―――同時刻、分かれたデュランたちも獣人たちの襲撃を受けていた。
梟か何かと勘違いしていたざわめきは、気配を消した獣人の蠢動であり、
危機を脱する千載一遇のチャンスを、デュランはみすみす逃していた事になる。


「畜生ッ!! あの時気が付いていればッ!!」


ずば抜けた身体能力から放たれる体術の前に防戦を強いられるデュランは、
ツヴァイハンダーを振るいながら、つい数分前の自分の甘さを恨みに恨んだ。


「過ぎた後悔に泣き入れてたってしょーが無いでしょうがっ!
 今はこのピンチを切り抜ける事に専念しようぜっ!?」
「このうぞうむぞうども! よくみたら【びーすと・きんぐだむ】のれんちゅうじゃないでちか!
 ケヴィンしゃんのなかまが、どうしてしゃるたちをおそうんでちかっ!?」


討手が総じて浅葱色に白いだんだら模様の入った腰巻を身に着けている事から
敵の正体を【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】に見抜いたシャルロットの
受けた衝撃はそれだけに大きい。


「そーいやお前ら、【ジャド】でこいつらと一悶着起こしてるんだったよな!
 その件で任意同行を求められてるんじゃないのっ!?」
「攻撃されてる段階で任意同行もクソもあるもんかよッ!」
「―――その通りだッ!!」


人一倍すさまじい闘気を発しながらデュランへ襲い掛かる獣人が、
罪人に詰問するかのような強い口調で糾弾を浴びせかけてきた。


「【義】にもとる貴様らには詮議など無用ッ!!
 今ここにて処断されるべき立場と思えッ!! デュラン・パラッシュッ!!」
「てめえ…、あん時、ケヴィンと一緒にいた………ッ!」
「応ッ!! 【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】八番組伍長、
 ルガー・S・A・ウェッソンとは俺の事だッ!!」


ルガーの繰り出した鋭い浴びせ蹴りをツヴァイハンダーの腹で押し返す。
その隙を狙って彼の部下が背後から仕掛けてきた奇襲は、
ホークアイの投げクナイによって阻止され、続けて投げられた鉄製の網によって
一気に五人以上の獣人が生け捕りにされた。
シャルロットもハリセンでもって巧みに直撃を受け流しながら、
風の精霊【ジン】の力を借りて催眠効果を励起する【スリープ(眠り誘う華の香)】の魔法で
一網打尽を狙うが―――


「ルゥオオオオオオオオォォォォォォォォォ………―――」
「ぬがっ!? しゃらくさいれんちゅうでちねっ!!」


―――一切の魔力を掻き消す【イナーシャルキャンセラー】に阻まれて
思うように戦いを運べずにいた。


「同じ襲われるにしても、理由もわからず一方的にやられるのは癪だな。
 ええ、獣人のお偉いさんよ、どういう了見で夜討なんぞ仕掛けてきたんかねぇ?」
「フン、見ぬ顔の貴様には預かり知らない事だろうがな―――」


ホークアイの問いかけにルガーはにこりともせずに答える。
答えるというよりも、犯罪者に対して罪状を宣告するかのような口振りで。


「―――我々の任務は【ジャド】にて乱暴狼藉を働いた不逞の輩とその一味の捕獲ッ!
 そして、かような暴徒に下った八番組長、ケヴィン・マクシミリアンの処罰ッ!!
 わかったらおとなしく縛につけ―――とは今宵は言わんぞッ!!
 貴様らの刑は既に【獣人法廷】にて欠席裁判が行われているッ!
 判決は極刑とその身に刻めぃッ!!」
「通知も無しに裁判開いて判決下すのがてめえらの【義】かよ?
 せめて弁護士付けてくれやッ!!」


やはり、とデュランは心の中で嘆息を吐いた。
【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】に襲撃されるとすれば、これ以上の理由は無い。


