シフトアナーキズム
天河真嗣×激々極々


ースペシャル対談ー
21世紀のウィリアム・リンクとリチャード・レビンソン


SF大河小説<トロイメライ>には総勢三名のライターが参加しています(2011年5月現在)。
その中心を担っているのが、天河真嗣と激々極々によるコンビ「シフトアナーキズム」。
「トロイメライ」の原動力とも言うべき「シフトアナーキズム」のふたりが
出逢いから今日まで、そしてこれから先のことを
七時間に亘って語り合いました!

これまであまり語られることのなかった「シフトアナーキズム」の裏側、本音、暴露………
21世紀のウィリアム・リンクとリチャード・レビンソンを目指すふたり(天河談)の
ぶっちゃけトークをどうぞお楽しみください!

ちなみに天河氏は携帯電話の待ち受け画面を
激々極々とのツーショット写真にしているってウワサですよ!?





天河 真嗣
「トロイメライ」製作総指揮、執筆ほか担当
「フェイク・オア・フェイド」
「ずっと天然」ほか
激々極々
「トロイメライ」クオリティマネージャー、執筆
「戦国桃太郎」

1 ふたりのなれそめ

天河: 「トロイメライ」の本編掲載が始まって、早四ヶ月が経ちました。
今回は本編小説パートを担当している僕と激極のふたりで、ざっくばらんに製作秘話のようなものを語らっていきたいと思っています。
では、激極くん、自己紹介をどうぞ!

激々極々:自己紹介と言われましてもねえ…。
激々極々略して激極です。天河くんとは中学時代の同級生なわけでして、
それが縁でこの「トロイメライ」の小説パートを担当する羽目になってしまったわけなんです。
ちなみに星座は牡羊座。顔の特徴はひげヅラです。

天河: 加藤清正みたいな髭って良く言われてるもんね。

激々極々:それはあなたしか言っていないっての(笑)。

天河: 改めて振り返ると、十数年来の付き合いなんだよね。

激々極々:高校・大学時代は全くと言っていいほど縁は無かったんだけどね。
それが今こうしてこんなことやっているんだから、人生ってものはよく分かりませんね。

天河: じゃあ、我々「シフトアナーキズム」の馴れ初めから、ちょっとずつ話をしていきますか。
中学生時代なんて、思い出すだけで首を吊りたくなるような赤っ恥ばっかだけどさ(笑) 。

激々極々:馴れ初めって、中学の同級会で再会したからたまたまこうなった、としか言いようがないなあ(笑)。

天河: 激極のおっさんの小学生時代は、なんと言うか、アグレッシブだったみたいだね。
近所の駄菓子屋にとんでもないいたずらを仕掛けたりとか。
無法者の集団だったって話は昔から聞いていたんですけども。

激々極々:いやいや、わたしは単なる傍観者でしたから。
中学時代に廊下や教室で恥ずかしい叫び声を上げていたあなたにゃ負けますねえ(笑) 。

天河: 三谷幸喜さんの少年時代の話を聞いてるとね、すごいかぶるんだよ、俺。
あの人もいたずらばっかりしてたんだって。
いたずらっ子のマインドとしてはね、周りが笑ってくれたら、それでオールokみたいなところがあるからね。
呆れられてナンボ、みたいな。
教室のカーテンにくるまって一時間ずーっと隠れてな。ときどき奇声を発するんだよね。
あれは、傍観者の目にはどう映ったんだろう…。

激々極々:少なくとも、女子には呆れられるどころか既に存在していなかった扱いだったような(笑)。

天河: 今、明かされる衝撃の事実(笑) !

激々極々:まあ、カーテンの一件だけですよ。

天河: ま、いたずらっ子としてはね、ひとりでも楽しんでくれたらそれで最高って感じだから。
いいんです、女子人気は(笑) 。

激々極々:他はどうだったかは今となっては記憶があやふやで覚えておりませんで。
何せもう来年30歳だもんな。

天河: 出会う前よりも出会ってからのほうが長いんだよな〜。………三十路………。
逆に俺から見た激極は、くだけた優等生ってイメージだったね。
一緒に馬鹿やるんだけど、でも、一定のラインは超えないよって感じ。意外と隙を見せないんだよね。
顔立ちとかえらいエキゾチックだなーって印象もあったね。その頃から髭生やしてたし。

激々極々:昔っからひげは生えていたねえ。さすがに当時と今じゃ比べるまでもないけれど。
まあ、中学時代はそういう皮をかぶったサボリ魔だったんだけどね。
大学時代に本性が現れて学校行かなくなったし、そのおかげでダブったし(笑)。

天河: 俺は小学生の頃から漫画とか小説の真似事をしていたんですよ。今でも鮮明に覚えてるんだけど、
小2のときにみんなで集まって勉強していたときにね、すぐにイヤになって、ウルトラマンの漫画を描き始めたんよ。
そのときに何かを表現する楽しさに目覚めたって言うか。世の中にこんな面白いことがあったのかって気付いた。
それからウルトラマンや聖闘士星矢のパロディ漫画をずっと描き続けていたんだけど、
小4のときだったかな………、今度はゲーム作りの真似事に目覚めました。
このあたりって以前に話したっけ?

激々極々:わたしは聞いていますけれど、読者の皆さんは知らないのではないでしょうかね?
とりあえず、ガンガンやっちゃってください。

天河: そういう意味では本邦初公開かも知れない! 当時の担任がパソコンに詳しい人だったんだよな。
その先生を中心にパソコンクラブが作られたって言うんで、早速入部してね。
ゲームの仕様書とかシナリオの書き方をそこで教わったんだよ。ダンジョンとかマップの作り方も習ったな。
企画の作り方とか、専門的な部分の手解きはさめじま師匠から受けたんだけど、その前段階を教わった感じ。

激々極々:「天河の原点」っつーやつですね。

天河: 結局、他のクラブに入る為にパソコンクラブは最初の一年で辞めちゃったんだけど、
退部してからも小学校高学年はずっとゲーム作りの真似事やってました。
おっさんはどーすかね。小学生の頃にそーゆー経験は?

