広域まで展開されたアンジェラの【シェルター】によって九死に一生を得たパーティが、
天井崩落の終息を見計らって瓦礫の山を這い出すまで、およそ20分。
地中にて【ジェマの騎士】への怒りを悶々と溜め込むには、十分過ぎる時間だった。
「だーッ!! これが【ジェマの騎士】のやる事かよッ!?
初対面の人間をいきなり抹殺狙いなんざ、英雄以前にまずヒトの道から外れてんじゃねぇかよッ!!」
【グレイテストバレー】の断層や、【エキスポ・マナ】で【旧人類(ルーインドサピエンス)】の技術力に触れて、
【マナ】が自然界を滅ぼす種子足り得る脅威とは、デュランも理解していた。
フェアリーが自然界を司る【女神】の後継者なら、それを忌み嫌うのも頷ける。
しかし、どうして【マナストーン】を欲しがってるのか、理由すら問い質す事無く
一方的に悪し様に決め付けて攻撃を仕掛けてきた、【ジェマの騎士】たちの暴挙が許せなかった。
「アンジェラの魔法、無ければ、オイラたち、今頃、生き埋め。
ありがと、アンジェラ」
「ちょ、ちょっとばかり焦ったけどね………」
「威力奇襲はお前の十八番なのに、今日は逆の立場だな?」
「うっ、うっさい…、あたしはアイツらみたく一方的じゃないわよ…!」
ケヴィンに笑顔を作って返すアンジェラだが、
広域への【シェルター】の拡散展開と維持によって気力をだいぶ消費してしまい、
気丈に振舞うものの、実際にはデュランの軽口へやり返す余裕すら残っていなかった。
「全員無事ではあるみたいだな」
「ああ、アンジェラの機転で助かったわい。…わいからも礼を言わせてもらうで」
瓦礫から這い出したパーティの無事が確認されたところで、
一同揃って憤激まじりの溜息を吐いた。
「で、どうする、これから?
ヤツらの言う通り、大人しく引き返して、出直しを―――」
「―――追いかけましょう、今すぐっ!!」
やる事なす事ムチャクチャな【ジェマの騎士】たちだが、その実力は本物だ。
今は瓦礫の下に埋葬されているドラゴンも、おそらく彼らが退治したのだろう。
それだけの戦闘力と真正面からぶつかって勝ち目が幾らあるものかと、
冷静に判断したホークアイの出直しの提案をリースが遮った。
追いかける―――つまり、彼らと正面対決を意味している。
このパーティにとって、それは非常にリスクの高い選択肢だ。
「………リースッ!」
正面対決を発言したリースの前にデュランが立ちはだかった。
およそ一日ぶりに見るデュランの正面からの表情は、厳しさに固まっている。
見る物を圧倒する大きな壁として、先を急ごうとするリースの前に聳え立つが、
どれだけ睨みで凄まれても、彼女は一歩も引かなかった。
「お前の選択は、またチームを危険な遭わせるもんだ。
そんなギャンブルみてぇな選択を俺は承知できねぇ」
「ギャンブルなんかじゃありません!
私たちの力を結集すれば、あの人たちにも必ず勝てます!」
「仮に勝ったところでダメージがデカけりゃ意味も無ぇし、
それだけ派手にドンパチやり合ってデカ騒ぎしたヤツらを、
人間嫌いの賢者サマとやらが気分よく迎えてくれると思うか?
ここはホークの言う通り、一旦引く方が上策だろうがッ!」
危険を承知で飛び込もうとするリースの選択肢は、デュランの正論の前には異端で、
あまりにハイリスク&ローリターンだ。
“理と利”で計れば、お世辞にも良策とは言えない。それでもリースは譲らなかった。
譲らないが、意固地になって駄々を捏ねているわけでは無かった。
ただ真っ直ぐに、決意を秘め、澄んだ瞳でデュランを見据えていた。
「確かに危険な選択だと思います。
でも、理由も聞かず、一方的な決め付けで相手を攻撃するような人たちを
私は野放しにしてはおけません」
「そうやって先走って、また俺たちに迷惑をかけるのか?」
「…改めて言われるまでもありません、昨日の事件だってそうでした。
自分勝手な先走りで皆さんに、
…助けようとしたあの男の子にまで大変な迷惑をかけてしまいました」
なおも正論で攻撃するデュランと、全く揺らがないリース。
仲間たちが心配そうに見守る中、睨み合いは続く。
そして―――
「でも、私は私の正義にウソをつきたくありませんっ!」
―――厳しい糾弾にも折れる事なく、リースは高らかに己の信念をもって宣戦布告した。
「【マナストーン】の情報よりも、今はあの人たちです!
