「こッ、国事犯どもがッ!! 奸賊輩どもがァッ!! このままで済まされると思うなよッ!!
世界から結集した【官軍】数万を持ってして必ずや蹂躙してくれるぞォッ!!!!」
怒涛の快進撃に飲まれて総崩れとなった【官軍】は、最後の望みを託して合戦場へ後詰の兵を送り出したものの、
【草薙カッツバルゲルズ】連合軍の勢いを食い止めるには程遠く、激戦数刻も経たない内に押し戻され、
ナイトハルトの捨て台詞を残し、退却の無様を晒さざるを得なくなっていた。
【ローラント】を舞台に繰り広げられた【最後の合戦】は【草薙カッツバルゲルズ】の勝利をもって
ここに終結を迎えた。
「はい、はい………イッ!? な、なんだって!? それじゃ私たちは置いてけぼりって事!?
ま、待て、アンジェラッ!! 後始末よろしくって…、お、おいィィッ!?」
当夜一の奮闘(またの名を残虐ファイト)を見せたジェシカを中心に
「1・2・3………ダァァァァァァーッ!!」なる独特の勝ち鬨を上げる連合軍の傍らでは、
誰かと通話中だったヴィクターが【モバイル】を片手に通話の向こう側の人物への応答を
繰り返し呼びかけていた。
がっくりと項垂れるところから察するに、一方的に通話を切られたようだ。
「どうかしたのか、クォードケイン? 浮かない顔をしているが………」
「どうしたもこうしたも、先に行った皆さん、
私たちを置いて【聖域(アジール)】へ突入しちゃったって………。
ホントに自分勝手って言うか、そんなんで後始末頼むって言われてもなぁ………」
「なッ、何だとッ!? ケ、ケヴィンも一緒なのかッ!?」
「はいはい、落ち着け、ウェッソン。そんな鬼気迫る顔じゃクォードケインも驚いちまう。
………それじゃデュランは総大将に勝ったって事だよな」
「さぁ、そこまでは………。ただ、ランディさん達も一緒と言うのは確かです」
「と言う事はポポイのクソチビも同道するとッ!?
ぬぅぅぅぅぅぅ…ッ、抜け駆けしおってからにィッ!!!!
こうしてはおれんッ!! 俺もケヴィンの後を追うぞッ!!」
「だから落ち着けってッ!! 【聖域(アジール)】の事はあいつらに任せて、
俺たちは後始末をしなくちゃならないだろうッ!!」
ケヴィンはお前に後始末を任せたんだ、との説得を聞き入れはしたが、
ケヴィンの行く末が“色々な意味”で心配で仕方が無いのだろう。
乱戦の最中に切り倒された篝火による延焼の消火や負傷者の警護を
部下たちへ命じながらも、ルガーはまだブチブチと不満を垂れていた。
ここまで来ると苦笑いを通り越してドン引きの域にあるルガーの溺愛っぷりに
引き攣った顔を見合わせるブルーザーとヴィクターは、
こうして軽口を叩き合える勝利へ生き長らえられた事に、知らず知らず、何度も何度も安堵の溜息を吐いていた。
【結束】と【信念】に絶対の自信があったとは言え、圧倒的な武力と兵数を有する【官軍】相手に
よく生き残れたものだと四肢の無事を驚くしかない。
それほどの死闘だったのだ、【ローラント】の合戦は。
重軽傷こそ多いものの、双方の陣営に死者がいない、という事も奇跡に近かった。
「願ってもない筋運びとなりましたね………」
「ああ、奇跡と感謝するしかないよ。
………ウェッソンは不満かも知れないが、【聖域(アジール)】での戦いは、
もとよりあいつらに任せるつもりだったしな」
「私たちが前に出て行く戦いではありませんからね。
………【草薙カッツバルゲルズ】。なんだかんだ言って、
