伝説の「東郷ターン」を甦らせた奇跡の海上対決

T 字 戦 法



■概要
 世界の武力征圧を目論むギルガメシュに対し、
エルンストの率いるテムグ・テングリ群狼領は反ギルガメシュ連合軍を組織。
両軍は熾烈な陣取り合戦を経て、グドゥーの砂漠地帯で一大決戦のときを迎える。
 アルフレッドが編制を担当した佐志軍にもエルンストから出撃要請がもたらされ、
正式に連合軍への参加が決定された。
 本隊から遅れての出撃となった佐志軍は、海路から合戦場へ至るべく
自慢の武装漁船団を漕ぎ出した。
 エルンストの特使として佐志を訪れたゼラール・カザンも相当数の帆船を所持しており、
ここに武装漁船と帆船による奇妙な船団が誕生した。
 やがて合戦場に面した沿岸部にまで接近した一団は、そこにギルガメシュ船籍の艦艇が
浮かべられていることを確認する。
 沿岸部から上陸する以上、正面対決は免れないが、ギルガメシュが持つのは巨大な軍艦。
直接的に攻撃能力を持つのは、巡洋艦一隻だが、たったの一隻とは言え、
小さな武装漁船や船体の脆い帆船で戦うには圧倒的に不利であった。
 船の数では味方に利が有り、戦闘力は不利と言う複雑な状況の中、
アルフレッドは海軍史に残る伝説の戦法を甦らせようと図る。





■海戦が行われた砂丘および砂漠の近海





 ギルガメシュ統治下での身柄の保障を求めて参戦したエトランジェ(外人部隊)は、
洋上に出現した佐志・ゼラール軍団の船団を目撃して恐慌状態に陥った。





■戦闘開始時の布陣図



 佐志・ゼラール合同船団は、隊を三列に分けて、敵軍の「背後」にもあたる
合戦場の沿岸部、通称「半月の湾岸」へと接近した。


■第一段階~両軍接近!



 このとき、ギルガメシュの巡洋艦は接近してくる佐志の前衛に向かって砲撃を実施した。
 ところが、コンピューターによって制御されて直撃する筈の砲弾は
あらぬ方向へと飛び去り、流れ弾と化して海面に落ちてしまった。
 マコシカの術師たちが磁力の盾で船団を護っていたのだ。
 巡洋艦が備える優れたレーダーや射撃管制システムも
マコシカの秘術の前にはなす術もない。



■伝説、再び・東郷ターン始動!!



 ここで洋上に大きな変化が訪れる。
 巡洋艦とすれ違うかに思われた佐志の前衛が突如としてUターンを行ったのだ。
 巡洋艦と進行方向を合わせて砲撃戦に持ち込む「同航戦」である。
敵前大回頭、海軍史上にその名を轟かせる伝説の戦法「東郷ターン」だった。
 Uターンの最中、佐志の中衛は両者の間に割って入るように直進し、
やがて巡洋艦へ砲撃を実施する。大海戦の幕開けだ。



 すれ違いざまに射撃を行う中衛に続き、前衛も回転の途中で発砲を開始。
 海戦に於いて、回転中の船艇が砲撃を命中させることは不可能に近く、
ギルガメシュ側にとっては信じられない展開であった。
 波浪の影響すら物ともしない眼力の持ち主である権田源八郎の指揮のもと、
佐志の前衛は一発も外すことなく砲弾を命中させていく。
 武装漁船団から集中砲火を浴びてレーダーを破壊されたギルガメシュの巡洋艦は、
東郷ターンが完了する頃には殆ど戦闘能力など残っていなかった。



■粉砕!ギルガメシュ艦隊!!



 応射もできない状態のまま挟み撃ちに攻められては、
いかにギルガメシュの巡洋艦が堅牢であっても持ちこたえられるものではない。
 作戦全体を指揮するアルフレッドも執拗なまでに発砲を繰り返し、
ついに巡洋艦は海の藻屑と化した。
 巡洋艦が洗脳能力を失った頃にはゼラールの帆船も急速直進を行い、
残存する補給艦、揚陸艦をすみやかに撃沈せしめた。
 ゼラール軍団は続けてギルガメシュの部隊が布陣する砂丘に対しても艦砲射撃を加え、
両帝会戦の制海権を奪い取った。



■T字戦法、その奇跡

 T字戦法とは、本来は敵艦隊の先頭を縦一文字に遮断し、
文字通り、洋上に「T」のような対陣の図を作り出し、敵の動きを封殺する戦法である。
 しかし、武装漁船に比べて巡洋艦の速度はあまりにも速い。
 振り切られる可能性があると考えたアルフレッドは
機転を利かせて敵の左舷を押さえ、「同航戦」に持ち込んだのだ。
 敵の航路を掌握して動きを封じると言う要の部分を踏まえた上でのアレンジだった。
 陸上での戦いだけでなく海戦ですら軍略の神業を見せつけたことで
両軍を大いに驚かせたアルフレッドは、この勝利で評価を更に高めたと言えよう。
 敵の軍艦の目や耳に当たるレーダーなど電子戦用の設備を
真っ先に破壊した精密な判断力は、エルンストを大いに喜ばせた。



 ギルガメシュ軍の背後を押さえた佐志・ゼラール軍は浜辺に船を着け、
砂丘を駆け上がって合戦の熱砂へと踏み入っていく。
 そこに宿命の対決が待ち受けているとも知らずに……。




第14回「T字戦法の奇跡」 製作こぼれ話




むっちゃ

大変でしたッ!!






執筆担当:天河真嗣 





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