『第1回掲載を終えて』


どうもこんにちは、天河真嗣です。
SF大河小説<トロイメライ〜その声を忘れないから>第1回「在野の軍師」、
全6週に亘ってお届けして参りましたが、楽しんでいただけたでしょうか?
本編開始からおよそ一ヶ月が経過、幸いにも好意的な意見をたくさんいただきました。


Webサイト上の閲覧に適したスタイルにする為、本編開始に先立って第1回の編集作業を行ったのですが、
そのときになんとも言えない感慨が胸に迫ってきたことが強く印象に残っています。
まるで過ぎ去った青春の輝きを追体験しているような錯覚。
既にライターチームは三年先のスケジュールを見越して原稿の執筆へ入っているのですが、
そこには、二十数本のエピソードの分だけ経験を経て、心身ともに成長したキャラクターが存在するわけなんですね。
二十数回分の蓄積ですから、出発地点と比べると別人のような、見違えるような変化を遂げています。


ところが、第1回の主人公たちには、そうしたものがない。
まだ何者にもなっておらず、何ら背負うものがない。まさに無垢でいられた時間です。
やがて訪れる運命を知らないまま、穏やかな精一杯謳歌するアルフレッドたちの姿に、
僕は、かつて自分も体験したモラトリアムめいたものを感じたのかも知れません。
変化の瞬間へ感慨が湧くと言うのも、長いスパンで人物造型をじっくりと深めていける大河小説ならではの醍醐味ですね。


来週3月12日からは第2回「奇妙な迷子」の掲載がスタートします。
こちらは朔神栞さん入魂のエピソード。僕や激極の原稿とは異なるタッチの作風を楽しんでいただけると思います。
栞さんは、アルフレッドたちの青春の一ページを繊細かつ軽妙に切り取ってくださいました。
このエピソードがあるからこそ、後々の展開がより生きてくるのだろうな、と。
全てのエピソードが有機的にコネクトされ、相乗効果を生み出しています。
こんな経験は僕も生まれて初めてで、手前味噌ながら、<トロイメライ>と言う作品の持つパワーを
とても頼もしく思っています。


執筆のほうは、いよいよ中盤のクライマックスに差し掛かります。
これから先は大規模な合戦が続きますし、キャラクターや人間関係もどんどん変化していきます。
「まさかアイツがこんなに変わるなんて!」なんて面食らうこともあるかも。
激流のようにうねっていくストーリーと併せて、経験の蓄積から生まれるキャラクターの変化や成長を
心ゆくまで楽しんでいただけたら幸いです。


2011年3月5日 天河真嗣