激々極々:うーん、絵は棒人間レベルだったし、今みたいな物語を書いたりもしなかったような記憶が。
友達と「ぼくのかんがえたRPG」みたいなネタを出し合ってはいたけれどね。

天河: やっぱり俺が悪の道に引きずり込んだんだな(笑)。

激々極々:まあ、本格的に小説を書くってのはあなたに引きずり込まれるまではやりませんでしたね。

天河: 小学生の頃もそうだったんだよ。自分で漫画を描いてはいたんだけど、周りも巻き込んでね。一緒にやってみようぜって。
クラスメートをキャラクター化してゲームのシナリオを書いたりとか、漫画を描いたりとかもやったな。
中学へ進学してすぐに仲良くなったお前にも、この面白さをぜひとも伝道しなければなるまい、と。
それでこっちの世界に引っ張り込んだわけですけども。
なんかヘンなことやってるなーって、やっぱり最初はそんな目で見ていたのかね。

激々極々:いや、クラスに2、3人はいるでしょう、そういう人。
どっちかっていうと自分もそっちよりだし、変だとは思わなかった、はず。
変だと思っていたら、某仏教RPGネタなんて書かないだろうし、書いたとしても見せなかったろうね。

天河: そんなもんすかね。最初に俺がお前に見せたのって、「昆虫物語」?

激々極々:そう、「昆虫物語」、だった記憶。

天河: 解説をしますと、一匹のアリを主人公にして、昆虫の世界を冒険するって
アドベンチャーRPGのシナリオみたいなものを書いていたんですよ、当時。趣味の範囲でね。
それが昆虫物語なんですけど、こんなことやってるんだよーって激極に読ませたのが、
彼の運命を変えるきっかけになったわけです。
■解説・昆虫物語とは?
「対談の中でも説明していますが、中学生に入って僕が最初に書いたゲームシナリオです。
一匹のアリを主人公に昆虫の世界を冒険する生粋のファンタジーものです。
ハチやカブトムシらを仲間に加えながら、昆虫の世界に襲い掛かるクモの化け物に立ち向かっていきます。
後年、ゲームサークルで一応はゲーム化したのですが、マスターデータが破損してしまった為、
今では幻のソフトとなりました。いつか小説として本格的に書いてみたい気はあります。(天河)」
激々極々:運命ってのは大袈裟かもしれないけど、すごく刺激になったのは確かだね。

天河: 次に英語の教科書に出てくる登場人物で大作RPG風のシナリオを書いたりね。
シナリオってほど大層なもんじゃないけど。クラスメートが、やっぱり俺と同じような遊びを始めて、
その手伝いを俺とお前でしたこともあったよね。あれも俺が引っ張り込んだんだった。
最終的に俺らが全部乗っ取ったけど(笑) 。

激々極々:最終的に核エネルギーがどうのこうのっていうヒドい作品になってしまいました(笑)。

天河: シナリオ遊びをしつつ、小説を本格的に書き始めた時期でもあったな。
「藪畑任三郎」 、覚えてる? 

■解説・藪畑任三郎とは?
「タイトルからしてもう丸わかりなんですけども、当時僕がハマリにハマッていたテレビドラマ『古畑任三郎』のパロディ小説。
通算で三本書きました。ドラマ全編を通して貫かれたフォーマットに則った倒叙ミステリーです。
キャラクラー設定はパロディですが、エピソード自体は僕のオリジナル。この『藪畑』を通じて
ミステリーを書く面白さに目覚めた僕は、高校に入ってから『秋月楓の捜査ファイル』と言う倒叙ミステリーを
何本か書きました。『秋月〜』もちゃんと書いてみたいなぁ。
『藪畑〜』のうち、第2回にあたる『殺意のコロッケ』は傑作としてクラスメートの間で語り継がれています(天河)」
激々極々:あなたの生活ノートに思いっきり書いていたよね。
そんなに書きまくるなら専用のノートを使えよ、と今になって思う(笑)。

天河: そう、生活ノート。俺らのガッコには日記帳と連絡帳と予定表をいっしょくたにしたようなノートがあったんですけど、
日記の欄に僕は小説を連載していました(笑) 。
でも、小説って言うか、純粋な活字の作品では、俺よりお前のほうが意欲的だったと思うけどね、当時。
「おいのり」とか「紫雲」とか。

激々極々:まあ「おいのり」は二次創作の域だし、「紫雲」はありていに言うと「はだしのゲン」のパクりだけどね(笑)。
まあそういう作品でも、書くことで今日の土台となっているような気がしなくなくもないかな。

天河: 核ミサイルを億単位で撃ち合ったり、次元を軽く消し飛ばすって言うダイナミズムは、
ちょっと普通の中学生には真似できないよね。 て言うか、思いつかない!
「おいのり」はクラスの男子がみんな喜んで読んでいたんだじゃないかな。

激々極々:ノリだけは90年代ジャンプマンガみたいな感じだったからかもね(失礼)。
■解説・おいのりとは?
「中学生時代、教科書に載っていた『おいのり(三木卓著)』の続きを書こうと言う課題があって
書くことになった、激々極々の処女作(※正式には『続・おいのり』と言うことになります)。
何がどうなったのかわからないが、一匹の猫が超絶進化(メタル化を含む)を繰り返し、
億単位の核ミサイルを撃ちまくり、一億以上の次元を消滅させた、
ドラゴンボールもびっくりのパワーインフレ作品(激々極々)」
天河: そういう作品を読ませて貰っていたから、次の「紫雲」はすごく意表をつかれたね。
戦後の闇市を扱う小説なんて、中学生が思いつく内容じゃない。
「はだしのゲン」へのオマージュだとしても、なかなかそこには行き着かない。

激々極々:あえて褒めるのならば、着眼点“だけ”は良かった、ってところかなあ。
結局グダって第一部すら完結できなかったし。
■解説・紫雲とは?
「なぜかよくわからないけど、中学生のときに書いた、戦後の広島を題材とした未完の作品。
『はだしのゲン』をパクッた原爆投下のシーンに始まり、主人公が戦後の闇市を舞台に
仲間たちとしぶとく生きていく…はずだったのだけど、なぜだか途中で峠道でトロッコでドリフトを決めたりする、
方向性のわからない作品になってしまいました(激々極々)」
天河: 中学生離れした才能や着眼点には、当時、俺はとてつもなく嫉妬していたからね(笑)。
絶対に自分には書けないって。モーツァルトに対するサリエリの気持ちってこんなんだろうなって。

激々極々:たとえが大げさすぎやしませんか(笑)?