「で、どうするのさ? このまま頭下げて逆転執行猶予にまで持ち込んでみる?」
「そしたらあれだな、弁護士より口が達者な被告人になっちまうな、お前。
 喋りすぎる被告人は裁判官の心証を悪くするばかりだぜ」
「だったらとるべきみちはひとつでちね…っ」


大義を掲げて旅する内に忘れかけていた前科だが、
それが今になって、いよいよリースの目的を叶えられるという時になって噴き出した。
世界規模の自警団を向こうに回して逃げおおせるとは到底思えないが、
今、こんなところで立ち止まるわけには行かない。


「長い人生だ、一度くらいは国際指名手配されるのも悪かねぇ。
 ………正面から突破するぞッ!!」
「「おうッ!!!!」」


立ち止まれないなら駆け抜けるのみ。
月夜に爛々と輝く無数の肉食的な眼光を真正面に捉え、三人は常闇の深淵へと大地を蹴った。













デュランたちがルガーから叩きつけられた罪状を、
ケヴィンは思いがけない人物から宣告されていた。


「本日をもってケヴィン・マクシミリアンより八番組長の資格を剥奪ッ!!
 裏切りの簒奪者としてッ! 局長のこのワシがッ!! 抹殺せしめてくれるッ!!」
「………お、御大将………!」
「ちょ、待ってください、御大将! ワイらには隊を脱するつもりは…!」
「言い訳は無用であるッ!!!!」


筋肉で固められた2メートル以上の巨躯、百獣の王を彷彿とさせる烈髪、
威厳が滲み出す顔立ち、そして、果てしない覇気が輝く双眸…闘気の具現とも言うべき存在、
【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】局長、“獣人王”その人が
大地を踏みしめ、仁王立ちしてケヴィンの前に立ちはだかっていた。


「ちょっと待ってよッ! 【ジャド】での事件はあたしが引き起こしたのよッ?
 ケヴィンは関係無いじゃないッ!!」
「【アルテナ】の姫君か…。
 フン、訳知り顔で口を挟むような真似は謹んでもらおうかッ!
 これは【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】隊内における粛清ッ!!
 貴様の罪状とは別次元の物と心得ていただこうッ!!」


直々に出陣してきた獣人王へアンジェラが待ったをかけるが、まるで耳を貸してはもらえない。
絶対的な存在に睨み据えられたケヴィンとカールは、
大地を揺るがせながら処断へと踏み込む獣人王の一歩一歩に、完全に竦み上がってしまっている。
ケヴィンはともかく、不遜なカールまでもがガタガタと震えてしまうほどに
目の前に聳え立つ絶壁は、高く、手の届かない絶対の領域なのだ。


「―――ヌンッ!!!!」
「う、うわッ!?」
「ケ、ケヴィンっ!!」


獣人王が掌を翳すと、そこに壮烈な闘気が爆裂し、
その衝撃によって生じた高圧の空気弾がケヴィンを後方数メートルまで跳ね飛ばした。


「まずは愚息の粛清から付ける事としよう。次は貴様らだ。
 …言っておくが、女だろうと、【アルテナ】の姫君だろうと【義】の前には平等ッ!
 容赦なく処断せしめるッ!!」
「………………っ!」


衝撃に煽られてケヴィンの頭から剥がされてしまったカールを尻目に、
薙ぎ倒された木々の中…ケヴィンの埋まる後方数メートルへ、
大地を震わせ、残像を残し、一足飛びで翔け去る。
投石器の射出と見間違える程の迫力と轟音をその場の破壊痕に刻み込んで。


