「デュランかッ!!」
「おう、ブルーザーッ!!」


回廊内に穿たれた四辻の東側から、
数名の部下を引き連れてブルーザーが駆け込んできた。
エントランスで戦う内にここ『ヒエラコの回廊』まで進撃してきたようだ。
甲冑のいたるところを染める返り血が、激闘の激しさを物語っている。


「どうだ、エントランスの状況はッ!?」
「………楽観できる状況とはお世辞にも言えないな。
 最初の内は虚を衝いて形成を崩せていたが、さすがにいつまでも浮き足が続くわけでもなし」
「くそッ、予想以上に厳しいかよ…!」
「僕の作戦が悪かったのでしょうか………」
「ランディ殿の作戦は磐石だと思うが、
 やはり真っ向からぶつかるとなれば、
 どうしても数に勝る敵方に苦戦を強いられる。
 しかも斃した筈のモンスターどもが次々と息を吹き返してやがるんだ!!」
「はァッ!? どういう事だよ、そりゃ!?
 お前、寝ぼけて見間違えたんじゃねえのかッ!?」
「修羅場で居眠りできるほど図太い神経なんか持ち合わせてねぇよ!!」
「まさか、敵ん中に【ネクロマンサー(死霊使い)】がいるのッ!?」
「―――うっわ!!
 さすがはごくどうどもがさえないがんくびそろえてるだけあるでちね。
 てかもえげつないれんちゅうばかりでちっ!!」


【ネクロマンサー(死霊使い)】とは、
その名の通り現世に無念を残して死んでいった地縛霊や屍に仮初の命を与えて使役する、
おぞましい外法の使い手の事だ。
生命とは取り返しのつかない、たった一度の奇蹟。
たった一度しか無いからこそ、可能性を開化させるべく努力し、生命は輝けるのだ。
等しく迎える最期も帰結点と言う意味では、可能性の一つである。
一つの生命に二度目は無いという原始的理念は【イシュタル】の教えであり、
生命の摂理に反する【ネクロマンサー(死霊使い)】は、
【イシュタル】の後継者であるフェアリーや、
女神信仰に厚いシャルロットにとって忌むべき存在なのだ。
シャルロットはともかく、普段は陽気なフェアリーまでもが
憎々しげ吐き捨てるくらいなのだから、
忌み名の猛毒は無神論者のデュランには想像もできないほど強烈なものと推察される。


「ちょっと本格的にヤバイかな…。
 特攻仕掛けたところで退路に残党が溢れてたら、親玉潰す意味も無いし」
「―――ホークってば、ホント、ド真性のヘタレだよな〜」
「あのねぇ、みんなして人の事をヘタレヘタレと
 好き勝手言ってくれちゃうけど、俺は慎重派なだけなの!
 てゆーか、ランディが慎重な意見言うと神妙に聞き入って、
 なんで俺だけチキン扱いなのさっ!?」
「性格の問題だろ。ランディはお前と違っていつも謙虚だからな。
 普段スカしてるクセにいざって時にダメなお前じゃ、
 ヘタレ呼ばわりされても仕方無ぇだろ」
「ひ、ひでぇや親友(マブダチ)!
 そ、そこまで理論武装でやり込めなくたっていいじゃん!
 俺、もう逃げ場も無いんだけどっ!」
「はっはっは!!
 ま、デュランの理屈の通りにホークがダメ人間かどうかは
 後の楽しみにとっとくとして、今はこの状況をどうにかしねぇとな」


こんな時にまでヘタレ呼ばわりされて肩を落とすホークアイの横で
何やらマサルが【草薙カッツバルゲルズ】の隊旗を竿から外し始めた。
鉄拵えの竿から取り外された旗を、
今度はライダースーツの胸ポケットから取り出したナイフで切り刻む。
あまりに脈絡の無いマサルの行動に一同が呆気に取られている間に
隊旗はとうとう三切れに切り裂かれてしまった。
厚手の布を無理やりにナイフで裁断したので所々いびつな形になっているが、
見た感じでは大きな三角巾を思わせてくれる。


