■あらすじ


■企画概要

■世界観の背景

■正式タイトル発表に寄せて


トロイメライ
〜その声を忘れないから〜
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■世界観の背景

1.舞台世界
物語の主な舞台は地球と極めて近い惑星環境や生態系を持った異世界『エンディニオン』です。
文明の水準は現実世界で例えるところの2000年〜2010年程度。
近代から近未来の文明レベルが基準です(もちろん細かい部分に差異はありますが)。
主な舞台世界を現代と大差のない文明レベルへ設定する事で読者と作品世界との感性・視点の距離を近付け、これによって本編中に登場する難民問題ほか社会が抱えるテーマをよりストレートに伝えられると思います。

もう一つの舞台となるのが、同じ『エンディニオン』の名前を称しながらも文明や科学力の水準が格段に高く、現代レベルでは完成不可能な機械が氾濫するSFタッチの世界。
この“もう一つの『エンディニオン』”から主人公たちの暮らす世界へ難民たちが漂着します。
が、正体不明の次元間移動によって転送されるのは人間だけではなく、“もう一つの『エンディニオン』”の建造物や地殻も難民同様に主人公たちの暮らす世界へ漂着していきます。まるで元ある世界を塗り潰すかの様に。
異世界の侵食の原因究明の為、中盤以降、主人公たちは“もう一つの『エンディニオン』”へ直接乗り込みます。

また、便宜的に主人公たちの暮らす現代風の『エンディニオン』を『アルト(旧いエンディニオン)』、難民たちが暮らしていた未来的な『エンディニオン』を『ノイ(新しいエンディニオン)』と呼称し、区別されます。

『アルト』と『ノイ』、二つの『エンディニオン』は、今でこそ次元を隔てていますが、元は一つの世界です。
しかし、十年前、規模が惑星全体に及ぶある実験が臨界事故を起こした事によって次元に断裂が発生し、別々の時空へ切り離されてしまいました。
分裂の様相は極めて特異で、単純に大陸や地表が寸断されただけでなく、例えば『アルト』には道路があるのに車といった自走機械が存在せず、『ノイ』には自動車等が存在してもそれを走らせる道路が無いという具合に、
“あちらにある物がこちらに無くて、こちらに無い物があちらにある”というチグハグな状態です。
自動車と道路は一例ですが、主に二組で一対になっている物が別々の世界に分かれてしまっています。
『アルト』と『ノイ』は、まさしく二つで一つの『エンディニオン』という現状です。

『ノイ』側から難民が迷い込むにつれて、『アルト』側の世界にも変化が現れ始めます。
それまでは記録にこそ残っているものの、存在すらしていなかった自走機械が『アルト』各所で発見されたりと、
欠けていた『ノイ』側のピースが徐々に組み合わさっていき、最終回には『アルト』と『ノイ』は完全に一つに合わさり、あるべき姿の『エンディニオン』を取り戻します。

『ノイ』と『アルト』の融合は物語全体を通して描かれる肝の部分。
二つの世界が一つに戻った際に生じる利権争いや文明間のギャップ、そこから来る差別的な序列などの異種族同士の争いを、同様の問題を取り上げた既存作よりもシビアに描いていきます。

・朔神栞作成のイメージボードの一部




2.特別なチカラ【トラウム】
『アルト』へ住む人間のみに備わる異能として【トラウム】が挙げられます。
これは、何も無い空間から銃器や自転車と言った様々な物質、機材を作り出せるという能力で、その人が深層心理で願う物を具現化すると言われています。
そうした背景から、【トラウム】は、物質具現化の能力およびそれによって生み出された物質の総称として用いられています。
また、原則として一人につき一つの【トラウム】が備わり、一度作り出した物質が別の存在へ変化する類例は今までに見当たらず、二つ以上の【トラウム】を手にした者も存在していません。
ただし、【トラウム】を形成できない不適合者は何人かケースが見られています。
【トラウム】を具現化できる様になるタイミングや時期は人によって異なりますので、
現時点で形成できなくても一概に不適合者とは断定できないのですが、この形容詞は、
主に侮辱や自嘲として用いられています。

また、十年前に【グラウンド=ゼロ】と呼ばれるクレーター地帯から正体不明の水晶体【星詠みの石】が出土したのと
人間に【トラウム】が宿った時期が極めて重なっている為、二つの関連性を研究し、
「どうして人間は【トラウム】を得たのか」という謎を解析しようと言う動きが見られています。
特に【星詠みの石】については、自分たちの仮説と“旧人類”の存在の信憑性を結びつける鍵になるとして、特に考古学会が研究に力を注いでいます。

・半券作成のコンセプトをデザインされたトラウムの一部





3.魔獣(クリッター)
『アルト』、『ノイ』どちらの世界にも人里離れた地域へ獰猛な魔獣が生息しています。
鋼の皮膚と動物性の筋肉組成に戦闘機械めいた異能を併せ持つ魔獣は人間や動物を襲撃し、その血肉を喰らう事から人類の天敵と承認されており、殺獣手段の研究と開発が両世界で進められています。

厄介な存在である魔獣どもが、いつ、どこからやって来たのかを問う声は多く、その起源を探る学者も多いのですが、
誕生の真相や進化の過程を現代に知らせるべき化石等の資料が全く発見されず、
古い残骸が出土する様になったのもここ数世紀から。正体は今もって不明のままです。

どこからともなくやって来た魔獣どもは、実は宇宙から飛来した侵略者あるいは怪獣ではないか、と提唱する珍説がいつの間にか一般へ浸透し、“空より降りたる破壊の衝動”という意味を持つ『クリッター』と呼称される様になりました。

『アルト』では有機廃棄物を根城にする姿も目撃されており、やはり学者たちが旧人類証明の材料として注目しています。

・かにきめらの手がけたモンスターデザインの一部