土を司る神人 シャティ ・初期設定資料画 ・武器設定資料画 |
土を司る神人。熊の様に全身が毛むくじゃらで背丈も子供並に小さく、おまけに強面。 そこに大きな鉄槌を携えている事から創作神話などに登場する妖精、 ドワーフの原形になったと云われる。 大地を流れる惑星の生命エネルギーの脈動や地盤の働きを見守るのが役目なのだが、 見た目通りに頑固な半面、意外にもナイーブで打たれ弱いところがあり、 小さな背丈をからかわれると激怒し、八つ当たり半分に地震を起こす悪癖があるとも。 そんな見た目や性格に反して手先は驚くほど器用で、建築物等の設計も手がけるなどなかなか多才。 また、怒り狂うと手が付けられなくなるものの、 平素は実直そのものなので工芸品の創作や建築など忍耐を必要とする作業も難なくこなしてしまう。 この事から工芸や建築を司るとも伝えられるが、 それ以上に彼の性情が庶民の生き方そのものである事から 平凡な人々を守護する存在として親しまれ、神人の中でもエマトリスと並んで信仰が厚い。 |
マコシカに伝わるおとぎ話 「ふしぎな首飾り」 |
昔々、ある所に一人の男が住んでいた。 この男、根は真面目であるものの、いつもお金には困っていた。 そんなある日、男が仕事を終えて帰る途中、道端にはずんぐりむっくりとした、見事なひげをたくわえた男に出会った。 「おっさん、そんなところで何をしているんだい?」 「いやなに、特に困っているわけではないのじゃが。少々ゴルフをラウンドしすぎて疲れただけじゃよ」 こっちは仕事で疲れているのに、ゴルフで疲れたとはうらやましいことだ、と男が思っていると、 「そういうわけじゃから、お主、ワシに何か食い物を恵んではくれないかのう?」 と唐突に切り出した。何がそういうわけなのか分からないが、ここで出会ったのも何かの縁だろう。 そう思った男は出会ったばかりの彼を自分の家へと連れて帰った。 それは良かったが、しかし他人をもてなすような食事が用意できるわけでもない。 どうしたものやらと考えて、趣味で作っていたビールが樽の半分ほど残っていたのを思い出した。 何にもないよりはましだ、これで我慢してもらおうとそのビールを差し出した。 「……うむ、中々に美味い。素人が作ったにしては軽妙な香りと切れのあるのど越し。 飲みごたえのあるビールじゃ。こちらの世界では時々こういった面白い味のビールに出会えるから 楽しいわい。いやはや、遊びに来て正解じゃったわ」 「こちらの世界?」 男の質問には答えずに、ヒゲの男はあっという間にタルに入っていたビールを全て飲み干してしまった。 そんなにたくさん飲んで大丈夫だろうか、と心配になったが、 ヒゲの男の屈託のない笑顔を見ているとつい引き込まれて自分も嬉しくなってしまい、 何度も何度も杯を差し出してしまったからだった。 「すっかりご馳走になってしまったわい。さてさて、黙っているつもりはなかったがワシはシャティじゃ」 気のよさそうなおっさんにしか見えなかった目の前の男がまさか神人のシャティだとは、と驚く男。 しかもその神人が自分の目の前で自分が作ったビールを飲むだなんて、と突然のことに信じきれないでいた。 「ん? 信じておらぬようじゃな? 失礼なやつじゃのう、と言いたいところじゃがまあよいわ。 美味いビールを飲ませてもらったから、何か礼をせねばな」 そういうとシャティは懐をごそごそと探り、「うむ、これがよい」と鈍色に輝く首飾りを出した。 「これはワシがこしらえた特別な首飾りじゃよ。 ありふれたものに見えるかもしれぬがれっきとした神の作。 そんじょそこらの物とは一味も二味も違う。 真中にぶら下がっている卵みたいな容器の中に物を入れると、それが金でも銀でも何でも、 入れたものが二倍になって生み出されるという逸品じゃよ」 「そんな貴重な物を私が作ったビールと引き換えでよろしいのでしょうか?」 「なあに、自分の作品は自慢したくなるものじゃ。 それに之は試作品だからそんなに有難がるものでもないわい」 そういってシャティはすっくと立ち上がり、男の家を出ようとしてふっと振り返り、 「そうそう、言い忘れておった。 何せこれは試作品じゃから、初めに容器に入れた物だけしか増やせぬでな。 試そうと思って石ころなんぞを入れて後悔せぬように、よく考えて使うのじゃぞ」 と思い出したように告げると、煙か霧かのように男の目の前でふっと消えてしまった。 呆気にとられたまま、男は机の上に残された首飾りをじっと見つめたままだった。 はてさて、シャティからもらったはいいが、ではいったい何を増やそうかと悩む男。 金でも銀でも増やせるとシャティは言ったが、そういう高価な物は何一つ持っていない。 あれでもない、これでもない、と考えた末に、親の形見である光る石を増やしてみることにした。 いまだ完全には信じきれない中、卵型の容器の中へその光る石を入れ、一晩。 朝、目覚めた男が確かめてみると、確かに入れた石が二つに増えていたのだ。 「これはすごい物を手に入れた。シャティ様は何とお優しい方なのだ」 男は驚きと喜びのあまり思わず小躍りしてしまった。 村でとれるこの石は貴重品として取引され、決して高価ではないがさりとて安値ではない。 男が増やした親指の先ほどの大きさであれば、売るとしばらくは働かないで暮らせるだけの値打ちはあるのだ。 そんなこんなでこの男、光る石を増やしては売り増やしては売り、とそれなりに裕福な暮らしができるようになった。 しばらくすると男の耳にふと情報が入ってきた。 隣の国でこの石の人気が高まり、今までの何倍もの価格で取り引きされるようになったというのだ。 それを聞くなりこの男、 「これはシャティ様が与えて下さったチャンスに違いない。もっともっと増やしてさらに儲けよう」 としめしめと笑った。 それからというもの、男は石を増やす作業に没頭した。今までは一晩寝ているうちに増えていた石だが、 どのタイミングで増殖するのかを見極められれば時間のロスなく増やすことができる。 何度か失敗しながらも、男はついに増殖のタイミングをつかみ、 それからは家からもほとんど出ずにひたすら首飾りと向き合って石を増やし続けたのであった。 それから数カ月後。カゴ一杯に光る石を詰めて、男は大もうけだと街へ意気揚々と向かった。 ところがである。せっかく増やしに増やした石なのに見向きもされない。 あれだけの値段がつく石なのに、である。 一日中いたがさっぱり売れない。 それでも男はあきらめきれず、道行く人に話しかける。 すると、驚くべき言葉が返って来たのだ。 「なんだい、こんな石。今時こんなのじゃいくらの値段にもならないよ」 「どうしてだ? 隣の国に持っていけば高値で売れたんだろう?」 「あんた何にも知らないのかい? その国の山から同じ石が採れるとわかってな。 今じゃ拳大の石がごろごろ産出されるんだ。 そのせいで小さい石なんかには全然値段がつかなくなったのさ。 あんたが売ろうとしている指先程度の大きさの石じゃ、売ったってパン一個だって買えやしないよ」 「そ、そんな……」 せっかく寝食を忘れて増やした石なのに、ほとんど価値がなくなってしまっただなんて。 男は愕然として立ちつくしてしまったのだった。 教訓 状況は常に変化している。それに乗り遅れた者は損をする |
教皇庁に伝わる神像 |