「………お前、一体何やってんだ………?」
「何って、見てわかんねぇか?」
「えっと、ハンカチか何かを作っているんでしょうか?」
「はっはっは〜、相変わらずバカだなぁ、ランディは。
 こんなデケェハンカチがあるもんかよ。
 近いっちゃあ、近いけどもさ」
「バカはてめぇだ! こんな時に謎かけなんかやってる場合か!!」
「ったく、いちいちキレんなよ。カルシウムが足りてねぇんじゃねぇか?
 ………見てわかれよなぁ。バンダナだよ、バンダナ」
「「バンダナぁ…?」」


得意満面に胸を張るマサルには申し訳ないが、
驚きの声を上げたデュランもランディも、
目の前の布切れをバンダナとは認識できなかった。
いくら無理しても、柄が中途半端に寸断されたボロ切れにしか見えないと言うのに
こうまでマサルが自信満々にバンダナと言い張るのだから、
もしかしたらこれはバカだけにバンダナと認識できる魔法の布を
使っているのではないか、とあり得ない仮説が飛び交ってしまうのも仕方が無い。


「そ。こうやって締めとくんだよ」


目を丸くするデュランたちの目の前で、マサルのバンダナが新しい物と付け替えられる。
旗をバンダナとしたのだから、当然ながら通常よりも大きく、
後ろで縛ると肩口まで端が垂れ下がった。


「―――こうしとけば、離れていても、俺たちは一つ。
 いつでもどこでも、どこまでも【草薙カッツバルゲルズ】だ」
「マサルさん………」
「マサル、お前………」
「俺ぁ自慢じゃねぇけど頭悪ィからな。
 お前らの言う慎重な意見とか作戦とか、全然わかんねぇよ。
 わかんねぇけど、頭使う連中が足踏みしてる時、それじゃ俺に何ができるかなって。
 んで、考えたわけよ。
 俺にできるのは、足踏みしちまったヤツらにハッパかけてやる事じゃねぇかって」


マサルはいつでもそうだ。
決戦を直前に控えたプリムを解きほぐした時と同じように、
今度も思考の膠着してしまったランディやホークアイに助け舟を出した。
豪放磊落を演じているようで、誰がどんな物を望んでいるか、
繊細に察知し、フォローしていく…デュランの統率力やランディの智謀よりも大事な、
メンタルの部分のケアをマサルはいつでも一手に引き受けていた。


「………足踏みなんかしている場合じゃありませんよね」
「ああ、ここまで来てブルッてるようじゃ、
 俺もリースを説教できねぇぜ」
「おしッ、決まったみてぇだなッ!」


錆付いた時間が一気に動く。
右肩へバンダナを縛り付けたデュランが、左の手首にバンダナを締めたランディが、
額をバンダナを巻いたマサルが、歯車となって時間を動かしていく。


「―――おう、ルガーッ!! ここは俺たちで引き受けようぜッ!!
 邪魔しに来るヤツぁ、ちゃっちゃと片付けちまおう!!」
「銃後を守るのは構わんが、しかし、いいのか?
 ケヴィンたちに随いていかなくても」
「へッ、今しがた話したばっかじゃねぇか。
 俺たちゃ離れていても一つなんだって。
 それだけでパワー100万馬力ってモンさねッ!!」
「そういうわけです。
 …デュランさん、僕らはブルーザーさんと一緒にエントランスを」
「ああ、エントランスの戦いはお前に任せたぜ、ランディ」
「その代わりと言っては何ですが、
 ちゃんとリースさんと弟さんを再会させてあげてくださいね」
「確認取るまでも無ぇ。
 そのために俺たちはここまで命削って来たんだからよッ!」