彼らの【結束】に土足で入り込むような事は出来ませんよ」
「………わかっちゃいるが、少しだけ寂しさを感じるな」
「―――シケた事を言うんじゃねぇよ。
みんなみんな、一緒に戦った【仲間】だろ? そこに蟠りを感じる事ぁ無ぇさッ!!」
総崩れになった【官軍】の退却経路から東に離れる事およそ3キロほどのなだらかな坂を
陽気な笑い声と共にフレイムカーンが登ってくるのが見えた。
イーグルはもちろんの事、中腹で仁王立ちしていた英雄王も共連れを従えて彼に随行している。
「………【官軍】1,000の精鋭が………」
完全勝利に沸くジェシカたちへ一目散に参加するフレイムカーンの陽気と裏腹に、
英雄王は呆けに取られた面持ちで、戦場の結末が信じられないといった様子だ。
「何を驚かれているか大体察しがつきますが、兵器と数に頼る程度の軍勢ならば、
【三界同盟】の方がまだ歯ごたえがあったと言うものです。
なぁ、ジャマダハル?」
「あ、ああ、………そうか、な」
部下へ指示を出して戻ってきたルガーが、なぜか居た堪れなそうにしているブルーザーと呆然の英雄王へ
力瘤を作りながら戦の趨勢を語って見せた。
直属の上司であり、母国の統治者でもある英雄王の命令に背いて逆賊に下ったのだから、
その言葉尻に乗って「俺たち、最強ーッ!!」と自慢するわけにもいかない。
ちょっとでも逆鱗に触れれば、この場で英雄王に首を刎ねられる事も考えられる。
(この野郎、ウェッソン…ッ!! 余計な事言うんじゃねーよッ!!)
ブルーザーはケヴィン以外に何の気兼ねもないルガーが恨めしかった。
「ブルーザー………」
「………はい」
それ見た事か。英雄王から厳しく名前を呼ばれたブルーザーは、
飛び上がって逃げ出したくなる気持ちを懸命に堪えて、なんとか返事を搾り出した。
とは言えこれから通達されるだろう処罰を考えれば直視する事もできず、
直立不動の体勢のまま、視線だけはあらぬ方向を見つめている。
「デュランたちは、もう【聖域(アジール)】へ向かったのか?」
「―――えッ? あ、は、はい、今しがた連絡があり、
【聖域(アジール)】への入り口を発見、即時突入したと」
「【ジェマの騎士】殿も一緒か?」
「総勢にして16名が最終決戦へ赴きました。
【ジェマの騎士】は、デュランとは別行動を取っている模様ですが」
「【アクシス=ムンディ】と呼ばれる石柱に入り口を発見したようですね。
ランディさんたちとは石柱のある神殿にて交戦したと連絡がありました」
「………そうか、やはり【アクシス=ムンディ】に………」
「―――陛下? どうかされましたか?」
「………………………」
「陛下?」
ブルーザーの説明を補足するヴィクターの口から【アクシス=ムンディ】なる単語が飛び出した途端、
英雄王の顔つきが憂色に染まった。
「陛下………………おい、そこのオッサンッ!!」
「―――――――――むッ、あぁ、………すまん。
【アクシス=ムンディ】にはいささか思うところがあってな」
「思う………ところですか?」
「………知らぬが幸福か、それとも不幸か。
その場所はな………、【アクシス=ムンディ】とは、
【ローラント】族長のジョスター氏とロキが最後に衝突した場所なんだよ」
「え………………………っ」
「それではデュランさんとリースさんにとって………」
「………古い因縁の場、と言う事になるな」
「………………………」
