トロイメライの殺陣武術指南(自称)が振り返る!

シーズン1ベストバウト ベスト5!



「戦い」がひとつの大きな要素を担っている〈トロイメライ〉。
異なる戦闘スタイルを持つ者たちのセッションは
作中で幾度となく描かれてきましたが、
シーズン1プレイバック企画として、
制作総指揮にして殺陣武術指南を自負する天河氏に
全17回のバトルシーンよりベスト5をセレクトしていただきました。
合戦は別コーナーにて解説されていますが、
個人戦に焦点を当てる試みは今回が初めてのこと。
立ち回りの見どころなども天河氏は語ってくれました。















第1位
アルフレッドVSニコラス〜宿命の対決
(第15回「復讐と決着のはざまで」)

悲しいすれ違いから敵味方に別れて臨むこととなった両帝会戦。
ふたつのエンディニオンを超えて絆を結んだはずの親友同士がその戦場にて激突する!
最終的に初稿より三倍以上の加筆が行われたと言う宿命の対決が第1位に輝いた!

■天河’s comment
異世界間で生まれた親友同士の直接対決ですから、弥が上にも力が入ります。
両帝会戦自体、「異文化同士の激突」と言うコンセプトを持たせていたんですよ。
なので、トラウムやホウライと言ったBのエンディニオン発祥の技術と、
MANAと言うAのエンディニオンならではの機械武器のぶつかり合いと言う側面を
非常に強く押し出しています。
その上で不格好とも言える肉弾戦(頭突きが好例ですね)を加えて、
双方ともに後がない情況と言うことを描いていきました。
他の殺陣とは違って決着の仕方が極めてエモーショナルでしたが、
ふたりの戦い=ふたつのエンディニオンの戦いは心と心の鬩ぎ合いと決めておりました。
初志貫徹の戦いでしたね。



第2位
ジューダス・ローブ決着戦〜予知能力封じの奇策・ネビュラ戦法
(第10回「道化の仮面」)

予知能力を持つと言う世界最悪のテロリスト、ジューダス・ローブ。
世界中の首脳陣が一堂に会したサミットを襲撃するジューダス・ローブに対し、
アルフレッドは予知能力そのものを封じ込める奇策を案じた!
宿命の対決に続く銀賞はネビュラ戦法を駆使した大立ち回りが獲得!

■天河’s comment
第1部・漂着編のラストバトルと言うことで、
アルフレッドVSニコラスと同じように思い入れが強いです。
予知能力の撃破は王道中の王道ですが、アルフレッドが策士キャラと言うこともあり、
予知を更に上回る新たな能力の登場ではなく、理論に基づいて詰め将棋のように
封じ込めるパターンとしてみました。その割にはパワープレイでしたけど(笑)。
これが少年漫画であれば、主人公と予知の持ち主とのタイマンとなり、
正々堂々と能力に打ち克つ展開にもなったのでしょうけど、アルフレッドなので総力戦。
ヤツは勝つ為には手段を選びませんからね。
実はVS予知能力には後悔もありまして。肝心の能力を早めにネタ振りしておくべきでした。
本編の執筆を行う前にセフィの設定や第10回のプロットは完成していたので、
伏線を張ることが出来た筈なのですけど……。
僕の設計ミスが祟ってグランプリを獲得出来ず、ごめんよ、セフィ。



第3位
冒険者チーム同士の抗争〜立ちはだかるメアズ・レイグ!
(第9回「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」)

謎の廃墟にて遭遇したふたつの冒険者グループ。
共同で調査に当たろうと持ちかけるアルフレッドであったが、
対するイーライは根っからの不良冒険者。
廃墟で得た成果を独り占めするべくアルフレッドたちの排除を宣言する。
ローガンやセフィと言った冒険者たちも受けて立ち、冒険者グループ同士の抗争が勃発する!
スタート以来、最大編成となった乱闘が第3位につけた。

■天河’s comment
子どもの頃から数多くのヤンキー漫画に触れてきたので、
まず「抗争」と言う響きに弱いのです(笑)。本編中でもわざわざ抗争と書いてます。
僕の個人的な趣味はともかく、相当数のキャラを同時に動かして行う全体戦は、
実はトロイメライではVSメアズ・レイグが初めてでした。
第1回の冒頭および廃棄物処理施設襲撃、群狼夜戦(第5回)など
合戦シーンはありましたが、これは大人数による殺陣とは違います。
全体戦は各キャラが備えた戦闘スタイル=個人技のアンサンブルとなる為、
描き方や演出方法が合戦とは変わるんですよね。
また、変身したアルフレッドが初めて苦戦を強いられると言う展開も
書いていて非常に面白かったです。
それまで無敵のように扱われてきたグラウエンヘルツが劣勢に立つ瞬間ですから。
ウルトラマンだって仮面ライダーだって、強打を喰らったら苦しみますし、
それはグラウエンヘルツも同じこと。主人公を完全無欠にはしたくなかったんですよね。
最強に近い主人公の能力に弱点を持たせてみてはどうかと、
我が師匠さめじまさんからも企画当初より助言を頂いておりました。
イーライのトラウムで返り討ちにされたのは、ひとつの具体例です。




第4位
三つ巴の大乱戦〜アルフレッドVSフェイVSイーライ
(第16回「最後に笑う者」)

ギルガメシュとの大合戦の果てに一敗地に塗れた連合軍を再起させるべく
逆転の秘策を考案するアルフレッドであったが、
兄貴分であるはずのフェイと、何かと反りの合わないイーライがこれを阻む。
フェイとイーライにもアルフレッドと同じように腹案があったのだ。
連合軍へ献策する権利を賭けて、三者は熾烈な決闘を繰り広げる!