「ど、どうしよう、どうしよう、リース…!
 あたしのせいでケヴィンが、みんなが………っ!」


その威力、その猛襲、【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】を束ねるに相応しい絶対の力を
網膜に焼き付けられたアンジェラへ自責の念が圧し掛かる。
突きつけられた罪状の元を手繰れば、全ての責任は自分にあった。
原因はなんだったか、それすら覚えていないイザコザが発端だった。
【ジャド】の港町で起こしたその乱闘事件に、成り行きとは彼らを言え巻き込んだ挙句、
脱獄の共犯にまで仕立て上げてしまったのだ。
普通に考えれば、これでお咎め無しで済まされるわけがない。
にも関わらず、自分の犯した罪すら忘れて、呑気に構えて…そんな軽率さが腹立たしく、
けれどいくら悔恨しても変えられない情況にアンジェラは激しい自責に駆られていた。


「自分が悪いと思ったなら、するべき事は一つですよ」


獣人の攻撃を銀槍で振り払いながら、唇を噛むアンジェラへ、
諭すようなリースの声が降りかかった。


「悪い事をしてしまったら謝らなければなりません。
 ………私だって後先考えずに飛び出して、公務を妨害してしまいました。
 その罪は償うつもりです」
「………………………」


ああ、そうだ。この少女はいつでもそうだ。
目の前の理不尽に飛び込んで、弱者を助けるために銀槍を振るう。
乱闘事件の折にも、彼女は動機も何も聞かず連行される自分を助けに入り、
そして逮捕されたのだ。
理不尽を許せない心の根本には【アルテナ】への恨みが息づいている筈なのに、
それさえ受け止めて、前を向いて進んでいる。
彼女の慈愛・強さと照らして、権力をカサに着て偉ぶるだけの自分との距離を感じ、
立ち止まってしまったのはそう遠くない日の痛みだ。


「―――でも、今は償いに足を止めてる場合じゃないでしょっ!」
「そうですけどっ、罪を着たまま前へ進む事ができるほど、
 私は器用ではありませんから!」


罪状を突きつけられた以上、リースは黙ってそれに従うだろう。
命を懸けた目的を前にしてもなお。
着せられた罪から逃れる事も、また一つの理不尽だから。


「だからって、このままに地団駄踏むわけにはいかないわっ!
 あたしたちは、前へ進まなきゃならないんだからッ!!」


―――だからといって、リースをここで立ち止まらせるわけにはいかない。
自分だって、ここで立ち止まるわけにはいかない。
リースに感じた距離を埋めて、プリムの域へ足りない信念を重ねて、
不器用なクセして情けなく立ち止まる自分を後押ししてくれる人のためにも。
本当の意味でみんなと肩を並べられるだけ前へ進みたい。
胸に燃やした炎は、自責の念に駆られる弱気を焼き焦がし、前進への推力を与えてくれる。
一瞬の弱気を振り払い、強く、一歩先へ進ませてくれる。


「だから、リース! あたしを獣人王のところまで連れてってッ!
 私のすべき事、私がしなくちゃならない償い、全部やってみるッ!!
 それで、前へッ!! みんなと一緒に前へ進んでみせるからッ!!」
「―――承知しましたっ!」


集団殺法にて迫り来る獣人の群れを、銀槍の旋回で一掃したリースは、
決意を固めたアンジェラの意志を受け止め、
獣人王が飛び去った、木立へ穿たれた埒へ向けて凛然と構えを取った。


「公務執行妨害の実刑が幾分嵩みそうですが…、
 銀槍【ピナカ】の峻烈にて、血路を切り開いてみせますッ!!」
「そやッ! 急がなけりゃあかんッ!
 このままやとケヴィンが大変なコトになってまうッ!!」


先手必勝とばかりにかつての同胞たちへ炎を吐きかけるカールの眉間に寄った皺が、
彼の焦燥をなによりも立証していた。














「バッ、バカな………ッ!
 俺たちは【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】精鋭八番組だぞッ!?
 そッ、それがなぜにここまで………ッ!?」
「驕るバカは、やられた時ぁ大抵そういう台詞を吐くもんだぜ?」


