4.夜は暗く



 セフィの容態が一段落したこともあり、一同には安堵の様子がうかがえたが、
当面の問題である仮面の兵団の侵攻に関しては、まだ何も解決すべき手段は見当たらなかった。
 相手が本格的に軍事展開を始める前に、逆にこちらから攻撃を仕掛けてみてはどうか、という意見も上がったが、
相手の兵力がどれくらいのものかが分からないし、自分たちで何とかしようにも多勢に無勢であろうことは明らかであった。
 ジョゼフが有している警備員――というよりは装備諸々の面からみて、私設軍隊と言った方が近いが――を動員したとしても、
事の帰趨の判断は容易なものではなかった。

「結局、あいつらは一体何者なんだろうね、アル兄ィ?」
「それが分かっていたらこうも悩んでいないんだがな。
なにせ、あの集団が攻めてくることが予知できていたジューダス・ローブ…いや、セフィはこの有様だ」

 マリスのリインカネーションの力で危機的状況は脱したセフィだったが、意識はまだ戻ってこない。
できる事ならば無理やりにでも叩き起こしてでも何か有益な情報を聞き出したかったが、
どうにもそうするのはアルフレッドとしても躊躇われた。
 セフィを起こしても満足に話ができるかどうか分からないという以上に、
仲間だった者――もしかすると、セフィにとっては表面上の関係だったのかも知れないが――に無体なまねを働くというのが
アルフレッドの思いにブレーキをかけたのだ。
 彼だけでなく、大方が同じような思いであったろう。
 唯一ヒューだけは、「ひっぱたいてでも聞き出してやる」と口にしていたものだが、
フィーナやハーヴェストに止められると案外あっさり引き下がった。彼も彼なりに思うところがあったのだ。

 仮面の兵団の侵攻に関しては、予知できるところのあったセフィではあったが、
彼がいまだに眠りから覚めない以上、敵の正体は皆目不明。
有効な情報が取れないとあっては、将来に対しての的確な行動を起こすことなどできはしない。
 ひとまずアルフレッドは、周囲との協議の結果、このままセント・カノンで休息をとることにした。
何か手を考えるにしても皆が疲弊していてはどうにもならない。
 特にマリスは、強力なトラウムを発動させたからなのか、長らく緊張状態にあったからなのか、
アルフレッドがふと目をやった時には椅子にもたれかかったまま寝てしまうほどに疲労していた。
 「今からルナゲイトに戻ってあいつらに一泡吹かせてやらなきゃ気が済まない」と血気にはやっていたシェインも、
周囲の様子を見るにつけ、さすがにそれは無茶な事だと理解し、椅子の背もたれに寄りかかってふっと力を抜いた。


 ジョゼフが言っていたように、アルフレッドらが判断したように、
戦略的には大した価値は無いであろうこの場所へ仮面の兵団が攻めてくることになる可能性は低い。
 だが、万が一ということも考えられる。そうなれば全員が一様に休息を取っていると最悪の事態になりかねない。
 だから、もしもの時に備えて、敵が攻めてきた際には一刻も早く撤退ができるよう、
各々が持ち場を分担して交代交代でセント・カノンの見張りを行うことになったのだ。
 その決定が下された直後にホゥリーには戦力外通告がなされたのだが、これは余談。


「何か変わった事は無いか?」
「見ての通り何にもあらへん。御老公が言うたように、こないな辺鄙な場所にやって来るような物好きはおらんやろ。
だからっちゅうて手ぇ抜くようなマネはせんさかい、心配はせんといてくれや」

 アミダくじで見張りの場所を決めた結果、アルフレッドはローガンと組んで村はずれの警備をしていた。
 アルフレッドが一通り見回りをしてはみたものの、特に何かがあるというわけではない。
強いて挙げるのならばネコが二匹、縄張り争いをしていたくらいだ。
 ここセント・カノンは平穏そのものである。
 ローガンにも変わった事はないかと聞いてはみたが、彼の方もアルフレッドと同様に何も問題は発見できなかった。

「そうなのか? 言っては悪いかもしれないが、そう聞かされてもどこか信用できないな」

 アルフレッドがそのように言い出したのには理由がある。
 「きちんと見張っている」とは言ったものの、ローガンの様子からは緊張感の類は全く見受けられない。
この別荘地、セント・カノンへ本当にバカンスにきているみたいな、そんなリラックスしたような雰囲気だった。
 いくら敵が攻めてくる可能性が低いからといって、
ここまで鷹揚に構えられるというのも大したものだとアルフレッドは思ったがそれはともかく、
本当にこれで不測の事態に対応できるのか、と彼がいぶかしんだのも無理は無い。