■天河’s comment
三つ巴の決闘と言うことなので、VSメアズ・レイグの延長として描けると思ったのですが、
いざ殺陣を組み立て始めたら、今までになく情報の処理が大変で……。
思えば、VSメアズ・レイグは、人数の多寡はともかく敵味方がくっきり分かれていました。
第16回の決闘は、三者それぞれが敵対関係と言う完全な乱戦。
誰が敵で誰が味方なのか、明確な線引きも出来ないので、
執筆担当の僕まで振り回されかけました。
そうした事情から空間を立体的に捉えた段取りが今まで以上に必要になりました。
一瞬、トリプルノックアウトのような劇的な状況も考えましたが、
アルフレッドVSフェイの立ち回りも掘り下げなければならなかったので、残念ながら断念。
次に多人数の乱戦を描く機会があったら、もっと工夫を凝らしたいな、と。
ああ、反省点ばかりになってしまった(笑)。



第5位
アルフレッドVSミルドレッド〜ホウライ使い同士の初対戦
(第17回「遥かなる凱歌」)

一致団結しようとしていた連合軍の軍議に乗り込み、足並みを乱したスカッド・フリーダムの離反組、パトリオット猟班。
このままでは全軍の士気に関わると判断したアルフレッドは彼らを実力行使で退けようとする。
最初に戦ったのは、寝技を主とするジウジツ使いの女巨人!
最強の闘術「ホウライ」を持つ者同士による初めての対決ともなった注目の一線だ。

■天河’s comment
先に挙げた四つは劇作上の意味を明確に持ったものでしたが、
第5位のVSミルドレッドは完全に僕の趣味です(笑)。
長いこと殺陣を作り続けてきて、そろそろ自分の中にも新しい風を吹かせたいと、
シーズン1最終回の執筆前後から強く考えておりまして。
今まで意図的に避けてきた近代総合格闘(MMA)の世界に敢えて踏み込み、
技術検証を行って殺陣のストックを増やすことにしました。
で、近代総合格闘と言えばグレイシー柔術(と言うか、ブラジリアン柔術ですね)。
その検証の成果を疲労披露するに当たって、立ち技中心のアルフレッドと、
寝技中心のミルドレッドと言う対戦カードを組んだ次第です。
文章としてグレイシー柔術の描写に挑戦してみて分かったのですが、
筋肉や関節の動かし方を理論的に組み立てていく寝技、組技は、
実は小説と言う分野にマッチしているのだな、と。
画として表現する場合、打撃と比較して寝技はどうしても地味にならざるを得ない。
対して、小説では細かな技術描写が豊かな臨場感を生み出します。
今後の糧を得たと言う点でも貴重な一戦でした。








〜番外編〜


敢闘賞
フツノミタマVSザムシード
(第17回「遥かなる凱歌」)

■天河’s comment
脇役同士の対決なので、番外編としてカウントさせていただきました。
第17回の細かな構成を組んでいて気が付いたのですが、
なんとフツノミタマは第10回以来まともな戦闘シーンがない!
両帝会戦もシェインたち年少組の面倒を見ていた為、刀を振るう機会に恵まれませんでした。
それではあまりに勿体ない! フツノミタマの剣腕が泣く! 
と言うわけで、急遽作った見せ場ではありましたが、結果的にかなりのお気に入り。
実際に対戦するのはザムシードですが、彼と言うか、テムグ・テングリ群狼領の面々も
個人戦ではパトリオット猟班にやっつけられて良いところがなかったので、
ザムシードの活躍を通じて名誉挽回をしてあげたいな、と。
本編中でも触れましたが、正々堂々とはかけ離れた殺し合いを肯定している者同士の戦いは、
思わず熱が入りました。現時点のアルフレッドでは絶対に出来ない陰惨な立ち回りです。
当初、トロイメライでは様式美のような殺陣を基本路線としていたのですが、
武術仲間との意見交換を経て、より殺伐とした領域=命のやり取りの本質まで踏み込もうと
考えを改めまして。
シーズン2以降、殺陣も激しさを増します。フツノミタマVSザムシードは、その前哨戦ですね。



特別賞
第17回から登場した力士、太刀颪(たちおろし)
■天河’s comment
激々極々によるショートストーリーより「太刀颪の大一番」
実は太刀颪(たちおろし)は後々登場する予定だったのですが、
ゼラールの趣味である相撲観戦の強調と、彼にスポットライトが当たったときに
読者置いてきぼりにならないようストーリー上で予め蓄積を行っておこうと考慮した結果、
数十回フライングしての登場となりました。
初登場のタイミングと合わせて太刀颪の土俵上での活躍をクローズアップしたいと考え、
彼の産みの親とも言うべき激々極々に取り組みシーンを書いていただきました。
このショートショートを初めて読んだときは血が滾りましたね。
僕が読みたかった相撲がそこにありました。
激々極々曰く、立ち合いのイメージは平成十年七月場所での千代大海と武双山の一戦。
初めて明かしますけど、太刀颪のモデルは千代大海なんですよ。











s