このままあの人たちを野放しにしておけば、きっとまた同じ過ちを繰り返す!
その前に、戦って勝って、身勝手な決め付けで人を傷付ける愚かしさを修正しなくてはならない!
だから………ッ!」
「………………………」
それこそ、リース自身が考え、生み出した答え。
―――否、それは最初から彼女の根底にあった信念だ。
幽霊騒ぎに夜も眠れぬ日々を過ごすアストリアの村民のため、
自らの身の危険も顧みず夜の森へ飛び込んだのも、
【獣王義由群(ビースト・フリーダム)】に連行されそうになるアンジェラを助けたのも、
大切な幼馴染みを救うために戦うホークアイのもとへ駆けつけたのも、
………チームへの迷惑を考えず、単独で人身売買の現場へ急行したのも、
誰かのために命を懸けられるリースの根底に根ざす、彼女を戦士たらしめる信念だった。
「だから、昨日の事と今日の事、全部、ごめんなさい!
そして、私と共に戦ってくださいっ!」
立ちはだかるデュランへ、見守る仲間たちへ、深々リースは頭を下げた。
「………お前の考えはあまりに幼ぇ。
本当にドン・ペリの機嫌を損ねて【マナストーン】の所在がわからなくなったら、
お前、どうすんだ? また振り出しに戻っちまうんだぞ」
「振り出しへ戻れるという事は、また最初からやり直せるという事です!
………ここであの人たちを見逃して、あの人たちが再び同じ蛮行を繰り返したら、
それを知ってしまったら、私たちはもう、スタートラインへ立つ事も出来なくなると思うのです!」
「………………………」
「命を捨てても、私は【マナストーン】を見つけ出します!
けれど、自分の信念に嘘をつかない事も、また、命懸けなんですっ!!」
自分でもメチャクチャと思っていた。
正論と呼ぶには、あまりに支離滅裂で、デュランを論破できるとは思っていなかった。
けれど、それは曲げがたい信念。
目の前にある哀しみを、一方的な決め付けによる処断から誰かの安息を護る、
戦士としての信念だけは、どれだけ叩きつけられても曲げる事は出来なかった。
「………………………」
「デュランしゃんねぇ、あんたしゃんねぇ、
ここでくびをたてにふらなきゃ、ただのわからずやのきちくやろうでちよ」
「そうだぜ、デュラン。
そりゃ俺だって冷静に見たら引くのが得策とは思うけど、
ここまでタンカ切られたら、応じないわけにゃ行かないでしょ、男として!」
「だぁー…ったくッ!! お前ら、横からうるせぇんだよッ!!!!
そこで横槍入れられたら、大マジで構えてた俺がバカらしくなるだろうが!」
脇からチクチクと言いすがる二人を太い腕で強引に散らしたデュランは
それまでの厳しさと打って変わって、バツが悪そうに口元をヘの字に曲げていた。
この表情を、リースは何度も見てきた。デュランの、この表情は………
「デュラン………!」
「そいつが曲げられねぇお前の信念なら、
俺たちは、少なくとも俺は最後まで付き合うぜ」
それは、相手の言葉を受け止め、ツヴァイハンダーを振るう決意を固めた時の表情。
言い出すのが照れくさくて、ちょっとだけ不貞腐れた、優しさと気難しさを同居させた表情だ。
なによりもリースを勇気付けてくれる、心強いヘの字口だった。
「“なにが少なくとも”だよ! 俺たちも最後まで付き合うさ!