天河: 今でもしっかり覚えてるもの。パクリって言うか、当時、ハマッていた作品のツギハギしか書けなかった俺に
「お前の書くものはパクリばっかじゃねーか」ってぴしゃりと言ってくれてねぇ。
それからですよ、オリジナリティってのを意識するようになったのは。

激々極々:ああ、言ったねえ。
実際問題、私の方も言えた義理は無かったんですけどね、パクりがどうとか。

天河: さっき話に出た仏教RPGこと「曼荼羅」なんて、パクリのオンパレードだったもんね(笑)。
某有名ゲームメーカーに見られたら、だいぶ危ないことなるもんね。

激々極々:まあ、一番危ないのは改宗システムですけどね(笑)。
ジョブチェンジのノリで宗教変えるとかいろいろやり過ぎ。

天河: 改宗システムは、改良を加えて、配慮を施せば、そこそこ面白いシステムになると思うんだよなー。
信仰心をポイント化したりしてね。改宗するとリセットされちゃうとか。

激々極々:いやあ、充分に危ないぞ、信仰心のポイント化とか。
まあ、ある意味中世を皮肉っているような感じは出ていますけど(笑)。
■解説・曼荼羅とは?
「『魍魎戦記マダラ』からタイトルだけ拝借して作られた作品。元は妄想RPGのネタ。
西遊記がベースになっており、三蔵法師が三従者や他の仲間とともに地元まで越えて活躍する話。
五・七・五で表すと、『イケメンが 世界救って 嫁ゲット』。
構想15年。未だに製作に取り掛かる気配ナシ(激々極々)」
天河: ね、こう言う発想力に嫉妬を覚えるんですよ、僕は。
結局、お前を超える前に中学卒業になってねぇ。「トロイメライ」は、ある意味、雪辱戦ですよ(笑) !

激々極々:雪辱戦なのか(笑)!


2 ウィリアム・リンクとリチャード・レビンソン/または、リチャード・レビンソンとウィリアム・リンク


天河:今日は高校時代の話もしてみようか。普段、あんまりしたことないもんね。
お前に関しては、ヒゲを染めて問題になりかけたとか、そのあたりのことしか聞いたことないし(笑)。

激々極々:問題にはなってないから(笑)。
「校則には『髪を染めてはいけない』とは書いてあるけど『髭を染めてはいけない』なんて書いてないでしょう?」と言ったら
大丈夫だったし(笑)。

天河: 中学の頃も怖い体育科の先生を鼻で笑って挑発しただけのことはあるな。それも二回も。

激々極々:鼻で笑うのは本当に単なる癖で、挑発とかの意図は全くなかったって(笑)。

天河:俺は創作に関しては、高校入ってから本格的にエンジンがかかった感じなんだよね。
小劇場演劇の座付き作家をやり始めたのも高校からだし、サークルを組んでゲーム開発もやった。
とにかくやりたいことをやりまくろう、と。

激々極々:創作活動みたいなことは一切やっていなかったなあ。
競馬ゲームとか「信長の野望」とかで遊んでいたくらいだったような。

天河: 意外だなー。

激々極々:勉強に忙しかったってわけでもないし、本当に何やっていたんだろう、高校時代。

天河: 高校に入って、色々な活動をし始めてから、改めてお前の存在を大きく感じたもの。
こう書くと、なんかアブない匂いがしてくるが…(笑)。

激々極々:危なくない、危なくないから(笑)。

天河: その頃からピーター・フォークの「刑事コロンボ」に本格的にハマってね。
ビデオは勿論、ノベライズとか読み漁ったんよ。
で、制作秘話をまとめた「刑事コロンボの秘密」って本を読んだとき、ちょっと興味深い記事を見つけてね。

激々極々:ほうほう。

天河: そもそも「刑事コロンボ」って言うのは、ウィリアム・リンクとリチャード・レビンソンって言うコンビが生み出した作品なんだよ。
ドラマ化されるより以前には、リンクとレビンソンの原作者コンビが手がけた舞台劇にもコロンボ警部は登場している。
そっちはどうやらプロトタイプらしいんだけど…いずれにせよ、あまり日本では知られていないことだ。

激々極々:だろうねえ。

天河: 日本でリンクとレビンソンと言えば、むしろ「ジェシカおばさんの事件簿」シリーズのほうが有名かも。
そのリンクとレビンソンの名コンビってのがね、中学の同級生同士だったんだよ。

激々極々:そうだったんだ。

天河: 趣味も同じ。書くことが好きなのも同じ。意気投合して創作活動を始めた…って言う紹介文を読んでいたら、
あれ、これって俺と激極じゃんって思って(笑)。
そもそも俺とおっさんを引き合わせたのも、旧スクウェアがおよそ二十年前に発売した「ライブ・ア・ライブ」ってゲームだったんだよね。

激々極々:ああ、そうだったね。あれは名作。

天河: 「古畑任三郎」が大好きだったって言うのも共通してる。
偶然だけど、リンクとレビンソンもミステリー好きということで話が合ったみたい。
これまた偶然だけど「古畑任三郎」は「刑事コロンボ」と良く似ている(笑)。

激々極々:そうだね、偶然似ている(笑)。

天河: ねー、古畑とコロンボってすごく似ているよね。…このあたりはあまり突っ込みすぎると抹殺されるな(笑)。

激々極々:まあなんていうか、「古畑任三郎」は名作だという事で一つ(笑)。

天河: 話を戻すと、自分と激極のおっさんのことをリンクとレビンソンの名コンビに重ねてしまってね。
やっぱり俺はコンビで活動したいって思って、何度か電話なり手紙なりでコンタクトを取ろうとしたんよ。
結局、踏ん切りがつかなくて高校のときは誘えずじまい。
軽い気持ちで映画にでも誘おうと思って電話したら、お前は北海道大学に進学していたと言うオチまでついて(笑)。

激々極々:後になって聞いたけど、さすがに北海道に気楽には行けないわな(笑)。

天河: 運命的なものを感じはしたんだけど、やっぱりその程度の縁だったのかな。
俺は思い込みが激しいもんなって一時は諦めて。
成人式のときも、お前、地元に帰ってこなかったし、いよいよ誘うチャンスがない。
ま、俺も演劇の仕事とかで忙しくなっていたし、いつまでも昔の男を引きずってもいられないなって(笑)。

激々極々:「昔の男」って嫌な表現だなあ(笑)。

天河: でも、激極のおっさんのことは常に意識していたね。
超える超えないってわけじゃなくて、どうすれば彼のように発想力豊かになれるかな、とか。
高校の時分に哲学書にハマって、それから意識して色々な勉強をし始めたんだけど、
そこで時間をかけて本を読み込むって習慣がついたのも大きかったね。
激極のおっさんのインテリジェントには逆立ちしたって勝てっこないんだから、
自分は自分のできる範囲のことを精一杯こなしていこうって。

激々極々:インテリジェントと言いますか、何と言いますか(笑)。

天河: 時間をかけて本を読んで、頭の中で「自分ならこうする」って考えて、とにかく練り込んで。
実は、俺、高校の担任にも「お前は閃き型じゃない」って釘を刺されたんよ。
それでなにくそって発奮してね、閃きが鈍いって言うのなら、逆に考えることに時間をかけようと思って。
ネタを熟成させるコツはそこから培った感じ。思えば「トロイメライ」の原点もその頃に書いたもんだし。

