エビス丸的CGイラスト講座…のようなもの
トロイメライ読者の皆様、お世話になっております。
トロイメライのチーフデザイナーなる役職を仰せつかっております、
ヘタレ絵描きのエビス丸と申します。
この度、イラスト製作手順の公開と言う、
自分的にはかなりこっ恥ずかしいことに挑戦してみました。
こんなのでいいのかな…と戸惑い、悪戦苦闘しつつも、
なんとかまとめてみた、と言う感じです(汗)。
私のイラスト製作は、PhotoshopとIllustratorの併用で行います。
流れとしてはラフ画製作→Illustratorで線画修正→Photoshopで着色・仕上げ、
と言った感じになります。
今回はその描きはじめ〜完成までを、
順を追って紹介させていただこうと思います。
我ながらかなり長い上に読みづらい文章となってしまっておりますが、
最後までお付き合いいただいた上で、
何かの参考にしていただければ幸いです。
1・ラフ作成・取り込み
まずは手描きでイラストの原型を作製します。このとき私が使うのは、
製図用のシャープペン(芯が0.3mmのもの)です。
ラフが完成したらPhotoShopを起動し、スキャナでPCに取り込みます。
取り込みの際の解像度は300dpiになります。
2・Illustratorでペン入れ作業
取り込んだ画像を一旦psd形式で保存し、その後Illustrator上で開きます。
私はいわゆるペン入れの作業を、このソフトを用いて行います。
時間がかかって面倒くさいのですが、曲線が非常にきれいに引けるため、
個人的には非常に重宝しています。
では、ペン入れの手順を説明していきたいと思います。
2-@ 開いたファイルの画像レイヤー(通常は「レイヤー1」となっています)をダブルクリックし、
ウィンドウの「表示濃度」のボックスにチェックを入れ、数字を50%に設定します。
すると画像が半分透明になります。
表示濃度を変更したら、単一レイヤーでの作業を避けるため、レイヤーをロックします。
2-A あとは鉛筆画の線を頼りに、ペンツールで線画を描いていきます。
線の太さは0.5ptで、とにかく複合パスをたくさん作っての作業になります。
この作業はかなり手間と時間がかかるので、根気よく進めていきます。
細かい部分は拡大して作業し、終わったら全体を見えるようにして確認します。
2-B ペン入れが終わると、この状態になります(画像参照)。
背景が少しさびしかったので、旅荷物を描いてスキャンし、追加投入しました。
これでIllustrator上での作業は終わり、再びツールをPhotoShopに
戻して進めていきます。
3・PhotoShopでペン入れした線画を修正
Illustratorの線は綺麗なのですが、アナログで引いた線と違い、太さが完全に一定で、
かつ線と線の交差部分がはみ出してしまっている箇所が多数あるので、
今度はPhotoShopで線にメリハリをつけ、交差部分の修正をします。
線画の出来は完成時の見た目を大きく左右するので、ここは面倒くさがらず、
消しゴムツールを使って、細かく作業をしていきます。
3-@ 線の端を消しゴムで削ってメリハリをつけたり、線の交錯部分を修正したりしていきます。
消す部分を間違えないよう、大小のブラシを使い分けて、慎重に作業を進めていきます。
3-A 修正が終わると、画像のような状態になります。
修正前と比較してもらえると、違いがよくわかるかと思います。
背景は後から加えていきます。
4・下塗り作業
線画が完成したら、着色をしていきます。
色の塗り忘れやはみ出しを極力防ぐため、下塗りは基本的に自動選択ツールと、
塗りつぶしを使って進めていきます。
4-@ 作業を始める前に、線画レイヤーに『主線』と名前をつけて、
レイヤーウィンドウ上で順序を一番上に持ってきます。
4-A 今回はアルフレッドの肌から塗っていくので、まず『主線』レイヤーをアクティブにして、
そこから自動選択で着色範囲を作製します。
範囲指定が出来たら、タスクバー上のメニューから『選択範囲』→『選択範囲を変更』→
『拡張』と選び、拡張範囲を1pixelに設定してOKをクリックします。
すると選択範囲がわずかにふくらみ、境目の着色漏れを防げます。
4-B 選択範囲を維持したまま、新規のレイヤーを作成します。
ここではレイヤー名を『アル肌』とつけました。
このレイヤーをアクティブにして、カラーピッカーで色を作製し、
塗りつぶしで色を置いていきます。
着色するとこの状態になります。
4-C 下塗りはパーツごとに着色範囲を選択→新規レイヤーを作製→塗りつぶし、
という作業の繰り返しになり、レイヤーがどんどん増えていきますので、
私はレイヤーを管理しやすいように、レイヤーごとに名前をつけていきます。
自動選択でカバーしきれない細かい部分は、ブラシで塗っていきます。
各パーツごとに塗りわけ、背景を入れるとこうなります。
5・影及びハイライトの着色
下塗りができたら、影とハイライトを入れていきます。
光源の位置や種類、光の強さを意識して、矛盾が出ないよう気をつけながら作業していきます。
私の場合、影やハイライトのレイヤーには基本的に名前をつけません。