言葉少なに自分たちのやるべき事を確認し、互いに拳を打ち付け合う。
それだけで十分だった。それ以上には何も必要は無かった。
隊旗でこさえたバンダナを腕に巻いたデュランは、エリオットの幽閉される回廊の先へ、
バンダナを手首に巻いたランディは、劣勢に傾きつつある戦況を立て直すべくエントランスへ、
バンダナを額に締めたマサルは、これから現れるだろう追手からデュランたちを守るため、
四辻のど真ん中に腕組みして仁王立ちした。
それぞれがそれぞれの目的に向けて動き始めた。


「ってコトは、ココでケヴィンやカールとはお別れだな。
 ランディの兄ちゃんだけにプリムの姉ちゃんの相手は任せらんないしさ」
「うん、ランディさんの事、ポポイに任せるよ。
 絶対、元気で、戦いが終わったら、会おうね!
 また、みんなで、鍋パーティー、やろう!!」
「…あら? 私がランディに同行するのは決定事項なのかしら?
 リースの事も非常に気にかかるのだけど?」
「またまた勿体ぶっちゃって〜。
 ホントはいつだって“Theダメんず”と一緒にいたいクセにさ〜♪」
「なッ、ななな、何を言うの、フェアリー!!」
「普段はビシッとしてるのに、そっち方面の話には案外ウブよね、プリムって。
 ちょっと茶化されただけですっかり顔真っ赤じゃない。
 姉さん女房も悪くないかもよ、ランディ〜」
「ア、アンジェラまでッ!!
 わ、私は別にランディが肥溜めにハマろうが、野垂れ死のうが、
 全っ然、これっぽっちも気にならないのだけどっ!!」
「………………………」
「あんな、プリムな、取り繕うにしても、もうちぃと可愛げのある言い方せんと、
 ほれ、これから気張らなアカンちゅうのに、ランディ、すっかり凹んでもうたやないか」
「はっはっは〜、
 惚れた腫れたで一喜一憂してる内ぁ余裕あるって証拠だぜ。
 どっかの誰かさんは、本腰入れてビビッちまってったからな」
「遠まわしにヘタレ呼ばわりすんのやめてよ、マッちゃんッ!
 つーか、おたくの余裕がむしろ非常識なんだよッ!! もしかしてパンチドランカーッ!?
 瀕死の重傷受けても平気でムチャしそうだよ!!」
「安心してくだせぇッ! マサルの兄ィは俺とベンでフォローしますんで!!」
「―――おっ!? 冴えてるじゃん、ビル!!
 俺が言おうとした事、きちんと理解してくれてるじゃん!」
「そ、そりゃあ、ホークの兄ィの事ならなんだって理解してるつもりでさぁ!」
「よし、ビル、ベン、マッちゃんを頼んだぜ!!」
「オウさッ!!!!」
「見取り図からすると、
 この回廊をずっと進んでいくと親玉の玉座があるみてぇだな。
 エリオットを助け出したら、一足先に斬り込んでやるか!」
「無理はしないでくださいね、デュランさん。
 危険だと判断したら、僕らが合流するまで踏みとどまってください」
「おうッ!! カタがついたら、すぐにでも駆けつけっからよッ!!」
「約束ですよ、ランディさんたちも、マサルさんたちも、
 次の戦場では、無事な姿を見せてくださいねっ!?」
「今、お前が心配すんのは、こいつらじゃなくて弟の事だろ?
 気に揉む必要は無ぇよ。殺したって死なねぇ連中なんだからよ!!」
「へへッ、ダテに長いコト傭兵やっちゃいねぇさ。
 タフネスも誰にだって負けねぇ自信があるぜ、
 マサル・フランカー・タカマガハラはよッ!!」
「皆さんがいてくれるから、僕も挫けませんよ。
 ―――デュランさん、皆さん、………それでは、次の戦場にて再会しましょう」
「応、次の戦場でまた肩を並べようぜッ!!」