激々極々:「大学時代の担当教授が」―――で始めると話が長くなるから略して、
とにかく「本を読んで考えろ」と言っていたからね。
あるものをたたき台にして自分なりの考察を加えるのは大事だと思います。

天河: 俺は専門学校時代も高校とあまり変わらなかったな。
参加していた劇団が少しずつ大きくなって、後はスタッフの集まりがさすがに難しくなって、
ゲーム開発のサークルが解散したくらいか。
俺としては専門学校そのものよりホテルでのアルバイトのほうが有意義だったね。
その道のプロフェッショナルが揃っているんだよ、ホテルって。それがすごく勉強になってね。

激々極々:執筆に生かせる人生経験というものがあるわけですよ、私と違って。

天河: プロフェッショナルの仕事ぶりを間近で見て、自分も鍛えられて。
これは劇団でもそうなんだけど、目上の人との付き合いってのは大切だって改めて思ったもの。
自分の知らない世界を垣間見て、それを吸収できるってのは大きい。
いろいろな人間を知って、キャラクター作りをする上で参考にしていきましたわ。
そういう意味では人生経験なのかな。でも、あんたもあんたでダブリとかいろいろ人生経験してるじゃないっすか(笑)。

激々極々:いえいえ、ダブったという結果を味わっただけです。
外に出ていないのだから、無為な時間を過ごしただけだと(笑)。

天河: 大学時代も引き続き創作はしていなかったんだよね? ただれた生活送ってたって聞いてるし(笑)。
それなのに復帰してもうこれだけ書けるってのがすごい。 まったく嫉妬せざるを得ない!

激々極々:まあ、論文は書いていたからね。一応学生だったし。全然関係ないだろうけど(笑)。
時間はたくさんあったから、マンガにしろ字ばかりの本にしろあれこれ読んではいたかな。

天河: 改めて中学卒業後を振り返ってみると、全く違う道を行ってるよね。
俺は学業より創作を優先していて、お前は創作は一時お休み、と。
創作をしつつも、でも学業を疎かにしないようになった俺と、学業を疎かにしたお前って言う対比にもなってる気がする(笑)。

激々極々:そうだねえ、正反対といってもいいくらい。
普通なら、中学時代の経緯があったからってこんな人間を誘おうとはしないだろうけどなあ(笑)。

天河: ふたつに分かれていた道が奇跡的につながったのが、2006年末の同窓会だった。
俺、仕事で遅れたんだよな。会場入りした頃には、もうおっさん含めてみんな出来上がっていて。

激々極々:そんな出来上がった人間に、計画中のネタ(今の「トロイメライ」)の話をするんだから
気合が入っているというかなんというか。

天河: 一度は諦めた夢がもしかしたら実現するかも知れない。これは行くしかないな、と。
リンクとレビンソンに重ねたコンビ結成は、もう今が最後のチャンスだって言うくらい思い詰めていたからね。
そのときのことは覚えてる?

激々極々:出来上がっているから、なんとなく、ってレベルで覚えてるな(笑)。
そこで私が「トロイメライ」に興味を持ったのが運の尽きとでもいうべきか。

天河: うまく乗せてやったぜ(笑)!
それからすぐに「フェイク・オア・フェイド」を読んでもらったんだよね、確か。
■フェイク・オア・フェイドとは?
「聖剣伝説3発売十周年記念企画としてスタートした、二次創作の長編シリーズです。
本編22話。番外編3話。完結編1話(三夜連続掲載)。全26話分のエピソードを一年かけて掲載。
聖剣伝説3をベースにしていますが、旧スクウェアより発売されたゲームソフトからも様々なキャラが登場。
ファンアートの領域ではありますが、『アマチュアにもここまでやれるんだ!』と言う気概をもって書き切りました。
お陰様で好評のうちに完走できまして。このときに培ったものは
今回の『トロイメライ』にも反映されています(天河)」
激々極々:そうそう。「こんなん書いてるから読んでみ」みたいな感じで教えてもらってね。
喜怒哀楽がしっかりしていて、各キャラクターにも見せ場があったし、ストーリーも壮大で重厚だった、という感想だった。

天河: 読了後に「(中学卒業してから)勉強したんだね」って言って貰えたのは、本当に嬉しかった。

激々極々:長年の積み重ねがあっての「フェイク・オア・フェイド」ですねえ。

天河: 自他共に認める“勉強なんてどこ吹く風”ってキャラだった俺が、
ちょっとヤクザ入ってるけど最高のインテリだと思ってる相手から「勉強したんだね」って………。
あれには感動したよ。

激々極々:だからヤクザはやめぃ(笑)。

天河: ようやく本当の意味でおっさんと肩を並べられたって言うか、
いよいよ皆さんご存知の「シフトアナーキズム」が始まりますよって。

激々極々:ついに始まりましたねえ。


3 「半券さん」と言う男(モンスター)


天河: コンビとしての初仕事は、一応、2007年正月のミーティングになるのかなぁ。

激々極々:そうだね。「トロイメライ」の登場人物が物凄い数描かれたスケッチブックを2、3冊持ってきて、
一人ひとり説明してもらったなあ。

天河: 撫子のキャラ設定を作り始めたのもそのミーティングなんだけど………、
そのすぐ後におっさんがインドネシアへ行くって話になって。 あれにはさすがに焦ったわ!

激々極々:まあすぐに帰って来たんですけどね、結局。
んで、その時の旅行記を書いて見せて、 「こんな感じでトロイメライの世界でのキャラで旅行記を書いてくれ」みたいに
頼まれたわけでしたよね。 謎の冒険者G・サンゾーだったかなんだったかのキャラで。

天河: そうそう、最初はそう言う旅行記をサイトに掲載させてって。
「トロイメライ」ではそれだけの仕事のはずだったんだけど………。

激々極々:おかしいよね、プロット読み始めるころからなし崩し的に小説部分を担当するはめになっていたんだよなあ(笑)。

天河: ま、他のスタッフが心血を注いで作品に打ち込んでいる中でひとりだけラクな仕事をしていられるわけがないってことで(笑)。
そういや、シフトアナーキズム発足の地って言うと大げさなんだけど、
最初のミーティングで使わせてもらったファミレスも、もう潰れちゃったんだよなぁ。
系列のグループは同じなんだけど、一度テナントが入れ替わって。しばらくして行ったら、今度はもう何もなくなっていた。