基本色レイヤーの上にグループ化して管理しているためです。
グループ化については5-@で説明します。
5-@ パーツごとの基本色レイヤーの上に、新規レイヤーを作ります。
そしてキーボードの「Shift+G」を押します。これでレイヤーがグループ化できます。
このショートカットもよく使うので、覚えておくと便利です。
グループ化すると、レイヤーの左側に矢印が出ます。
これでこのレイヤーは、基本色レイヤーで着色されている範囲以外には、
色をぬれなくなるので、はみ出しを防ぐことができます。
5-A レイヤーをグループ化したら、影用のレイヤーモードを「乗算」にします。
こうしておけば色の塗り重ねが可能になり、基本色の上にもう一度同じ色を塗れば、
その部分が陰になります。
5-B 陰になる部分の色をおいていきます。
私はこの作業には、基本的にペンツールを使います。
ペンツールはツールボックスの中にあるので、アイコンをクリックします。
するとカーソルがペンの形になります。
このツールはクリックしたところにポイントを作製し、さらに違うところをクリックして、
新しいポイントを作製すると、その2点の間で自由な曲線(パス)を作れます。
これを利用して陰の範囲を決めていきます。
5-C 塗るべき範囲を決めたら、最初に作ったポイント(以下、「始点」といいます)をクリックし、
パスをつなぎます。
そしてスポイトツールで基本色を抽出し、パスウィンドウの下にある一番左のアイコン
(選択範囲の塗りつぶし)をクリックします。
すると、パスで囲った範囲に色がつきます。
もし陰の色が濃すぎると感じたら、レイヤーの透明度を下げて調整します。
それが終わったら陰と同じ手順で、今度はハイライトを入れていきます。
描画モードは「オーバーレイ」に設定し、不透明度は適宜調整しながら、
光が当たる部分を強調していきます。
5-D 背景の壁にリアリティを加えるため、鉄筋を描き足しました。
ブラシツールと乗算、オーバーレイのみでさっと作ります。
5-E ランプに光を入れます。新規レイヤーを作り、ランプの中心部を円形選択ツールで、
白く塗りつぶします。そしてそれを囲むように一回り大きな円を作り、
同じように白く塗りつぶしてぼかしフィルタでぼかします。この作業を3回ほど繰り返すと、
図のような状態になります。
5-F 最後にランプの光でできる影を全体に加え、下塗りの完成です。
6・人体、布等の仕上げ
下塗りが終わったら、各パーツを仕上げていきます。
ここから大量にレイヤーを使うので、メモリ容量を喰って大変です(汗)。
仕上げを始める前に、ランプの光と影のレイヤーを一旦ブラインドにします。
6-@ 基本の明暗をつけたら、各部の仕上げを進めていきます。
まずは陰レイヤーをフィルタ→ぼかし(ガウス)でぼかします。
ぼかし半径はパーツにより異なりますが、私はおおよそ2.0くらいをめどにしています。
6-A 基本色との境目を、不透明度20%に設定した消しゴムツールで消してなじませていきます。
このとき使用するのは、多少半径が大きめのソフト円ブラシです。
なじませるとこんな感じになります。
6-B 新規レイヤーを作ったら、陰になっている部分にグラデーションをつけるため、
陰レイヤーの上に、新規の乗算レイヤーを作り、一度陰レイヤーをアクティブにして、
キーボードのAlt+Sで、選択範囲メニューを呼び出し、『選択範囲の読み込み』を選択して、
Enterを押します。
これで影レイヤーの着色部分がそのまま選択範囲になりました。
6-C 今度は新規レイヤーをアクティブにして、パーツの基本色をスポイトし、
エアブラシツールで、影の部分のさらに濃い色をおいていきます。
レイヤーの不透明度はパーツごとに異なるので、適宜に調整します。
終わったら選択範囲を解除して、基本レイヤーのすぐ上にオーバーレイレイヤーを作り、
軽くエアブラシで光を乗せます。
6-D グラデーションツールを使って明暗を強調します。
基本レイヤーのグループの一番上に新規レイヤーを二つ作り、
下側のレイヤーをオーバーレイ、上側のレイヤーを乗算にします。
グラデーションの種類は円形、エディタは『描画色から透明に』設定します。
6-E 今回のイラストは、夜間でカンテラの光のみが光源という設定なので、
多少わざとらしく、強めにグラデーションをかけます。
オーバーレイの描画色は白で、光源から暗くなるほうへ。
逆に乗算レイヤーは影の部分の一番濃い色をスポイトして、暗いほうから明るいほうへ。
不透明度は適宜に調整します。
次にグラデーション(オーバーレイ)レイヤーの下にもう一枚オーバーレイレイヤーを作り、
軽くハイライトをいれて、ぼかしフィルタと20%消しゴムでなじませて終了です。
金物以外は概ねこの手順で仕上げ、レイヤーの不透明度や陰のなじませ具合、汚しなどで、
質感調整を行います。
6-F 瞳を仕上げていきます。まず乗算レイヤーで明暗をつけ、色の濃い部分にオーバーレイ
(描画色は白)でハイライトを置きます。
6-G さらにもう一段階オーバーレイでハイライトを入れて、全体をぼかしてなじませます。