艱難な戦いが待ち構えていても、仲間がいてくれるから、どこまでも明るく前向きでいられる。
余裕すら滲ませる【草薙カッツバルゲルズ】の様子からは、
「次の戦場にて…」と、【エルランド】で再会を約束した時が思い出された。
あの時と違うのは、再会の約束を三つに分かれたバンダナに誓った事と、
………この別離の先に待ち受ける運命が、彼らをトライアングルに引き裂く事だった―――――――――


「―――ッ!? タカマガハラ、あれをッ!!」
「………へぇ、お前さんが直々に相手してくれるんかい」
「お前を葬れる者が私以外にいるはずも無いだろう。
 いつかの宣戦、果たしに来たぞッ!!」


遠ざかっていく足音が長い別れの始まりになるとも知らず、
眼前に現れた好敵手に、フンドシを締め、
部下も付けずに単騎で現れた邪眼の伯爵に向き直ったマサルの顔には
嬉しそうな微笑が浮かんでいた。













「これはどういう事なのだ、ヒース・R・ゲイトウェイアーチッ!!」


【支配階級魔族(サタン)】の頂にある美獣は、
人間に属する同胞を呼ぶ時、しばし二つ名でなく本名で呼びつける事がある。
そういう場合は大抵感情が昂ぶっている時であり、虫の居所が大変によろしくない時だ。
“堕ちた聖者”の二つ名を授与されたヒースを
本名で呼びつけにする今回も例外に漏れず、形相は夜叉のごとく歪んでいた。


「藪から棒にどやしつけられても困ってしまいますね。
 せめて、主語と述語の関係性を組み立ててお話ししてくださいませんか」
「質問に質問で返すなッ!! 貴様の言葉遊びに付き合っている暇など無いッ!!」


イーグルに負わされた傷が完治しない美獣は戦列から外され、
ヒースと共に三盟主らと“もう一人”のリースとの融合―――
―――彼らの言葉を借りるなら【トリニティ・マグナ(超神)】への進化に至る儀式の
サポートに配置されていたのだが、今回は【三界同盟】始まって以来の大決戦。
優劣の趨勢が気になって仕方が無いらしく、度々儀礼室を抜け出しては
本陣に伺いを立てに赴いていた。今もそうだ。
そして、儀式が終盤へ差し掛かる前に一度確認しておきたいと言い残し、
本陣へ出向いて戻ってきた時、美獣は怒りに身を焦がしていたのだ。
儀式が終結するまでは特にする事も無く、悠々と雑誌に目を落としていたヒースには、
突如として爆発した美獣の怒りの正体を全く持って推理できなかった。


「本陣に出向いて耳に入れたのだがッ!!
 敵方にはリース・アークウィンドがッ!!
 今ッ! 三盟主と共に在る筈の【太母】の姿を確認したとの報告があったッ!!
 これがどういう事なのかと聴いているッ!!
 【太母】を三盟主へ献上したのは貴様だったなッ!?
 ならば説明しろッ!! これはどういう事なのかッ!?
 敵方に在るリース・アークウィンドは何者かッ!?
 我らの目の前にて、三盟主と進化へ至ろうとしている【太母】は何者かッ!?
 まさか、双子などという事はあるまいッ!!」
「―――ああ、なんですか、
 血相変えてやって来るから何事かと思えば、そんな事でしたか」