スタートラインに戻っちゃったら、もちろんそれにも付き合うっ!
痛みも喜びも、全部分かち合おうぜ!」
「そうでなければ、こんなひとざとはなれたまきょうまでのこのこぴくにっくしになんかこないでちよ。
ったく、いちいちこーゆーのをくちにださなきゃわかりあえないところがじゃりたれだっていうんでちが、
ま、あんたしゃんらにはおにあいでちね」
「オイラたち、最後まで、一緒! リースの願い、叶えるまで、全力で、協力する!」
仲間たちが心強い励ましをリースへかける中、いつもなら真っ先に駆けつける筈のアンジェラは、
なぜか苦虫を噛み潰したような渋い顔でその場に立ち尽くしていた。
微かに唇震えるその頭上へカールが飛びついた。
「…一方的な決め付け…か」
「………“世界のモラルリーダー”のお姫様の胸にゃ、
そりゃ刺さるものがあるわな、その言葉………」
目の前にある哀しみを、一方的な決め付けによる処断という暴挙から
誰かを護るという戦士としての、リースの信念の根底の、さらに深奥にあるモノ。
リースを信念の戦いへ駆り立てる因子を誰よりも知るアンジェラには、
その言葉は人生最大の皮肉として胸へ突き刺さった。
『踏みにじったほうは痛みを感じねぇけどな、
踏みにじられたほうはそうも行かねぇんだよッ!』
【グレイテストバレー】でデュランに叩き付けられた言葉を思い出す。
かつて、自分の祖国が【ローラント】を、彼女の故郷を攻め滅ぼした。
【ローラント】の族長が【禁咒】を用い、“なぜ”【アルテナ】主導の社会へ叛旗を翻したのか、
誰も確かめる事無く、ただ【社会悪】という一方的な処断の上で執り行われた、民族虐殺。
『恨みを忘れて、手と手を取り合う事だってきっとできます』
民族郎党全てを根絶やしにされた悲壮の上に立ちながら、
リースはそう言って、誰をも恨む事無く、自分と同じ悲劇を生まないように戦っていたのだ。
不条理に踏みにじられて悲しむ運命を増やさないために、目の前で危険に晒される全ての命のために。
感動的な程に勇壮な決意の根底に今も耐えない悲しみは、間違いなく自らの祖国が植え付けたものだった。
(今なら………デュランの言葉、わかる気がするな………)
踏みにじった者には想像もできない痛みと、踏みにじられた人間が感じる痛み。
歳が近い事もあり、勝手に親友になったつもりでいたが、リースとの距離は、実は驚く程遠かった。
踏みにじった人間が、踏みにじられた人間の親友を気取る資格があるのだろうか。
気付かなければ幸せだった現実の窓を、リースの決意表明がこじ開け、
そこから吹き込む凌ぎ難い嵐に阻まれて、最後までアンジェラは彼女に駆け寄る事が出来なかった。
†
それから賢者【ドン・ペリ】の座する最深部へ到達するまでの間は、文字通り鎬を削る直接対決となった。
先ほどの威力攻撃で確実に仕留めたと油断し切っていた【ジェマの騎士】チームは
余裕しゃくしゃくの道中散歩気分だったが、
後ろから猛烈な勢いで追いすがってきたデュランたちの姿にはさすがに驚愕し、
今度こそはと再び威力攻撃を仕掛けてきた。
「さっきはアンタらに良い様にやられちゃったけど、今度はこっちの全力反撃!!
言っとくけど、比例報復なんかじゃ済まさないんだからぁーッ!!」
「せいぜいほえづらかいてくたばるがいいでちっ!!」
しかし、前回の奇襲と異なり、今度は真正面からの前面激突だ。
相手の手の内も理解しているパーティは、まずアンジェラの【シェルター】を展開して対魔法攻撃の対策を完璧に立て、
更に前線に立って剣戟を交えるデュラン、ケヴィンの二人へシャルロットが知りうる限りの補助魔法を施した。
【シェルター】を維持するアンジェラからは、同時に連続式の【ファランクス】が降り注いだ。
言わずもがな、先ほど見舞わされた【メテオフォールド】を模倣した報復である。
「うわッ、こ、こっち来ないでくださいよっ!!