激々極々:久々に行ったら思いっきりコンクリートむき出しになっていたっけ。
客の入りが悪かったんだろうか。

天河: 昔、働いていたホテルが更地になったときに比べるとダメージは少ないんだけど、
でもやっぱりショックだったよなー。 ホームグラウンドがなくなったって感じ。
いや、何時間も陣取られているほうからすると、俺らは相当な迷惑だったかも知れないけど。

激々極々:基本的に使用していた5件のうちの1件だったもんね。
でもまあ、1人で数時間粘られるよりは、2人で数時間粘られた方がいくらかまし、ということで(笑)。

天河: ミーティングは大抵近場のファミレスでやるんだけど、通い詰めているせいか、
顔を覚えられているところも何箇所かある(笑)。 

激々極々:そうそう、入ったら「喫煙席ですね」って言われたこともあったし、
「漫画家さんですか?」と聞かれたこともあったなあ(笑)。

天河: ミーティングって言うとすごく大仰と言うか、議論を打つような物々しいイメージがあるんだけど、実態は…ねぇ?

激々極々:仮に3時間やるとしたら、平均で2.5時間は雑談とかバカ話で「トロイメライ」関係無いもんね(笑)。

天河: 作業やるときはさすがに半分くらい時間をアテるんだけど、それくらいのスタンスでいいと思うな。
特に今回は長いスパンで展開していくプロジェクトだから根を詰め過ぎてもよくないって言うか、
全力出し続けたままだと絶対に途中で頓挫する。

激々極々:「楽しみながらやる」っていうのがコンセプトの一つでもあるわけだし、
そのくらいゆるい方がかえって良いんだろうね。

天河: 逆に日常会話とかバカな話の中から発見もあるわけで。要はアンテナを張っているかどうかってこと。
何でも吸収するぜって言うくらいの気構えでいると、結構勉強になるんだよ。
激極のおっさんの話には含蓄があるからね。

激々極々:そうそう、バカ話の中の何気ない一言が閃きを与えてくれることもたまにはある。

天河: 「俺たち創作活動してるんだぜー」って気負ったりしないほうがいいなって言うのは、
「トロイメライ」の企画を運営する中で培ったものだね。
逆にマジな話をするときは、結構すごいことになる。半券さんが参加しているときのミーティングって、ちょっと独特だよね。

激々極々:確かに。雰囲気はかなり違うね。

天河: 良い意味で緊張感が増す。半券さんは激極のおっさんともすごい深い話をするし。
なんだっけ…印象的だったのは、世界経済をいくつかの構造体に分けて、そこから経済の推移を探っていくって話もしてたよね。
ふたりの話を聞いていて、この人たちはどこの星からやって来たんだろうって思った。

激々極々:まあ、設定とかそういうのは、突き詰めていくとそういう異次元言語みたいな所に行きつきかねないからなあ(笑)。

天河:「 トロイメライ」を企画してよかったと思ったのは、激極のおっさんと半券さんを引き合わせることができたってことかな。
勿論、他のスタッフにも同じことが言えるんだけど。

激々極々:まず出会わなかったであろう人たちがトロイメライによって集うんだもんね。

天河: 俺と半券さんとは高校の同級生なんだけど、この人には勝てねぇって思ったもん。
いろいろな意味でモンスターだよね、半券さんは。

v
激々極々:公私にわたってモンスターですよ、半券さんは(笑)。

天河: 高校のときからぶっ飛んでたからねぇ、彼。本当にたくさんの専門的な知識を持ってるし、頭の回転も速い。
クレバーかつファンキーかつフレンドリー。なんであんたがこんな面白みのないガッコにいるんだって思ったもん(笑)!
かなり高度な武術談義も出来るし、ホント、モンスターだよ。
半券さん、生徒会の役員もやってたんだけど、そこでもヘンないたずらばっかやってたなぁ。
そういう意味でもフィーリングが合ったんだよ、彼とは。
普通、同級生を敬称付で呼ぶってことは滅多にないと思うんだけど、半券さんだけは、どうしてか「さん」付けになっちゃうよね。

激々極々:「さん」付けしてしまう何かが半券さんにはある(笑)!

天河: 方向性はだいぶ違うんだけど、人とは違うオーラを放ってるって点では激極のおっさんに通じるものがあった。
ふたりを引き合わせたら面白そうだぞって高校のときからずっと考えていて。
「フェイク・オア・フェイド」に引き続き半券さんには「トロイメライ」に参加してもらうことが決まっていたから、
チャンスだと思ってふたりの出会いをセッティングしたんだけど………いやー、予想以上にすごい化学反応が生まれたなー、と。
おっさんにも絶対に良い刺激になったはず!

激々極々:スパークしましたね。 設定の巧みさとか、ネタのダークさとかいろいろ。

天河: 半券さんは「トロイメライ」とは別のプロジェクトでSF作品に参加しているんだけど、
あっちもあっちですごいよね〜。

激々極々:あれはすごい。設定資料だけで3巻セットにできるくらいだなあ。

天河: 俺の中で激極のおっさんと半券さんは、近藤勇にとっての土方歳三、山南敬助みたいに捉えているところがあって。
「トロイメライ」の右脳と左脳って感じだもん。

激々極々:出ましたねえ、右脳と左脳(笑)。

天河: 俺にとって世界の頭脳が揃ったような感慨があるもの。それだけふたりの話には学ぶことが多い。
半券さんも仕事や道場やらで忙しい人だからトリオってほど集まれるわけではないんだけど、
これからもなるべく機会を作っていきたいね。

激々極々:半券さんはいろいろ忙しい人だもんね。

天河: 激極と半券さんが揃っているときの安心感は、ちょっと言葉では表せないものがあるよ。

激々極々:安心感とか言ってもらえると嬉しい反面何となく面はゆいですねえ。

天河: 俺としてはもっとふたりが仲良くなったらいいなって。
例えば、三人で集まるときにひとりだけ遅れていって、ふたりきりになれるシチュエーションを意図的に作ったりしてね。

激々極々:おのれ、あれは仕組まれた出来事だったのか(笑)!

