第14回
「両帝会戦(前編)T字戦法の奇跡」
みどころガイド
執筆・プロット:天河真嗣
鳥取砂丘ロケからインスピレーション!
2012年8月にまで遡るのですが、
シーズン1最大の目玉と考えていた両帝会戦のキービジュアルなどの素材を撮影する為、
鳥取砂丘にてロケを行ったんですよ。
砂漠の画像を確保したいと言う情熱だけで大遠征。
小説中心のサイト展開としては、これは異例の快挙と言ってもいいんじゃないでしょうか(笑)。
撮影のことは別のページ(鳥取砂丘ロケのレポート)でも紹介していますが、
ロケの最中、海に面した砂丘と言う地形を眺めているうちに、
「ここで上陸戦をやったら面白いな」「上陸前には軍艦が浮かんでいてもいいな」「じゃあ海戦も起こるよな」と
色々なシチュエーションが浮かんで参りまして(笑)。
ロケ直後は、ご存知のように僕は熱中症で倒れてしまったのですけど、
コケの一念と言いますか、旅先で砂丘と言う地形を生かしたお話のプロットを錬りました。
本来、両帝会戦は次の第15回にあたる一本のエピソードのみで描かれる予定だったのですが、
上記の追加ストーリーを挿入すると、「加筆」と言う分量では収められなくなる。
一本のエピソードだけ飛び抜けてボリュームが膨らんでしまうと言う事態になりまして、
最終的に前後編で両帝会戦を描くと言う判断になりました。
激々極々君やムツさんは、さすがにこれには呆れてましたね(笑)。
激極にいたっては、「どうして(天河の発想が)海戦にまで発展するのか、わからない」と、
しきりに首を傾げておりました。
全編ほぼ船上シーン!
第14回で一番の仕掛けは、なんと言ってもストーリーが展開する舞台。
これまで掲載してきたエピソードの中でも珍しく、ほぼ船上のシーンでストーリーが進行していきます。
主人公たちの根拠地を出港し、砂丘およびそこを護衛する軍艦との戦いに到達までを
じっくり時間を掛けて描いていくのですが、頭の中のイメージを文章として落とし込む最中も
ずっと解放感のようなものがありました。
半面、急遽追加したエピソードだけに新たに調べなければならないこと、
集めなければならない資料が急に増えてしまって(笑)。
これはもう自業自得としか言いようがないのですけど、
船上のシーンを書こうと思わなければ調べる機会がなかったことばかりでしたので、
取材は大変だったけど、その分、試行錯誤は面白かったですね。
船の構造や各部位の呼び方も付け焼き刃にならないよう注意して調べていったつもりです。
船上シーンのもうひとつのみどころは、新しい人間関係の誕生や色々な情報の整理ですね。
掲載は前後編に分かれましたが、既に完成しているエピソードへの追加・挿入と言うことに変わりはありませんので、
それならば…と、初稿の段階で説明不足だった点や今後の展開を補強しうる要素を積極的に盛り込んでいきました。
なんと言っても一番大きな動きは、シェインに相棒が出来ることでしょう。
考えてみると、シェインには同年代の友人っていなかったんですよ。
対比となるキャラが生まれたことで、今までにないシェインの新しい一面が出てくると思います。
蘇る! 伝説の東郷ターン
第14回のクライマックスは、<トロイメライ>始まって以来最大規模の海戦シーン!
一応、前作でも海戦シーンを書いたには書いたのですが、
当時は船の航行について全く知識が乏しく、結局はインパクト勝負の力押し(笑)。
今回は軍師が主人公のお話で、かつ僕自身も多少は古今東西の戦史を勉強したので、
ケレン味からリアリズムのほうにストーリーのバランスを振ってみました。
前作との最大の違いは、アルフレッドの立ち向かう軍艦が帆船ではなく近代兵器と言う点。
「軍船」の時代なら海賊映画のようにロープを使って船から船に飛び移ったり、
衝角で突撃すると言った格闘戦的な描写を盛り込めるのですが、
「軍艦」の時代に入ると、どうしても艦砲射撃が中心に。
それもそれで面白いのですけど、身も心も肉弾系のキャラが多い<トロイメライ>で
ストレートに近代的な射撃戦を描くのがベストなのか。そこが最初の難関でした。
トラファルガー海戦など過去の戦史や戦術を調べていく中、
艦砲射撃と格闘戦の趣を両立する題材として僕は日露戦争の日本海海戦を選びました。
サブタイトルにも堂々と「T字戦法」とありますので、ピンと来た方もおられるでしょう。
連合艦隊がバルチック艦隊を撃破した伝説的な「東郷ターン」の再現にも挑戦しております。
勿論、ここでも<トロイメライ>ならではのアレンジを加えています。
かなり大胆なアレンジなので、「これのどこが東郷ターンなんだ!?」と言われてしまうかもしれませんが、
<トロイメライ>版と言うことで、納得していただけたら幸いです。
ケレン味、トンデモアクションがなけりゃ<トロイメライ>じゃない、と(笑)。
初めての本格的な近代戦と言うこともあり、海戦シーンの描写にも相当力を入れましたが、
最もこだわったのは、電子戦的な面白味。
番外編でミリタリー監修をしていただいた よしつね氏が「近代戦争では目視で敵の位置を確認するのは有り得ない。
レーダーで敵の位置を確認している」と熱弁されているのを聴き、
折角なので今回はそれを参考にしてストーリーを作ってみました。
聴けば当たり前のことなんですけど、ミリタリーには明るくないもので(そのくせ、戦車とか戦闘機は好きですけど)、
僕はもう、よしつね氏のお話には目から鱗状態。
前回のみどころガイドでも書いているのですが、合戦の内容についても両帝会戦は試金石になりそうです。
※第15回「両帝会戦(後編)復讐と決着のはざまで」みどころガイドは今春掲載予定です