリオ的な)と言う括り方を
たった今考えたのですが、きっとコレで呼んだらスタッフから厭がられるんだろうな。
それはともかく、アルフレッド、フィーナ、シェインの主人公トリオのマル秘バナシでございます。

三人組の主人公と言うコンセプトは原作シナリオの段階から既に明確化していたのですが、
実のところ、最初期の段階ではアルフレッドひとりに主人公の役割を担わせていました。
完全なヒロインのポジションに終始する予定であったフィーナを主人公のひとりに加えたのは、
主要キャラクターの設定を作り終えたくらいだったかな。
<トロイメライ>の前に「L&C」と言う現代ファンタジーのRPGを考えていたのですが、
企画の段階では、主人公とヒロインによるマルチ視点形式でストーリーを追うシステムを採用するつもりだったんですよ。
マルチ視点形式を実現させ得るシナリオ作りのノウハウも手前味噌ながら作っていったんですが、
「L&C」が諸事情からお蔵入りとなり(結局、このあと<トロイメライ>も一度ポシャるんですけど)、
これを生かす機会がなくなってしまいました。
ただ、マルチ視点形式はとても面白いと思ったし、ノウハウを無駄にはしたくなかった。
そこで別ラインで内容を詰めていた<トロイメライ>へ後継させていこうと閃いたわけです。
アル×フィーコンビへシェインが加わってアフシェトリオになったのは、いつ頃だったかなぁ…。
十数年も昔の話なので、さすがに明確な時期は覚えていません。
シナリオを書き始めた時点で、三人によるマルチ視点の形となっていたのは記憶しているのですが…。

そもそもアルフレッドはエンディニオンの人間ではなかったんですよ。
E・R・バロウズによる古典SF、火星シリーズのジョン・カーターのように
地球から異なる惑星にワープしてしまい、そこで様々な事件に巻き込まれると言う、
いわゆる異世界ファンタジーのようなお話でした。
それも数百年前のエンディニオンにワープするので、タイムファンタジー的な要素もあっTりして。
地球連邦に所属する『ラフィーネ』と言う宇宙戦艦のクルーで、
有人機動兵器の部隊、『ジーク・クライスト』のエースパイロットと言うバックボーンを
最初期のアルフレッドには設定してありました。
…こうして書き連ねてみると、ホント、使い古されたネタのオンパレードだなぁ。
高校生の発想なんてこんなものかも知れませんが、
十数年ぶりに正面からこいつを見据えてみると、結構なダメージがあります(笑)。

弁護士と言う夢は当時から本作に至るまで一貫していますね。
軍師、作戦家と言う最大のコンセプトは、まだこの時点では盛り込まれていませんが、
当時、法廷劇(映画「ショーシャンクの空に」とか)にハマりまくっていたので、
知恵を使って戦っていく職業=弁護士、検事と言う刷り込みがあったんですね(笑)。
原作シナリオでは、グリーニャの廃棄物問題を巡って悪徳業者と法廷闘争を行うシーンを
実際に書いていました。
序盤のお使いイベントは、証拠調べの為の素材集め(証人や証拠品ね)。
原稿が手元にないので具体的な内容は記憶が頼りなのですが、
裁判が始まってしまうとプレイヤーの介入する余地が全く無くなるし(ムービーの垂れ流し状態)、
何よりゲームらしいカタルシスに欠ける。
原作執筆当時はすごいコトになると興奮していたのですが、今思うとこれはナシだなぁ(苦笑)。
原作シナリオの時点ではトラウムと言う要素はありませんでしたが(但し原型はあった)、
変身能力は既に実装されていました。グラウエンヘルツと言う名称も当時と同じです。
戦闘スタイルは紆余曲折があったなぁ。
一番最初の設定段階では本作同様に格闘系だったんですが、
途中から主人公らしいキーアイテムを持たせて象徴化を図ろうと欲を出しまして。
身の丈を超えるような巨大なミサイルランチャーや、刀と小型火器のコンポジット、
レーザー兵器など色々な装備を試した覚えがあります。
結局、まとまらなかったなぁ。まとめる前にお蔵入りになったので…。