天河: 天河の罠ってやつだよ、激極くん(笑)。
「トロイメライ」やっている最中はさすがに不可能だけど、いつか三人で共作したいって気持ちは強いね。
SFなのか、それともまったく別の何かなのか…。案外、ミステリーとかクライムストーリーってのも面白そうだね。

激々極々:たしかに、クライムストーリーは面白そうだなあ。

天河: 半券さんと激極の頭脳を結集したトリックとか、想像しただけで武者震いするぜ。

激々極々:ただ、私のトリックはかなり抜けがあるだろうからなあ。

天河: 普通、複数名のライターが参加すると作品そのものが空中分解するか、
あるいはお互いの主張が噛み合わなくて散漫な印象の凡作しかできないような恐れがあるものなんだけど、
俺はこのトリオなら絶対にそうならないって確信があるね。 お互いを尊重しつつ、面白い部分を引き出せる関係って言うか…。
馴れ合いとはちょっと違うけど、気心が知れた仲だからこそやれるものって、あるよね。
やっぱり次回作は半券・激極・天河三人によるミステリーってことで決まりだな。
半券さん不在のまま、勝手に決めちゃったけど。

激々極々:良いのかそれで(笑) 。

天河: きっと半券さんも乗ってくるさ!


4 「シフトアナーキズム」のこれから

天河: トロイメライでの作業や、その前に書き終えた「戦国桃太郎」を読んで気づいたけど、
キャラ主導でストーリー作りするよね、おっさん。
■戦国桃太郎とは?
「16世紀初頭の日本(実際の歴史とは随分違うけど)に降って沸いたひとりの人非人の物語。
カネ稼ぎに命を懸ける、常に精神が低空飛行な山岡桃太郎が、
これでもかこれでもかとクズの所業を繰り返し続けます。あんな物が飛んだり、こんなものが爆発したり、
そんなものが鋳潰されたりと言う、正義と言う価値観に作者が一石を投じた、アレなお話(激々極々)」
激々極々:そうだねえ。このキャラクターがこういう動きを見せるってかんじで話が進んでいるかな。
だから、当初の予定とは違ったストーリー展開になる事もある。

天河: 俺の場合、キャラとストーリーを別個に作って、この事件にこのキャラはどんな風に反応するんだろうって
シミュレートしながらストーリーを組み立てていくんだよね。テーマ主導って言うか。
実は作風自体も正反対だよね、俺ら。

激々極々:そんなかんじだね。ある出来事にこのキャラを放り込んだら、どういう動きを見せるかって感じになるよね。
「トロイメライ」も、時代の流れとその中の事件の中でキャラクターがこういう風に反応するって感じで進んでいくよね。

天河: それは俺が歴史ファンだからってこともあるんだろうけど、
登場人物の都合の良いように事件は起こらないだろうって考えがまず頭にあって。
因果に基づくものにせよ不測の事態であるにせよ、事件は登場人物の思惑とは別のところで発生する感じにしているね。
描くテーマを中核に据えて、そこで起きる事件が登場人物たちにどんな影響を及ぼして、エピソードを展開していくのかって言う。
ずっと群像劇を描いてきたってのもあるかな。視点を一つに定めて展開を停滞させたり、硬直化させないようにしようって。

激々極々:あえて言うなら群像劇は苦手だからなあ、わたし。

天河: 激極のおっさんは理論家だし、俺の作風とも似通うかなーって思ったんだけど、改めて分析してみたら全然違ったと言う。
でも、俺にはすごい新鮮だった。

激々極々:その辺、基本的に主人公目線で物語を進めていくわたしとは違った作風ですよね。
異なる作風を重ねていくっていう面白さも「トロイメライ」にはありますよね。

天河:「 トロイメライ」はストーリー自体も長いスパンで展開していくから、
作風の違うライターが書いていくっていうのは良いスパイスになるよね。
細かな部分に出ているライターごとの作風の違いが、最終的に飽きさせない工夫にも通じていると思うんだ。

激々極々:書いている方は大変な面もあるんですけどね、合作って。
絵の方もそうだけど、各人ごとにこだわりの点とかキャラクタの捕え方とか違うから、
すり合わせるのに多少なりとも時間を使うっていうのは一人でやっていたら無い事だからね。

天河: それはあるね。特にキャラクターの場合はね。毎週、ミーティングのときにはお互いに原稿を持ち寄るんだけど、
「あれ? このキャラってこんなしゃべり方だっけ?」ってことがあるよね。
最近は慣れてきたからか、そういうすれ違いは減ってきたけど、最初の頃は結構あったなぁ。

激々極々:一因としては、登場キャラのものすごい多さがあるのかもしれませんが(笑)。
あれだけ登場人物がいると、一人一人把握するだけでも結構大変。
特にわたしは記憶力がよろしくは無い方だからなあ。

天河: そういうことを確認する上でもミーティングは貴重な場だよね。
今回は基本的にコンビで書いているから、意思の疎通もし易いし。
ま、激極のおっさんの才能に全幅の信頼を置いていればこそ出来るんですよ。ムチャ振りも!

激々極々:無茶振りはなあ… たまに頭抱えながらペン走らせる時あるもんね。
その様子を見ているだろうけど(笑)。

天河: それに関しては申し訳ないとしか言いようがない…! でも楽しいからいいでしょ!

激々極々:そりゃ、楽しいか楽しくないかで言ったら、えらく楽しいですよ!
ただ、無茶振りはあまりしないでね、と(笑)。

天河: 気をつけます(笑)。さっき群像劇の話になったけどさ、おっさんはあれだよね、ヒーローを設定するのがうまいよね。
「戦国桃太郎」の桃太郎は完全なるアンチヒーローだったけど、作品全体をコアになる人物で強力に牽引するのが本当に巧い。
桃太郎を読んでいるときも感じたけど、これは俺には絶対にできないもの。

激々極々:桃太郎はアンチヒーローというよりは単なる腐れ外道だと思いますけど(笑)。

天河: 腐れ外道ってのはポジションじゃなくて作中での悪評だろうが(笑)。

激々極々:王道じゃないですかやっぱり、ヒーローが活躍するっていうのは。そういうの好きですもん。

天河: コアの人物で物語を引っ張るって言うのは、やっぱりキャラ主導の作風ならではだと思うわけですよ。

激々極々:そうですねえ。中心人物を定めて、それが物語をけん引していくってスタイルだと何となく筆が進みます。

天河: 「トロイメライ」は、一応、最終回までプロットが出来上がっているんだけど、
おっさんの話を聞いたり、作風に触れる中で感じたことをフィードバックしたいとは考えているんだ。
基本的に天河式群像劇ではあるんだけど、その中でもコアになる人物を設定して、ストーリーテラーって言うか、
時代を牽引するコンダクターみたいにする方法もアリだなって。

激々極々:こっちも影響を受けたことを反映したりしてますね。

天河: 群像劇得意ですって言いながら、そこにしがみついていたら結局狭い人間になっちゃうって言うか。
新しいことに挑戦するきっかけは、これからもお互いに分かち合っていきたいね。

激々極々:そうっすねえ。積極的に新しい事にチャレンジしていくのはいい刺激にはなります。

天河: かくして、「シフトアナーキズム」はこれからもお互いを刺激し合っていくことを誓うのであった!