というか無事にやり過ごしたって言うのに、何でわざわざ危ない目に遭いに来るんですかッ!?」
「こっちにはこっちの事情ってもんがあるんだよッ!
てめえら、踏み台にさせてもらうぜッ!!」
「師匠、それじゃ、オイラたち、悪者」
「たまにはええやないか、ヒールへ回るんも。もともとワシら、正義のヒーローでもなんでもあらへんしのッ!」
「あわわわわわわッ!? さ、三人がかりなんて卑怯ですよ! せめて一対一でぇーッ!!」
「お前、【ジェマの騎士】だろう?
…だったら相手はそれ相応の悪役じゃねぇとシマらねぇよなッ!!」
「えー、ちょっと、まじ? たかだか蛆虫三匹相手にもう息切れなの?
それでも男? 股にアレ付いてんの? ダメでもゴミ溜めでも無いって証明したいなら、
一発逆転の超必殺技でもぶっ放してみなよ★」
【エンチャントダイナモ(湧き立つ轟鳴の烈気)】、【モダレイション(柔らかな水流の護り)】、
【イミディエット(疾風神行)】と………
攻撃力、防御力、敏捷性、これだけ重ねがけて高めて、ようやく五分五分で競り合える。
カールも今回は最初から全力攻撃だ。
なにせ相手に回すランディは、聖剣【エクセルシス】を振るう伝説の英雄なのだから、
それだけ戦力を重ねに重ねても卑怯には何もなるまい。
「ほらほら〜♪ そんなチマチマした動きじゃアクビが出た上に蝿が止まるぜぇ〜?」
「この男…! デタラメにすばしっこい………ッ!!」
「姉ちゃん、集中を乱したら負けだッ!
このスカシ男、オイラたちの集中を乱すのが目的なんだ!!」
「見た目と違って頭い〜じゃないの、おチビちゃん。
だけど、俺の目的がわかったところで対処できなきゃ、おんなじじゃん♪」
「チビって言うなぁぁぁッ!!!!」
「他人を窘める前にあなたも落ち着きなさいッ!!」
「“THEダメんず”と同じでこっちも既にピンチの予感?
ワタシは人事ミスを犯しましたかっ? 今度の【ジェマの騎士】は不作でござんしたかっ?
“アナフィラキシー雄闘雌(オトメ)”も“電波的少年と書いて『ドり〜ま〜』と読む”も
スピードしか能が無さそげなヤツ相手に情けないぞぉ〜★」
鞭と魔法で誰よりも激しい攻撃を繰り出すプリムと、魔力をアレンジした【魔弾】を射出するポポイは、
精霊との交信を妨害するほど素早く、トリッキーなホークアイがマークした。
炸薬を使った爆撃、クナイでの目にも留まらぬ連続攻撃、【魔弾】に対抗した手裏剣での投擲、
詠唱や韻を組むための時間が必要不可欠な魔法使いにとって、これほど戦いにくい相手はいない。
リースは情況に応じて劣勢を強いられるグループへサポートに入り、その傍らで、レイライネス(精霊戦士)の真価を発揮した。
彼女が備える特殊技術は、精霊との憑依を必要とせず、素早く魔法を発動させる事にある。
しかし、これはレイライネスにとって、まだまだ序の口の戦闘技術だったのだ。
「【ウンディーネ】よッ、
母なるアネクメーネを穢せし呪魂の霊群を汝の聖き冽水にて討ち祓い給えッ!」
「―――【イーサネット(精霊力の深層同調)】ッ!?