10年前の征伐の折に戦いの終焉地となった【アクシス=ムンディ】が、
10年の時を経て、最後の希望を繋ぐ血路となった皮肉は、
デュランとリースの二人にも浅からぬ因縁があるようだ。
互いの父親が、相容れぬ己の信念をかけて激突し、炎の地獄へ消えていった【アクシス=ムンディ】。
掲げた想いの色合いは父親たちとはまるで異なっているが、あの日に分かれて戦った【信念】が、
今、子供たちの世代で一つに束ねられた事を皮肉と感じるべきか。
それとも、父親たちが血を流しても相容れなかった【信念】が一つに合わさったという希望に夢を託すべきか。
「………いや、何を世迷いを考えているのだろうな、私は。
知らぬ方が良いに決まっている。まして若者たちには知る必要も無い過去の産物など」
その判断は誰にもつかないが、それでいいのだ。
【過去】の因縁など、ただひたすらに、純粋に【未来】へ向かう想いの前には無用の化石。
明日の太陽へ穿たれる閃光の前に、過ぎた日の幻は何ら意味を為さないのだから。
―――――――――と、その時だった。
「………んン? なんだこの音色?」
「着メロですよね、これ、【モバイル】の。
………どこだろう? すぐ近くから聴こえますよね」
「俺じゃないぞ。戦場にあのような玩具を持ち込む戦士がいるものか。
この悪趣味な着信音からして、ジャマダハルじゃないのか?」
「なぜに俺が【モールベアの草原冬景色】なんてジジくさい着メロを設定しなくちゃならないんだ。
ド演歌といえば、キャラ的にはお前の方が似合ってるだろ」
「バカを申せ。俺のはケヴィンの『ルガー、大好きッ』という永久保存版着ボイスだ」
「………………………」
「………クォードケイン、なんだその『いい精神カウンセラーを紹介しますよ』的な視線は」
「もういい。お前はもうその道を勝手に極めろ。
………って、おい、いい加減に誰なんだよ! 挙手しろ、挙手!
いや、自己申告しなくていいから、さっさと聞き苦しいド演歌を止め―――」
終結してもなお硝煙燻る戦場に突然鳴り響いたド演歌の着信音に業を煮やしたブルーザーだったが、
甲冑を着込んでいるため、何かをポケットから取り出すにも一苦労な英雄王の姿を捉えた瞬間、
心臓が潰れてしまいそうな戦慄に凍りついた。
英雄王が指先に引っ掛けているモノは、【モールベアの草原冬景色】を鳴り響かせる【モバイル】のストラップだった。
「はい、もしもし………」
顔つきは極めて普通だが、着信を取った声は不機嫌そのものな英雄王が滲ませる
静かな激怒に堪えかねたブルーザーは、とうとう我慢の限界へ達して卒倒した。
「―――――――――ふごッ!?」
お気に入りの【モールベアの草原冬景色】をおもっくそバカにしてくれたブルーザーへ苛立っていた為に
ロクに着信相手を確認せずに取ったのだろう。
受話器の向こう側の相手が思いも寄らない人物だった英雄王は、威厳と憤怒はどこへやら、
鼻水を噴き出してしまいそうな間の抜けた声で驚き慌て、ひっくり返ったブルーザーを支えるルガーたちから、
咄嗟に顔を背けた。
『もしもし? もしもし?
ちょっと、どうしたと言うの? 耳に痛いノイズが入ったのだけど、今』
「バ、バカか、お前は。今がどんな状況か解ってないのかッ?
な、なんでプライベート回線へ電話なんか掛けてくるんだッ!!」
『ホットラインなんて使ったら大事になるでしょう?』
「俺が言ってるのは、そういう事じゃないっつのッ!!