激々極々:完結ッ!!

天河: 完結しちゃうのか(笑)! 今日は、でも、本当に長い時間話をしたよね。
面と向かってこんなに話したのって、ミーティングとかバカ話以外では初めてじゃないかな。

激々極々:非常に長かったけど、それでもまだ話せることは尽きないんだから、ふたりの仲が良いと言うか、何と言うか。

天河: 尽きないよね、ネタ。まだあと10時間くらい話せそうな気がする。
きっと、ウィリアム・リンクとリチャード・レビンソンもこんな感じだったんじゃないかな。

激々極々:10時間も話していたら大変だけどな(笑)。まあ、ここで一気にネタを吐き出しても勿体無いし、
また機会を見つけてやっていこう。

天河: 今度は半券さんを交えてトークをしたいんだけどなぁ。

激々極々:それは、まあ、みんなの都合が合ったらですな。

天河: これは素直に本音を訊きたいんだけど、「トロイメライ」に誘われて、コンビを結成して、今までやって来て、
どうでしたかね、相方は?

激々極々:色々と勉強になりますね。創作と言うものに対する考え方が日に日に深まっていくような気がしますよ。
この企画に誘われなかったら、こう言う楽しい思いをすることもなかったわけで。
そう言う意味では誘って貰ってありがたいと思います。

天河: 僕としては念願かなってのコンビ結成だったし、楽しいのは言うまでもないんだけど、未だに夢見心地。
やっぱり激極のスタイルとか考え方とか、すごく学ぶことが多い。何かに悩んだときにはまずお前に打ち明けるしね。
そう言うのを全部ひっくるめて、俺の中で一本の支柱になっているよ、激々極々と言う男は。

激々極々:こうまで言われると、非常に恥ずかしくて体温が上昇する思いです(笑)。

天河: ま、焼けぼっくいに火が点いたような仲ですから、俺ら(笑)。

激々極々:なんとも誤解を与えるであろう表現、どうもありがとうございます(笑)。
同じことの繰り返しになりますけど、本当、中学生の頃にはふたりでこんなことをする仲になろうとは
予想だにしていなかったな。

天河: 奇天烈っつーか、お下劣なことばっかりやってた俺ですから、
おっさんのほうは一刻も早く手を切りたかったんじゃないかな(笑)。

激々極々:お下劣は嫌いじゃないけど、それを昼食の時間に大声で叫ばれて、
しかもこっちを巻き込もうとするのは、さすがに勘弁して欲しかったですねぇ(笑)。

天河: まじ!? そんなことあったっけ!?

激々極々:それはもうヒドかった!

天河: コンビ結成はお下劣昼食事件から数年後だけど、よくそんなヤツと組もうと思ったな!?

激々極々:なぜだろう(笑)? まぁ、(同窓会で)話している間にあんたも真っ当に成長したんだとわかったし、
作品に対する真摯な思いが伝わってきたからね。…と言うことにしておこうと思います。

天河: 逆に俺はおっさんはエリートコースまっしぐらなんだろうって思ってた。なにしろ天下の北海道大学出身だし。
だから、なんて言うか………人生の落伍者みたいな風情になってたのは、ちょっとショックだった(笑)。

激々極々:仕方ないよね。入った会社が一週間で業務停止命令の行政処分を喰らっては、
真面目に働く気が失せるってもんです。だからってすぐに退社するのとは関係ないけど(笑)。
結論としては「働きたくない」です(爆)。

天河: クズが(笑)!

激々極々:でも、ニートになって地元に戻ってきたから、あんたと再会できて今があるわけですよ。
人生っちゅーもんは、何があるかわかりませんなぁ。

天河: 不思議だよね。やっぱりご縁があったと言うことでしょうか。

激々極々:うむ。仏教では因果と呼ぶ。ともかく、今こうして「トロイメライ」の製作に関わっていられるのはラッキーなことです。

天河: 「シフトアナーキズム」としては、これからも色々な活動をしていきたいと思っているんだよ。
次回作は半券さんを巻き込んでのクライムストーリーになるとして、
いずれ激極のおっさんをパーソナリティにネットラジオとかやってみたいんだよね。

激々極々:ラジオって………私はトークとかそう言うのはてんでダメよ。ものすごく人見知りするし!

天河: 初対面の相手の前ではとてつもなく緊張するよね。て言うか、別人になるよね(笑)。
そこがおかしみを誘うと思うんだ。

激々極々:面白いっつーか、引いてるじゃないですか!

天河: 引かない、引かない(笑)!

激々極々:そうですかね(笑)? いやまあ、次回作っつってもまずは「トロイメライ」完結に向けてダッシュしてからの話ですねぇ。
先の長いことだな。

天河: ある程度、「トロイメライ」の作業が落ち着いたら、プロモも兼ねてやってみるか。
「激々極々のオールナイトエンディニオン」とか、「激々極々の激々極々的こころ」とか。
いいな、「激々極々的こころ」。筋書きは俺がやってやるからさ!

激々極々:何をやるのか、字面じゃさっぱり伝わらねぇな(笑)。
よくわからないけど、機会があればやってみたいかもしれないな。

天河: 夢が膨らむな!

激々極々:まさにトロイメライ(=夢)!

天河: こうやって創作的な話がどんどん膨らんでいくのは、やっぱりコンビならではの醍醐味だよね。
ひとりでは単なる空想や妄想で終わってしまうことも、コンビで話をしていると具体的にアイディアを組み立てられるよ。

激々極々:ふたりいるから細かい部分も補完し合えるし、ぽっと出のアイディアでも上手く形にできる。
この辺は実にふたりで良かったと思えるときですよ。

天河: 俺たちは同じ墓に入るくらいの覚悟を決めたほうがいいかもな。

激々極々:共同墓地よりは無縁塚って感じになりそうな気が………。

天河: いきなり辛気臭くなったな、オイ!

激々極々:生きてるうちに何かひとつでも形にしようってことですよ! 死んだら負けですよ。

天河: とりあえず健康には気を遣っていこう。ただでさえあんたは身体を壊しやすいんだから。
………これ、アラサーならではの会話だなぁ(笑)。

激々極々:健康は、本当、お互いに気をつけていかなきゃなりませんねぇ。
既にコンビを組んで4年越えたわけで、当初よりも肉体の劣化を感じますなぁ(笑)。

天河: うん、4年前は徹夜で作業しても翌日全然平気だったけど、今は無理! 社会復帰まで時間がかかる(笑)。

激々極々:何か悲しくなってきたな(笑)。執筆頑張り過ぎたら次の日に毒って歳になってしまったわけだ!