まさか現代へ極限階梯の秘術を継承する人間がいるなんて…ッ!?」
「行きますッ!! 【エスト・ガイザー】ッ!!」
リースの切り札に感づいたプリムの驚愕は、銀槍へ宿る水の精霊【ウンディーネ】が
どこからともなく死火山へ呼び出した大津波の前に押し流された。
【イーサネット】とは、人間へ精霊を憑依させる従来の【プロキシ】の逆回し。
精霊を自然界へ融合させ、作用する魔力の影響力を爆発的に引き上げる秘術中の秘術だ。
精霊自体がそもそも自然界より生まれ出た存在なので、正確には融合ではなく回帰。
母なる自然界と一つに回帰する事で、普段は行き届かない深層まで魔力をシンクロさせた攻撃の前には、
いかに【ジェマの騎士】と言えども痛恨の一撃は免れない。
「悪党共めッ! こちらが下手に出ていれば、いい気になって好き放題…ッ!」
「好き放題やってくれたのはそちらでは無いですかっ!
あなたたちのような傍若無人な輩には絶対に負けませんっ!」
「おおおッ!! 見物だ、見物ッ!! “アナフィラキシー雄闘雌”と“最終兵器奇女”の一本勝負だぁッ!!
唸れ、マイクパフォーマンスッ!! 轟け、ゴングッ!!
さぁさぁ、薄汚い髪を振り乱せッ! ただでさえブサイクな顔を歪めろッ!
観衆(ていうかワタシ)はキミたちの醜い取っ組み合いを望んでいるぅぅぅぅぅぅッ★」
「―――ってゆーか、うぜぇよ、コイツッ!! さっきから便所蝿みたいにブンブンブンブンとぉッ!!
しかも、なんだって? “アナフィラキシー雄闘雌”? もしかしてニックネームのつもりか?
世界で一番愛せねぇっつの、そんなニックネームッ!!
しかもリースちゃんにまで勝手に名前つけちゃってさぁッ!!」
「キミのがうぜーよ、“チンカス”。キミ、まじで殺すからね。
つか五体バラバラにされたくらいで済むと思わないでね★
未来永劫、生まれ変わる度にボウフラにしてやるから。一瞬で終わる命を無限にエンジョイしなね★」
「エンジョイできるかっ!! ………って、なんか俺のニックネーム、おかしくない?
なんか普通の悪口じゃんッ! キャラクターリスティック何一つ捉えてないじゃんッ!!」
「キミねぇ、いい加減黙らないと、口ン中に石ころ詰めてアッパーカット食らわすよ?
それとも永久歯を一本一本麻酔抜きでへし折ってやろうか?」
とはいえ、津波で押しつぶされたくらいでは【ジェマの騎士】が(+ボロクソに言われたホークアイが)
引き下がるわけがない。
プライドの高いプリムなどは、一般人と侮った連中に圧倒される現実を認められず、
「もう勝負なんてやめて、みんなでドン・ペリのところへ行こうよ」と弱音をこぼすランディの尻を
思いっきり鞭で打ち据えた。
「情けねぇ野郎だなッ…、【ジェマの騎士】が聴いて呆れるぜッ!!」
「ぼッ、僕だってなりたくて勇者になったわけじゃないッ!!」
「せやったら、そのしょぼくれたドタマ死火山に沈めて、とっととくたばらんかいッ!!」
「ちッ、ちくしょうッ、ちくしょうッ!! こうなったらやってやる、やってやるぞッ!!」
地底へ続く路下がり、隆起した路を上がり、最奥部へ続く道中、全員全力疾走しながらの攻防が繰り広げられる。
ある時は仕掛けられたトラップへ相手を突き出し、ある時は切り立った断層へ相手を突き落として。
激突に集中するあまり、死火山内へはびこるモンスターなど気付かない内にまとめて一蹴だ。
「このッ、てめえ!! 軟弱者にしちゃ、なかなかやるじゃねぇかッ!!」
「う、うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁッ!!」
走りっぱなしでの戦いという無茶など、最初の5分ですぐさま体力・気力共に尽き果てると思われたが、
そこは【ジェマの騎士】の意地で食いしばり、そこは曲げがたい信念で追いすがり、
持久戦などというレベルを超えたぶつかり合いは、賢者【ドン・ペリ】の座する部屋へ
比喩でなく文字の通りに転がり込むまで続いた。
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