武力衝突は終わったとは言え、ここは戦場だぞッ!? 電話なんかかけてくるなよッ!!」
『………フン、これしきの不測でテンパるなど情けないぞ、リチャード』
「おま…、その声はガウザーッ!! お前も一緒かッ!?」
『そうよ。今、ガウザーと一緒にいるんだもん』
「な、なんだその思わせぶりな言い方は。どッ、どういう意味なんだッ!?」
『【アルテナ】女王と、その協力者の【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】局長が
【ケーリュイケオン】で会談するのは思わせぶりでも何でもないと思うけど?』
「え? あ?ッ………」
『すっかり頭の中がいかがわしい事で一杯なエロオヤジに成り下がったな。
そんな事だから娘にまで尻に敷かれるのだ、阿呆が』
「………………………」
『―――ほら、ガウザー、返して、早く、【モバイル】。
………あはっ♪ 妬いてる、妬いてる♪ 相変わらず可愛いわね、私のリッチーは♪』
通話の相手は【ケーリュイケオン】で待機しているヴァルダと獣人王…ガウザーの二人だった。
二人の(というか主にヴァルダの)ペースに飲まれた英雄王…リチャードは、
たじたじになりながらも周囲へ気取られないよう慎重に声のボリュームを落とし、
一国を背負う首脳同士にあるまじき幼稚な趣の会話を続けた。
確かに首脳陣がこのようなアホらしい会話をしていると漏洩すれば、
権威その他もろもろが暴落間違いナシだ。慎重にもなる。
「………ホント、お前、何の用があってかけてきたんだよ。
あれか、周囲にバレたら国際問題なトンデモ通話を俺一人に押し付ける羞恥プレイか、これは。
俺をいじめてるのか? いじめて愉しんでんだろ? そうなんだなッ!!
このドSめッ!! もう絶対に四つん這いになってやらねぇぞッ!!」
『………お前たちの夫婦生活にどうこう指図するつもりは無いが、
その、なんだ、ある一定の状況限定の性癖は、みだりに宣伝するものではないと思うが………』
「なッ、なんで急にガウザーと代わってんだよ!!」
『リチャードが身悶えると思って♪』
「………………………」
「なァに楽しげなコトやってんだよ、オイ!」
性根を知り尽くした仲ならではのヴァルダの手のひらで遊ばれて肩を落とすリチャードの手から、
音も無く忍び寄ってきたフレイムカーンが【モバイル】を取り上げた。
「おう、ヴァルダ。随分と久方ぶりじゃね〜か」
『ちょっと、その声、フレイム?
何よ、魔族とやり合ったって聴いたから心配してたけど元気じゃない』
「はははッ、ちぃと操られたくらいでくたばるもんかよ。
あ、それよか、お前、早く次のターゲットの情報送って来いよ。
次はあれか、最近調子ブッこいちゃってる【ローザリア】辺りか?」
『なに、久しぶりに声聴いたってのにもう仕事の話?
………そうねぇ、【ローザリア】はもう少し泳がせておくとして、
【カンバーランド】でも狙ってもらおうかな。
あそこの連中、税率の引き上げでたんまり私腹を肥やしてるって情報もチラホラだし、
………良民から搾取した分はきちんと還元しないとね』
「おう、了解したぜ!! 詳しいタネは今度送ってくれや。
トーマだっけ? 俺、あそこのへっぴり王、大ッ嫌いでさぁ。
お宝くすねるついでにチョロっと王権失墜確定な怪文書でも流してみっか?」
『【カンバーランド】のトーマ王には優秀な兄姉がいらっしゃるから、
禅譲にも問題は無さそうだし、いいわよ、気前よくやっちゃって!』
「おっしゃッ、いいトシこいて」
「そ、そういう話はもっと安全な場所でやれッ!!!!