天河: 切実にせつねぇ! このままだとネガティブな空気のまま終わっちゃうから、もっと明るく盛り上げよう!

激々極々:「トロイメライ」製作進行、イイ感じ!

天河: この調子でガンガン行こうぜ!

激々極々:「トロイメライ」超面白い!

天河: ちょっと調子に乗り過ぎだな。

激々極々:ですね(笑)。無理やり明るい雰囲気にしたところでまとめに入りましょうか。

天河: もうさ、まとめとか今日の締めくくりとか、そう言うのはやめようぜ! 
俺たちふたりのパワーをまとめたりなんて出来っこねぇぜ!

激々極々:じゃあ、どうやって終わりにするんだよ!
思いっきり投げっぱなしジャーマンな対談じゃねーか、これじゃ(笑)。

天河: 俺たち「シフトアナーキズム」に終わりとか行き止まりとか、そーゆーもんは無縁だぜ!
終わりじゃない、ここは通過点なんだ!

激々極々:俺たちはまだ登り始めたばかりだからな!
果てしなく続く「シフトアナーキズム坂」を!

天河: それ打ち切りだから。………何? 打ち切りにしたいのか、お前は。

激々極々:「未完」だよ、「未完」!

天河: このように「21世紀のウィリアム・リンクとリチャード・レビンソン」は、
仲良いんだか悪いんだかよくわからん調子でやって行きたいと思います。
健康に気をつけながらね!

激々極々:次回の対談までふたりは健康でいることをここに誓います!

天河: 現実問題にフィットしているとは言え、なんかイヤな御披楽喜だなぁ(笑)。




ボーナストラック おまけの思春期トーク

天河: しかし、俺らの中学のときのクラスってアホばっかだったよな。アホの筆頭はどう考えても俺なんだけどさ。

激々極々:擬音マスターのT君とか、GT−Rのエンジン音で目覚めるK君とかいたなぁ。

天河: Tはとにかくスゴかったよな。人のミスを目敏く見つけてなぁ………。
あだ名を付ける名人だったよな。付けられる俺たちは大迷惑だったけど。

激々極々:ヤツのせいで一瞬たりとも気が抜けない学校生活だったな。
何せ切手と切符を言い間違えただけで三年間ネタにされ続けた被害者もいたもんなぁ(笑)。

天河: むかつくのが、T本人は滅多にミスしねぇんだよ! アレはもう天賦の才能だね。
Tにはおっさんもさんざんやられたねぇ。

激々極々:やられたなぁ。そのお返しってわけじゃないけど、当時クラスで流行った、
ちょっと危ない遊びではあいつを卒倒させたっけな。
人間、落ちると本当に力が抜けるのね。椅子から滑り落ちてビクビクってなってたし。

天河: それ、話していいネタなの? 一応、本人同意のゲーム(?)だけどさ。
それにしたってあっぶねーネタ振りだなぁ。

激々極々:ま、大丈夫でしょう。他のクラスよりはまだ対象が特定的な遊びだったし、
自主規制を必要とするモンを自作するような連中には負けてたって。
何が勝ち負けかわかりませんが。

天河: 他のクラスも大概だったな。お前は他のクラスのヤツにいたずらで鞄を切られたり、
指を貫通させられたりとさんざんな目に遭わされたもんな。
………おいおい、うちの中学、無法地帯じゃねーか!

激々極々:悪意と言うものが一切無かったから、一層タチが悪いっつーか、酷いっつーか(笑)。
指貫通はさすがに内心焦ったな。一発のダメージで二箇所から出血とかありえねぇ(爆)。

天河: 他の中学でもこんな感じなのかなぁ?

激々極々:どうだろうね。そんな話は聞いたことがないな。うちの中学が特殊だったとは思えないけど、
あまりに非日常が多過ぎて、それが日常化していたもんなぁ。

天河: 誰ひとりとしてキャラ立ちしていないヤツがいなかったもんな。うちのクラスなんか特に。
小学生の頃にクラスメートをキャラクター化してシナリオを書いてたってさっきも話したろ?
中学でも同じような遊びをやったけどさ、小学生の頃より遥かに作りやすかったね。
だって実際の人物像をそのまま書けばいいだけなんだもん(笑)。

激々極々:その分、収拾はつかなかったな、現実でも創作でも。
よくあのクラスが空中分解しなかったもんだと今になってつくづく思う。

天河: いじめっこだったり、人をからかったりするヤツもいたけど、
そいつらもそいつらで他の連中からいじられまくってたいたから、一方的なイビリみたいのは全くなかったな。
みんながみんな、捨て身で攻めてる感じ。それも円満の秘訣だったのかもな。

激々極々:ひとつの間違いとか失敗を笑いの種にする集団だったもんな。
誰しもがスネに傷持つ人間だったから、互いに弱点をさらしながら仲間をいじってたもんねぇ。

天河: 俺、群像劇が得意だとか、コメディがメインフィールドだってよく言ってるけど、
原点を辿っていくとね、間違いなく中学時代のバカ騒ぎに行き着くよ。
思春期ならではのバカバカしさとか、そーゆー限定的なもんじゃなくて、なんかある種の心の故郷みたいな感じ。

激々極々:ある意味、青春していたもんね。

天河: ある意味ね(笑)。高校や専門学校の仲間とは今でもたまに会うけど、
中学の集まりだけは何故か特別に感じるんだよ。あれは何なんだろうね。

激々極々:共に多感な時期を過ごしてきたから、ある種の連帯感みたいなものがあるんじゃないかな。
未だに中学のときの友人と当時の話をすると、みんなが鮮明に覚えているからね。
それだけ当時の出来事がインパクト大だったんでしょう。意識していたにしろ、していなかったにしろ。

天河: これを読んで下さっている方の中に中学生くらいの子がいるかはわからないんだけど、
もしもそうなら、僕は声を大にして言いたいね。貴重な三年間を存分に満喫してねって。
一生の宝物になるから。それから人の指を貫通するのは絶対にやめよう!

激々極々:「バギ! バギクロス!」とか言いながらカッター振り回して他人の鞄を切り裂くのもやめよう!
そして、給食は静かに落ち着いて食べよう。

天河: 内輪ネタで締めるのか(笑)。

激々極々:おまけだから、こう言う終わり方がふさわしいと思うね!

天河: うわ、適当ッ!!

(2011年5月28日〜29日 収録)




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