また、光源から遠いほうの瞳の色を、コントラスト調整で若干暗くします。
6-H 最後に主線の上からハイライト置いて、瞳の着色完了です。
大人の男なので、あまり目を大きく見せないため、ハイライトは若干控えめにしてあります。
7・金属部分の仕上げ
エビス丸が特にこだわる(笑)金属の塗りです。
リアルな質感を出すため、他のパーツよりも明暗や光沢などを強調します。
重さを感じさせる仕上がりにしたいので。
7-@ 基本の明暗の上にハイライトと二段目の陰を置き、ぼかし(ガウス)フィルタでぼかします。
金属の明暗のシャープさを表現するため、ぼかし半径は小さめ(1.0程度)にしました。
7-A 他のパーツと同じように、20%消しゴムで色をなじませ、エアブラシで陰に段階をつけて、
質感を出していきます。
7-B 金属っぽく見せるために、ヘアラインを入れます。
基本レイヤーのコピーを作り、それを基本レイヤーとグループ化します。
次にフィルタの「ぼかし」→「移動」をクリックします。
指向性と移動方向は、部位により適宜に調整します。
あとはオーバーレイと乗算のグラデーションを入れて完成です。
8・背景の仕上げ
人物などのパーツが終わったら、背景の仕上げになります。
パースなどに注意しつつ、違和感が出ないように仕上げていきます。
8-@ 夜空にエアブラシで星を描き、少しぼかして光っている感じを出します。
ついでに天の川みたいなものも入れてみました。
8-A 道路を描き込みます。
アスファルトっぽい感じを出すため、エアブラシで点描をしていきます。
使用するブラシは60pixelの「チョーク」(画像参照)です。
8-B 円形グラデーションで、路面にランプの光を作ります。
8-C エアブラシで汚れを、パスでひび割れを入れて、荒れた感じを出します。
路面の処理はこれで完了です。
8-D 壁の処理をしていきます。
コンクリートの質感を出すため、基本レイヤーをコピーしてグループ化し、
「フィルタ」→「ピクセレート」から「水晶」フィルタをかけます。
セルの大きさは「10」に設定しました。
次に「ぼかし(ガウス)」フィルタで軽くぼかします。
8-E 路面と同じくひび割れと汚れを入れ、光の加減を調節して、壁を完成させます。
8-F 鉄筋は乗算とオーバーレイで凹凸を加え、質感を出していきます。
8-G 端の部分に多少強めにオーバーレイを乗せて、交差している部分に影を入れ、
立体感を強調します。
8-H 基本レイヤーをコピーしてグループ化し、ノイズを多少強めに入れて、
鉄筋を完成させます。
これでパーツの着色はすべて完了です。
9・主線の着色と全体の仕上げ
パーツの着色が終わったら、最後の仕上げに入ります。
パーツに色に合わせて主線を着色し、光の加減を微調整します。
9-@ 主線の上に新しいレイヤー(描画モード:通常、不透明度:70%)を作ってグループ化し、
直近のパーツの色をスポイトして、主線に乗せていきます。
パーツの明暗に合わせて、主線にもグラデーションをつけていきます。
金属部分や、特に強く光が当たっている部分の主線は、別レイヤー
(描画モード:通常、不透明度:100%)で明るく色をつけて、光の感じを出します。
9-A 主線の着色が終わったら、グループを統一します。
絵全体の印象をやわらかくするため、そのレイヤーのコピーを作ってそれをぼかし、
元のレイヤーの下に持ってきて、透明度を70%にします。
9-B 最後に全体を見て、塗り忘れや矛盾点がないかどうかチェックしていきます。
背景のパースの微調整や細かい箇所の描き直しができる最後のチャンスなので、
見落としのないよう、入念に確認します。
確認と修正が終わったら、レイヤーを統合してトリミングと解像度調整を行い、
サイズが1280×1024になるよう調整します。
これで全工程の完了となります。
総括と反省
今回は自分のCG作製の手順を解説するという趣旨でイラストを描かせていただき、
今まで自分がやっていたことを再確認できました。
自分の技術やこだわりを紹介しながらの作業は非常に楽しかったのですが、
光の感じや質感を追求するあまり、レイヤーを使いすぎてデータが重くなってしまったり、
細かい部分を気にしすぎて全体の調和に目が行かない部分があったりなど、
改良すべき点や課題なども、改めて浮き彫りになってきた気がします。
思えばCGに手を染めてはや10年、数え切れないほどイラストを描いてきました。
その割には大して上達もしていないのですが、それでも1枚のイラストで最低ひとつは、
今までやっていなかったことをやるというこだわりは、ずっと貫いています。
それが技術の蓄積になると信じていますので。
最後になりますが、私にこの企画を持ちかけてくれたプランナーの天河さん、他スタッフの方々、
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
どこまで期待に応えられるかわかりませんが、ヘタレなりに上を目指しつつ、
これからも絵を描き続けようと思います。
2012年 4月 エビス丸 拝
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