誰かに聴かれたらどうすんだッ!!!!」
ここに来て執拗に【アルテナ】ばかりを狙ってきた【ナバール魁盗団】と
ヴァルダの秘された関係性が白日の下に晒される………などという事態になっては困るリチャードは、
国家機密をペラペラと開けっ広げに喋るフレイムカーンの隣で、
戦勝に浮き足立つ周りの人間がこの会話に気付かないか、一人アタフタと青くなっていた。
「ガウザーもいるんだろ? ちょいと代わってくれ」
『―――だってさ。はい、ガウザー』
『………フン、貴様も相変わらずのようだな、フレイム』
「よぅ、おひさ!」
『して、ワシに何か用か?』
「俺さぁ、一度でいいからお前に言ってみたかった事があるんだよ」
『なんだ藪から棒に………?』
「いや、でもなぁ、言っちゃっていいかな、」
『勿体つけるな、煩わしい。ワシとお前の仲だと言うに。
今更何を言われても腹を立てる事もあるまい』
「―――ポチ、お手」
『なッ!? きッ、きき、貴様ァッ―――――――――』
怒号が聴こえようが、【モバイル】が震え上がろうが気にせず知らん顔で
リチャードへ丸投げしたフレイムカーンは、それは清々しい、もう悔いは無い、
夢をやり遂げたと言わんばかりの爽快な表情で大笑い。
当然【モバイル】の向こう側にもこの大笑いは漏れているわけで、
ガウザーの金切り声にも拍車がかかる。
「けっけっけッ、【モバイル】が間に入っての会話なんだから、
さすがのあいつだって手も足も出せねぇだろうぜ」
「………お前、後でホント、殺されるぞ」
奪った相手がフレイムカーンだから良かったものの、もしもこれが別な人間であったら
洒落では済まない状況に暗転していたハズだ、と安堵の溜息を噛み締めながら、
リチャードは【モバイル】の向こう側で逆上するガウザーを宥めに入った。
「ガウザーの様子はどうだ?」
『えーっと、人種差別・人権侵害で告訴するってすごい剣幕よ。
裁判所へ提出するための訴状を書いてるわ』
「物理的な滅殺でなくて、社会的制裁で来たか………」
なんとか逆上だけは抑えられたようだが、この調子では後が怖い。
まさかガウザーも本気で裁判に持ち込むつもりは無いと思うが、
悪乗りの過ぎたフレイムカーンが想像を絶する方法でブチのめされるのはほぼ確定。
その事後処理を考えると、リチャードは今から頭が痛かった。
『今、あなた、頭を抱えてるでしょ』
「………頭を抱えるのは昔から俺の役割だからな」
『いつもフレイムカーンやガウザーには悩まされていたわよね』
「ていうか、お前も含めて全員に、だ」
『そうね、“全員”に、ね』
「ああ、今も昔も、“全員”にな………」
“全員”に込められた意味を、彼の胸へ去来する想いを察したヴァルダは、
鬱屈が尽きるまで静かにリチャードの嘆息を受け止めた。
それは、訴状を作成しているガウザーも、腹を抱えて笑い転げるフレイムカーンも、
そして、自分自身も含めて、あの日、【夢】を語らった旧友たちが、
口に出さないものの共有する想いだったからだ。
『―――あの子たちは、もう行ったのね』
「あぁ、………すまんな、今回は出過ぎたマネをした」
『いらない世話を焼くのもあなたの役割だったわよね、そう言えば』
「………本当に余計な世話だったようだ。
【マナ】だろうが【官軍】だろうが、あの子らの勢いは止められないよ」
『フン…、今更気付きおったか。
若き奔流が凝り固まった壁で堰き止められるわけがあるまい。
誰にも止められない若さこそが【未来】を解き放つ鍵なのだ』
「ガウザー………」
『そのような事は、ワシら自身が一番理解しているだろう?
若き日に青春の灯火を燃やしたワシら自身が』
「へっ、相変わらずガウザーはジジくせぇ事を言うぜ。
そういう物言いが既に凝り固まっちゃってるよ」
『………お前はもう少し脳を固くしろ、フレイム』
「要は自分の子供を信じろってこった。自分たちの歩いてきた軌跡ってヤツをよ。
自分に、子供に胸を張ってやれたら、その時に初めて可能性は拓けるってな―――」
ちゃらんぽらんのように見えて、きちんと真実を見据えているフレイムカーンの言葉に、
リチャードも、ガウザーも、ヴァルダも、揃って頷く。
皆が皆、若き日を過ぎた【大人】の、若き子らに想いを託した【親】の面持ちだった。
「―――信じようぜ。
俺たちの子供なら、“あいつ”に【未来】の在り方を伝えられるってさ」
『信じる? フン、信じるも何も、そんな事は確定事項だ。
改めて確認するまでも無かろう』
『なんてったって、若い力が【未来】を作っていくのだもんね』
「………そうだな。自慢の我が子に胸を張ってやらなくちゃな」
かくして、【未来】の開拓は、【アクシス=ムンディ】の先へ身を踊らせた
若者たちの双肩へと託される―――――――――
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