博識なヒースには珍しく小首を傾げていたが、美獣からその言葉が出た時、
ようやく疑問と正解が繋がり、意を得てポンと手を叩いた。


「どちらも同じリース・アークウィンドですよ。
 つまり、どちらも本物の【太母】サマ」
「そんなわけがあるかッ!!
 同一の人間が存在するなどというバカげた話が通用するものかァッ!!
 これ以上はぐらかすと言うのならば、反逆者として処断するぞッ!!」
「―――クローン、という言葉をご存知でしょうか?」
「………なに? ………クローン………?」
「お伺いするまでもありませんでしたね。そう、クローン。
 平たく言えば、対象となる生物の遺伝子情報をベースに、
 全く同一のコピーを生成する技術の事です」
「なにを…、言っているのだ、貴様………」
「ここで最初の回答に戻るわけです。
 “どちらも同じリース・アークウィンドですよ”、と。
 遺伝子情報の上では、三盟主と共に在る【太母】は、
 戦陣を駆るオリジナルのリース・アークウィンドと同一の人間です。
 ………基本スペック的には、ね」
「意味が、わからぬ………………」
「意味など解らなくて良いのですよ。
 旧態依然とした魔族と、未来への階である【マナ】は、
 決して相容れる事の無い要素ですからね」
「【マナ】ッ!? どうしてここで【マナ】が出てくるのだッ!?」
「クローニング技術は【マナ】の秘術の一つでしてね。
 ………ああ、そうそう、【マナ】の遺伝子工学には、
 もう一つ大きな隠し玉がありましてね―――」


理解に苦しむ羅列に美獣が困惑する背後で、突然、絶叫が上がった。
儀式の間の中央に鎮座する壁の向こう側…【トリニティ・マグナ(超神)】への
進化が行われている向こう側から、この世の物とは思えないおぞましい断末魔が
遍く生命を憎しみ、呪うように響き渡った。
三種の絶叫の中に敬愛してやまないアークデーモンの悲鳴を聞き取った美獣の顔から
気色ばんですらいた血の気が一気に引いていく。


「め、盟主さまッ!? ―――アークデーモン様ぁッ!?」
「―――おや、委細を説明する手間が省けたようですね」


ブラック・オニキスの壁に隔てられたこちらからは、
三盟主に起きている異常事態を覗く事は出来ない。
助けようにもどうすれば助けられるのか解らず、
焦燥と憤激に正常な神経を焼かれた美獣は狂乱してヒースの襟元を締め上げた。


「貴様ッ、貴様ァ、何をしたッ!! アークデーモン様に何をしたのだァッ!?」
「彼らにある種の進化を授けてあげただけですよ。
 彼らが望む進化とは、即ち肉体の劇的な変化。
 だから、肉体を構築するDNAを変化させる秘術を、ね」
「秘術ッ!?」
「複数の個体が外的に融合した際、
 【ネクローシスの染色的増幅】を励起するプログラムを、
 もう一人の【太母】サマのRNA新大陸へ入力して差し上げました。
 ………ああ、RNAというのは、先ほど説明したDNAの………」
「黙れェッ!! いや、黙るなッ!!
 それは一体どういう事なのだッ!? 【ネクローシス】とは―――」
「―――他殺因子の一つです。細胞のエネルギー生産に異常を来たす、ね。
 それが染色的に増大されれば、たちまち肉体は内部から死滅し、自壊するでしょう。
 進化の帰結点は死。…ね? 究極の進化に、彼らは辿り着いたわけですよ」
「き、き、貴様ァ―――――――――」


許されざる造反を平然と言ってのけるヒースの首の骨をへし折ろうと、
両手に込めた力を強めようとした瞬間、美獣の意識は昏闇の底へ墜ちてしまった。
見れば、ヒースの右手が闇の精霊【シェード】の魔力で輝いている。


「障害物は抹消しておきたいところなのですが、
 貴女の命を奪ってしまっては、邪眼の伯爵サンに申し訳も立ちませんから。
 今回は【スリープ】で安眠いただく事に留めておきますよ。
 女性に気色の悪い断末魔の叫びを聞かせるのも忍びないですしね」


ガクリと脱力した美獣を抱えるヒースの背後では、
なおも三盟主らの最期の咆哮が続いていた。
一際大きく苦悶を吠えると、それから後は少しずつ小さくなり、
とうとう霞のように掻き消えていく悲劇の絶叫を、
ヒースは薄ら笑いを浮かべて背中で受け止めていた。
常人には聴くに耐えない断末魔の絶叫も、
ヒースの耳には優雅なオーケストラとして響いているのだろう。
貼り付けたような笑顔は、どこまで不気味で、恐怖を超えた戦慄を感じさせた。







←BACK     【本編TOPへ】     NEXT→