月下の死合い、三局のうちの一つは、早くも決着を見ようとしていた。
受け入れがたい現実をまざまざと見せ付けられ、
半ば放心状態となったルガーの首筋へツヴァイハンダーが押し当てられている。
デュランの背中越しには、突っ伏して倒れた【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】の面々。
死んではいないものの、直接戦闘が行える者は既に誰一人いない。
ホークアイの敏捷性が、デュランの轟剣が、遥かに優れる筈の獣人たちを圧倒し、
完膚なきまでに叩き伏せたのだ。


「お前らなぁ、俺たちが【ジャド】ん時のままだと勘違いしてたろ?
 これでもあの騒動から向こうこっち、何度も命がけの戦いを重ねてきたんだぜ」
「はっはっはっ! やすくみたのがうんのつきでちねっ!
 ぜったいてきなれべるのさがみにしみてわかったんじゃないでちか、このなめしがわどもが!
 ほれ、もっとひたいにつちつけてわびいれるでち。ないてゆるしをこうでちっ!」
「…っつーか、シャルは何もしてなかったじゃんかっ!
 援護魔法も奴らにゃ掻き消されちゃうし! 俺とデュランで切り抜けたもんだろっ!」
「こまかいおとこでちねぇ! しゃるのぷりち〜なせいえんがきこえなかったんでちかっ?」
「『なにをだらしなくにげまわってるでちか! おとこならしぬきでいくでち! むしろしねっ!』
 これののどこが声援だよ!? 完璧ヤジじゃんかッ!!
 あんなヤジ飛ばされたら、リトルリーグの監督でもマジギレするぞッ!?」
「あんたしゃんがへっぴりごしでにげまわってるから、
 けつひっぱたいてやったんじゃないでちか。
 かんしゃもわすれてぎゃくぎれとはいいごみぶんでち。
 ジェシカしゃんにちくりけっていでちね。じごくのひっさつふるこーすをあじわうがいいでちッ!」


しかもこの通りの余裕ぶりである。
【ジャド】での脱獄からそれほど時間も経っておらず、
ルガーも誰も、大した成長はしていないだろうと踏んでいたが、
デュランにも詰られたようにそれは浅はかな油断だった。
【ジェマの騎士】、【セクンダディ】と命がけの死闘を続けてきた彼らの戦闘力は
この短期間で飛躍的な成長を遂げており、獣人すら軽く凌駕してしまっていた。


「いやー! いやいやいやいや〜♪
 これはまたすんばらしい躍進っぷりですねェ♪
 高座にて拝見させていただきましたが、眼も覚めるようなご活躍!
 ガラにもなくエキサイティングしちゃいましたよォ♪」


ルガーを縛り上げ、人質として生け捕ろうと提案するホークアイの頭上から、
まるで中間管理職が上司へ媚びるような手もみ足もみの声が降り注いだ。


「この分ですと、さぞや【太母】様もお強くなられておいでかと。
 そろそろ熟れ時、摘み時ですかねェ?」


かと思えば今度はシャルロットの背後から。
縦横無尽に反響する謎の声が、這いずるような不気味さでもって一行を包囲していた。


「そこかァッ!!」


最後に声のした方向の雑木へクナイを投げかけるホークアイだったが、
「ハ・ズ・レ♪」と最初に声の降りかかった頭上から冷やかしが入り、
上空を警戒しようと慌てて振り返った彼の鼻先スレスレに、謎の声の主は姿を現した。


「くっ!? こ…いつッ!!」
「おっほほほほほほ♪ 鬼さんはこちらですよォ♪」


素早く抜かれたクナイをもひらりと躱し、急かすような拍手を送る。
サーカスで道化を演じるピエロの扮装を纏った声の主の行動は
いずれも他者をおちょくり、軽んじる嫌味な物で、見る者の神経を逆撫でした。
揶揄されたのがデュランであったなら、激情のままに突っ込んでいたかも知れないが、
そこはホークアイの怜悧さだ。
冥府の番人を思わせる大きな鎌を担ぎながらも飄々と振舞う声の主の胸元へ
忌むべき【トリコロール】を認め、案の定激情に走って追撃に臨むデュランを制止した。