フィーナも性格以外はかなり変わってますね。
そもそも拳銃ではなく弓矢の使い手で、本作の神人(カミンチュ)に相当する聖霊たちと契約を結び、
エンディニオン救世の聖女のようになっていく…と言う設定でした。
舞台世界となるエンディニオンが環境破壊によって死滅に向かっている…と言う大前提も
原作シナリオから一貫しています。
死滅を食い止める方策の探求が原作シナリオのメインストリームで、
フィーナはそのコアとなるキャラクター。
完全なヒロイン枠と言うこともあって、
アルフレッド、フィーナ、フェイによるシビアな三角関係なんかも考えていました。
あれは…実際に書いたんだっけなぁ。アルフレッドが不憫で仕方ない内容だったんだけど。
原作シナリオをそのまま使いたくなかったので、本作の為に殆どのキャラの設定を作り直したのですが、
フィーナは一番改変が多かったのではないかと思います。武器からして違うからね(笑)。
地に足のついた人物造形となった分、僕は現在のフィーナのほうが断然書きやすいです。
あ、一応、付け加えておきますと、腐女子設定は原作シナリオにはありませんでしたよ。
ココが一番大きな改変ポイントだな(笑)。


シェインは………申し訳ないほど全然印象に残ってません。
本作でアルバトロス・カンパニーのアイルと言うキャラに備わっている秘術は、
もともとシェイン専用に作った設定でした。
ひとつだけ確かなのは、その程度の印象しか原作版のシェインには持っていなかったこと。
つまり、当時は上手に動かせてやれなかったと言うことです。
シェインと言うキャラは、十数年を経た本作で初めて完成したような感慨があります。

“主人公たち”と言うことでこちらの枠組みに含めるのですが、
ムルグも旧原作シナリオからフィーナのパートナーとして登場しているキャラクターです。
こいつだけは僕の中でも別格扱いで、原作から殊更何かを改変したと言う意識が全くありません。
かと言ってシェインのように印象が薄いわけでもなく、旧作時点で既に完成されておりました。
アルフレッドに対する敵愾心や不吉な通り名はブーストアップさせたかな(笑)。
それ以外はポジションからキャラに至るまで全く変わっていませんね。
ムルグは安心して書き進めることが出来ます。
でも、油断するとすぐ登場させ忘れちゃうんだよなぁ(汗)。

マリスは登場までにちょっと複雑な経緯があって。
アルフレッド、フィーナ、マリスの三角関係は、
もともとニコラスを主人公にした物語でやろうと考えていたエピソードなんです。
ニコラス、ミスト、あともう一人彼の幼馴染みを登場させて、
三者の人間模様をちょっと深く掘り下げていこうかな、と。
本編と接合させる構成までは作ったんですが、まあ、それも<トロイメライ>を世に出した後、
更に続編を作ると仮定した上での妄想だったので(笑)、
ネタだけ作っておいて、引き出しに仕舞っておいたんですよ。
十数年を経て<トロイメライ>を復活させるにあたり、
アルフレッドのお話でコレをやってみたら面白くなると思いつき、今回のような形となりました。
マリスの原案自体は、旧作のシナリオ執筆時に閃いたんですが、
結局、本編に絡ませる方法をひねり出せないうちに没に。
今回、ようやく日の目を見ることが出来ました。


■新たに生み出された主人公たち
主人公九人と一羽のうち、残る五名は原作シナリオにはいないキャラクター。
本作の為に一から新規で作っていきました。
このうち、ルディアと撫子については、それぞれ生みの親である栞さんと激々極々くんが
既に裏話を語ってくれているので割愛するとして、当コーナーでは残る三名の裏話を。
と言っても、それぞれメインストリームに直接関わってくるキャラだし、
あまり迂闊なことは言えないんだよなぁ(笑)。

フツノミタマは完全に僕の趣味丸出しですね。
戦力のバランスや武器のバリエーションを考慮し、剣士をパーティに入れようとは思っていたのですが、
オーソドックスな剣士に飽きていたので(笑)、既存作から毛色を変えるのが最大の課題でした。
時期的に大河ドラマ「功名が辻」で本能寺の変を放送していた頃だったかな。
短刀の鞘を口に銜えて刃を抜く館ひろしさんがあまりにも恰好良くて、
直感的に「口に鞘を銜えながら居合い抜きを繰り出すキャラにしよう!」と。
単純と言うか、深みもへったくれもなくて本当にすみません(汗)。
めちゃくちゃセクシーだったんですよ、館さんの信長。あれを見て刺激を受けない人はいない!
抜刀から次の技に派生させていくと言う、格闘ゲームで言うところのラッシュ系のキャラにしたのは、
居合い抜き=抜いた後は無防備で弱体化と言う描写を漫画等でよく見かけたから。
確かに居合い抜きを避けられた後は危険だけど、達人ともなれば先の先まで読んだ上で攻撃に移るわけで。
単純な描写に対するアンチテーゼをちょっとだけ含めています。
ちなみに<トロイメライ>の世界に於いて金で殺しを請け負うヒットマンは、
スナイパーでもスイーパーでもなく、仕事人と呼ばれています。
これもまた僕の趣味です(笑)。
仕事屋稼業や仕置人でも良いんだけど、馴染みが薄いからね、そっちは。

