第13回
「愛しき友よ」
みどころガイド


執筆・プロット:天河真嗣


〈トロイメライ〉と言う作品の、これは試金石!


企画発表当初から声高にプロモートしてきたことですが、〈トロイメライ〜その声を忘れないから〉とは、
ひとりの青年軍師を主人公に据えた軍記ものとして描かれています。
ストーリーの構成上、「戦い」そのものが全体を支える大きな柱になっており、
一つの戦役を中・長期のスパンで掘り下げていく機会も必然的に多くなります。
言ってみれば、合戦シリーズですよね(笑)。
従って、シーズン1のクライマックスにあたる「両帝会戦」は、合戦シリーズのトップバッターに当たるわけです。
複数の回に跨いで合戦を多面的に描写していくこの合戦シリーズは、中盤以降、どんどん増えていきます。
つまり、要所で合戦シリーズが挟まれる構成になっていると言うことです。
合戦シリーズこそが、〈トロイメライ〉のストーリー構成の要になる部分とも言えるでしょう。
つまり、第13〜15回・全3回で取り上げる予定の「両帝会戦」は、これから始まる合戦シリーズの試金石。
〈トロイメライ〉と言う作品が持つ個性や方向性を強めるのに必要な通過点になるんじゃないかと僕は捉えています。

軍師=知将としてのアルフレッドの強さもこれからどんどん表に出てきます。
例えば作戦会議のシーンなどは、他の作品では割愛されてしまう部分なのですが(議論自体がどうしても長くなるので)、
ここはアルフレッドの本領発揮と言うことで、敢えて長めに尺を取っています。
最終決定稿を仕上げながら改めて思ったのは、戦略・戦術を考案している最中のアルフレッドがなんと輝いていることか。
これまで「悪(わる)フレッド」などとさんざんなニックネームで呼んでいましたが、
いよいよ主人公らしさに磨きが掛かって来て。
今のアルフレッドならば、座長として〈トロイメライ〉を率いていけるだろうと、
なんだか子の巣立ちを見守る親のような心持ちです(笑)。
僕らライターの役目は、アルフレッドの主戦場である議論の席にて、
如何にストーリーを停滞させず彼の魅力を引き出していくか。
議論そのものを会話劇のように演出するなど試行錯誤の毎日です。


手に汗握る為政者たちの駆け引き!

両帝会戦とは、読んで字の如く、武装難民こと唯一世界宣誓ギルガメシュ(Aのエンディニオンの軍勢)と、
テムグ・テングリ群狼領を中心とする反ギルガメシュの連合軍(Bのエンディニオンの軍勢)による戦役の総称。
そして、第13回「愛しき友よ」は、この両帝会戦の緒戦にあたるパートを描いていきます。
ゼラール軍団が演じる局地戦からスタートする両軍の陣取り合戦は、
時々刻々と戦況の変化を伝えられるよう気を配ってみたのですが……。
この陣取り合戦は、将棋やチェスと言ったボードゲームが好きな方には特に楽しんで頂けるのではないかと。
ギルガメシュ、テムグ・テングリ群狼領双方の軍師による腹の探り合いは、
僕も楽しみながら書かせて頂きましたね。

また、陣取り合戦に伴って、世界各地から様々な勢力が集結していくのもポイントの一つ。
テムグ・テングリ群狼領のもとにはギルガメシュ打倒に燃える人々が続々と集まり、
一大連合軍のように膨らんでいきます。
ただし、テムグ・テングリ群狼領自体もBのエンディニオンの諸勢力からは
必ずしも歓迎されているわけではありません。
連合軍の中には、お互いを邪魔に思っている政敵も含まれています。
主要レギュラー、ジョゼフもまたテムグ・テングリ群狼領を苦々しく思うひとり。
曲者揃いの連合軍は、ギルガメシュとの戦いの「先」、つまり次の主導権争いまで視野に入れて
内部で駆け引きを展開していきます。まさに呉越同舟の状況です。
一方のギルガメシュは、同じ曲者揃いでありながら、目的や意思は統一されています。
腹芸に長けた為政者の集まりと、原理主義組織との性質の違いが両帝会戦にどのような影響を及ぼすのか。
兵力は圧倒的にテムグ・テングリ群狼領率いる連合軍の優勢ですが、
それにも関わらず足並みが揃わないような、そんな独特の緊張感が常につきまとうことになります。

最大のみどころは、開戦前夜の人間模様!

合戦シリーズと一口に言っても、戦闘の経過だけを細かく列挙しただけでは
〈トロイメライ〉の独自色を出したことにならないとは、プロットを作った段階で思っていました。
アルフレッドの、また作品の一番の見せ場ではありますが、合戦=命のやり取りに他ならず、
そこに臨む群像の心の揺らぎまで掘り下げてこそ、真に迫った戦いと言うものを描けるのではないか、と。
合戦と言う極限的な状況で発生する人間ドラマを拾い上げることは、
〈トロイメライ〉のお話を作るにあたって最も気を配った部分です。
2の項目で触れた為政者たちの駆け引きが合戦の成り行きを俯瞰するものならば、
ここで触れるのは、地に足をつけてレンズを向ける光景とでも言いましょうか。
登場人物たちがどのような思いを抱えて戦地へ赴いたのか、また、合戦に何を期するのか……。
戦争とは無縁の世界にいた人々が変わらざるを得なくなるプロセスまで含め、
エモーショナルな部分をしっかり掘り下げてこそ、
〈トロイメライ〉と言う作品に於ける合戦を描いたことになるだろうと考えた次第です。

第13回は、まさしく開戦前夜のエピソード。
徐々に近付いてくる宿命の対決へ思いを馳せ、心を揺さぶられる群像を楽しんで頂ければ幸いです。



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