「お前ッ、【セクンダディ】の一員かッ!?」
「いかにもいかにも! 【三界同盟】にて下働きを仰せつかっております、
 【セクンダディ】の末席、“死を喰らう男”と申します。
 あ♪ ご〜めんなさいね、本日は名刺を忍ばせていないんですよォ〜」


これまで相対してきた【セクンダディ】と比較して、
どこまでも掴み所の無い、悪と断じるにはあまりに滑稽な男だが、
獣人ですら捕らえきれなかったホークアイの速撃を軽く回避してしまう
身のこなしは只者ではない。


「ハッ! 【セクンダディ】にもセコい野郎がいたもんだぜ!
 俺らが起こしたイザコザに便乗して漁夫の利取りかよッ!?
 ライザもてめえのようなチキン野郎を仲間に持って、さぞ苦労してるだろうぜッ!」
「漁夫の利? と〜んでもございませんよぉ〜♪
 ワタクシめは最初っから、一部始終、楽しませてもらってたんですから♪」
「そ、それってどういう………まさか、お前………ッ」


カラカラとおどける死を食らう男の嘲笑に、
ホークアイの脳裏へイヤな予感が立ち昇っていく。


「だっておかしいと思いません?
 今の今までなんの音沙汰も無かった罪状が、ど〜して急に騒がれ始めたの、か?」
「まさか…、てめぇ………!」
「ちょいとね、ある事ない事吹き込んでみせたら、もう獣人王サマご立腹もご立腹♪
 『いますぐに裏切り者共を討て!』って。
 おっほほほほほほ♪ ミナサマ【義】を大事に大事にされておりマスから、
 実に単純明快でわかりやすい! ひっかけやすい!
 昨今は社会も何も、複雑になり過ぎてマスから、単純なのは大変によろしい事ですよ♪
 むしと伸ばして欲しい長所デス♪ 通信簿にもそう記しておきますよ♪」
「やっぱし情報工作かッ!! 狡っからい事してくれるじゃんかよッ!!」


軽妙な道化師とは対照的に、煮こごったような表情でホークアイ歯軋りする。
危惧していた最悪の予感が的中してしまったのだ。
この道化師によって誤った情報を流された【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】も、
彼らに負い目あるがゆえに戦いに応じた【チーム・デュラン】も、
結局は【セクンダディ】の思う壺に嵌められ、良いように踊らされていただけだった。


「あなたも相当に頭がお働きのご様子ですが、
 ワタクシとしましても、…人の嫌がる悪知恵だけはヒケを取らないつもりですので♪」


『ではでは♪ 最後の仕上げに勤しみましょうか♪』と
嘲笑を残してフッと影に溶け込んだ道化師の残像へツヴァイハンダーが打ち込まれるも、
虚しく空を切るだけだった。


「聞いたか、お前!? 騙されて、踊らされてたんだよッ!?」
「………………………」
「ほっとけ、ホークッ!! それより急いでリースを探さねぇとヤバイッ!!
 ヤツのお喋りが本当なら、あいつら、いよいよリースを掻っ攫いに動きやがったッ!!」


何が【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】だ、不甲斐ないと、
苛立ちぶつけるホークアイの腕を焦り汗ばんだデュランの掌が掴む。
そうだ、今は詰っている場合ではない。今すぐにでもリースを発見しなければ、大変な事になる。


「―――待てッ!!」


遠くに聞こえる戦いの音にリースらの居場所を認め、加速を蹴ろうとした三人を、
ルガーの鋭い声が引きとめた。


「なんだよッ!? これ以上てめえらと付き合ってるヒマは………」
「………お前たちに話しておく事がある」






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