【ジェマの騎士】の聖装に身を包んだランディが、
伝説の霊獣【フラミー】を呼び起こす宝具【風の太鼓】を天高くへ翳す。
やがて、決戦突入の刻限を告げる音色が響き渡った。
「うしッ!! ココはやっぱリーダーのデュランに
檄を飛ばして気ィ引き締めてもらわねぇとなッ!!」
【草薙カッツバルゲルズ】の隊旗を翻すマサルが高揚した声で提案した。
「ちょっとお待ちなさいよ!
それは【ジェマの騎士】であるランディの役目でしょうっ!?」
「え〜、ランディの兄ちゃんじゃ、『方々参る』とか『抜かりなく』とか、
グダグダなお決まりの文句が飛び出しそうでヤだなぁ。
プリムの姉ちゃんだってヤでしょ?
戦る前からナエナエになっちゃうなんてサ」
「それは、まあ、そうよね………」
「コキ下ろされると思ったよ!!
申し訳なかったねぇッ、ボキャブラリーの乏しい人間でさぁ!!」
「開き直った時点で負けなんだから、もうちょっと頭働かせてから発言しなよ★
今のでまた一つキミへの信頼度を落としたよ?」
「良かったじゃない、フェアリーになけなしのフォローしてもらえて」
「っていうか、こーゆー場合のランディの兄ちゃんへの信頼度って、
もともとゼロだから困るな〜、落としようが無いもんな〜」
「………………………もう、泣いてもいいですか?」
あれやこれやと騒いでみたものの、
【ジェマの騎士】たちも最終的にはマサルの音頭へ賛同したようだ。
「せやな。最後はリーダーに締めてもらわんとな」
「師匠!! 一発、ドカンと、決めちゃって!!」
「なんでこうおとこのひとっていうのは、
むりやりあつっくるしいてんかいへもっていきたがるんでちか。
ふつうにしゅっぱつしんこう、ごー・とぅ・へるでいいじゃないでちか」
「シャルもここで茶々入れないの。デュラン〜、期待してるわよ〜♪
っていうか、ランディよりもイモい事のたまったら、
全国指名手配だからね〜♪ 『この顔にピンと来たら失笑しなさい(命令)』って」
「おっかねー権力行使もあったもんだなぁ。
こりゃ命がけで捻り出さないとピンチだねぇ、デュラン」
「皆さんの期待を一身に背負うわけですね。頑張ってくださいっ!」
「お前らなぁ、好き勝手言ってんじゃねぇよ………」
自分の意思に関係なく決定された上に好き放題に言われては
腹が立たない事も無いが、最終局面を前にして歯切れ悪く逃げるわけにはいかない。
決戦を勝ち抜いて、また、この面子でバカをやるために。
地上(ここ)へ生きて還るために。
宣誓じみた檄を飛ばせるのは、ここまで【草薙カッツバルゲルズ】を引っ張ってきた
リーダーを置いて他にはいないのだ。
自分の頬を一度バシンと両手で叩くと、デュランは肺一杯に空気を吸い込んだ。
「―――――――――いざッ!!!!」
デュランの雷鳴に【草薙カッツバルゲルズ】一同が「応ッ!!」と力強く答えた刹那、
天空の彼方より【フラミー】が招来し、
総員タイミングを合わせてその背中へと飛び乗った。
「うひょ〜! なにこのすっげぇジェットコースター気分ッ!!
こんなスリルがあると知られたら、遊園地もお飯食い上げだな、オイ!!」
「いたッ!! ちょっと、マサルさん!
旗持ってくるなら持ってくるで、ちゃんと抑えててくださいよ!!
さっきから鼻っ柱に当たって痛いんですけどぉっ!!」
「この期に及んでコントたぁ、余裕だな、二人とも。
最後の戦いが終わったら、お前ら、『マサルandランディ』でデビューしろよ!!」
「他人事だと思って、あんまりですよ、デュランさん………」
崖下へ大口を広げて待ち受ける奈落めがけて、霊獣は逆落としに滑空していく。
【三界同盟】との最後の決戦へ向けて、
【イシュタリアス】に仇なす禍根を断ち切る運命の一戦へ向けて。
(首を洗って待っていやがれ。………必ずケリをつけてやるッ!!)
―――――――――決戦の幕は切って落とされた。
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