ホゥリーもバランスとバリエーションを考慮した上での配置ですね。
剣士がいるなら、魔法使いも必要だろ、と。
彼には色々な仕掛けが施してあるんですが、それは本編を読んでのお楽しみと言うことで(※ステマ)。
今のビジュアルからは想像もつかないと思いますが、
初期設定の段階では主人公チームで一番のイケメンでした。
背もスラッとしていて人気が出そうなビジュアルだったんですが、
二枚目ポジションはアルフレッドが担当しているし、何人も美形がいたら有り難みが薄れるかなー、と。
僕が化け物系を描くのが好きだと言うのもあり、現在のようなパターンになりました。
今でこそ酷い有様ですが、痩せたら十人並み以上のイケメンになると思っていただければ(笑)。

ジョゼフは僕も激極もお気に入り。
味方でありながら、何かの拍子に敵に回るかも知れない。
あるいは仲間ですら利用しにかかるかも知れないと言う、
ある種の爆弾をパーティ内に設置したらストーリー展開がよりスリリングになると考え、
そこから老獪なタヌキ親父と言う設定に行き着きました。
アルフレッドですら敵わないような豪腕の持ち主でありながら、
若い世代の育成にも心血を注ぎ、その成長に目を細めて喜ぶと言う完全無欠の大人キャラ。
気前の良いお金持ちネタ(自分の金持ちっぷりを自慢すると言うわけではなく)は、
書いていて非常に痛快です。
金に物を言わせて豪快に立ち回るキャラを書く機会なんてそうそうあるものじゃないし(笑)。
個人的なイメージは、徳川家康を演じる津川雅彦さん。
ただし、大河ドラマ「葵〜徳川三代」のときの家康ね。


■原作の主人公チーム
原作シナリオのメインパーティは、
前述のアフィシェトリオ+ムルグに加え、セフィ、マユ、ヒュー、レイチェル。
シナリオの進行に沿ってローガン、ハーヴェストと言った面々が加わっていきました。
なんとカッツェやルノアリーナもパーティメンバーの一員でした。
性格はほぼ一緒なんだけど、ポジションや設定はみんな全然違うなぁ。
古代民族の若き酋長と言う設定も含めて原作とほぼ一緒なのはレイチェルくらい。
セフィは魔術師崩れの考古学者、マユは敬虔なシスター(悪魔的新聞女王とは正反対ですね)、
ヒューはエンディニオンとも地球とも異なる惑星の艦隊を指揮する提督(それも剣術の使い手)。
ローガンに至っては体術ではなく重火器を使っていました。
原作の時点からバンダナは愛用していたっけな。
ハーヴェストも同じく重火器装備。ムーラン・ルージュの変形パターンはその名残ですね。

今回は原作シナリオをベースに新たにプロットを起こしていったのですが、
あえてオミットした部分も少なからずあります。
ヒューとレイチェルがくっつくことを前提とした、
アルフレッドに対するレイチェルの片思いみたいなエピソードも原作シナリオでは書いた記憶がありますが、
本作ではそのあたりはばっさりカット。
今更そんなもんグダグダやっても面白くないし、現在のピンカートン一家のほうが断然好み。
ヒューとレイチェルもこぢんまりした恋愛ネタのときよりずっと生き生きしています。
ハーヴェストはもっと苛烈なキャラクターだったのですが、
後ろ暗い過去を引き摺ったバックストーリーよりもポジティブな動機のもとにヒーローとして活躍させたほうが、
彼女に課したテーマの表現に即していると思い直して。
それなりに経験を重ねて、表現の方法にも少しはバリエーションを持たせられるようになったかと思います。

羅列するほど原型を留めていない事実が発覚していきますが(笑)、
性格や各キャラに課したテーマと言った骨子の部分はブレていません。
軸さえ定まっていれば、それ以外を大きく改変させても迷いが生じるようなことはないですね。

まあ、ハッキリ言ってヒューやローガンは旧作のほうが遙かにイケてました(笑)。
ヒューなんて作中ではパイナップル頭とかケチョンケチョンに言われてますけど、
原作シナリオでは長髪美形だったんですよ。
激極のおっさんに旧デザインを描いて見せたら、目を丸くして驚いていやがったな。
ローガンなんかは、最早、種族が違います(爆)。


◇次回は激々極々による各キャラクターへのコメントを掲載!

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