「そりゃご挨拶やな。こないな時やからピリピリすんのも無理は無いこととは思うとるけど、ワイはきちんとやっとるで。
ああ、この動きが原因やって言いたい顔やな?
ま、あれや。非常事態だろうと何やろうと、毎日同じ事をするっちゅうのが肝心なわけやな。
どないな時でも行動を一貫することで、じっくり平常心を鍛えるっちゅうこっちゃ。
何があろうとも心を乱すことなく行動できなあかん、ちゅうことやな。
格好ええ言い方をすれば、怒りに身を任せず、恐れに屈せず、川の流れと一体化するようにあるがまま、なんてな」

 本当に不意の事態に対応できるのかと問いかけているつもりのアルフレッドに対して、
ローガンは動きを止めないまま平常心の大切さを説く。
 話が?み合っていないのは明らかなのだが、それでもアルフレッドは、
ローガンの言った「平常心」に関して、彼は何かを感じ取るところがあった。
 自分の目論見が外れた時に感じる後悔や焦りといったものに、心を乱されていたことがあるのは自覚している。
ローガンが言うように、いかなる時にでも変わらない心境で事にあたることができれば、
概念的なものとして時々感じている自分を覆う殻を、破れるかもしれない。

「あるがまま、か。何とも遠くにある境地だな」

 アルフレッドは呟くようにローガンの言葉を反芻した。

「お前は不安にはならないのか? ………お前の仲間はあいつらに………」

 ローガンの説いたことには納得できる部分も多い。
メンタル・コントロールの方法論としては一つの到達点のようにさえ思えるのだ…が、
一方であまりにも人間味を欠いた気構えの作り方ではないか、とも考えてしまう。
 我ながらひねくれ者だと自覚はあるのだが、さりとて意識し始めたことを抑制できるほど器用でもない。
 ローガンの仲間―――サミットの警護に参加していたスカッド・フリーダムのメンバーは、
突如として襲来した仮面の兵団によって、その殆どが射殺されてしまっている。
 極限の状況であった為、完全な形で確認できたわけではないものの、生存者は絶望的な見通しだ。
隊を率いていたシュガーレイ・ニューラグーンとも未だに連絡は取れていない。
 そうした状況下であっても“あるがままの自分”を堅持できるのは、犠牲になった命に対して酷薄で、
ともすれば無責任ではないかとアルフレッドには思えてならないのだ。
 ジューダス・ローブ…セフィとの決戦の折に犠牲者数を計算し、これを仲間たちから批難された身ではあるが、
だからと言って命を捨石のように見なした覚えもなかった。

「そらひとりでも多く生きててくれたほうが嬉しいに決まっとるがな。せやけど、願掛けしとるだけでええっちゅーことでもないやろ。
ワイもあいつらも、いつくたばるかわからん世界に生きとるんや。
覚悟決めて生きとるヤツへ命を大切に…なんて説いてみ? 笑われてしまうがな」

 ローガンからの返答は、アルフレッドをまたしても驚かせた。

「こないなアタマになっとると、そら冷たい言われることもあるんやで。ダチに死ねと言うんかっちゅーてな。
確かに無駄なことで命を落とすんはアホらしいで。アホ極まりないこっちゃ。
せやけど、自分の意思を貫いて死んだヤツのことは、ワイは誉めたってもええと思うとんねん」
「………本懐、と言うやつか?」
「そんな大仰なこととちゃうねん。要は、先に逝ったヤツらのことを忘れないでおったら、ええっちゅーこっちゃ。
どうやって生きたのかをな。それが遺されたモンの務めやさかい」
「ローガン………」
「いつくたばってもええように後悔せん生き方をする。こないな言い方をしたら後ろ向きに聞こえるかも知れんけんど、
生きるのと死ぬのとが鼻先で飛び交っとるような世界では、案外、こっちのほうが気楽に生きられるんやで」
「………そう言うもの、なの…か?」
「オススメはせぇへんけどな。アルの得意な軍略っちゅーもんとは、似て非なる考え方や」
「………………………」

 「せやから、命拾うたセフィにはしぶとく生きてもらわんとあかんねん」と締めくくったローガンの背中が、
アルフレッドにはとても大きく見えた。彼の担ぐ“ベテラン冒険者”と言う肩書きの重みを、
このときになって初めて意識したと言っても良い。
 果てしなく明るい性格のせいか、苛烈な世界とは無縁のように見えるローガンも、
実際には自分たちのような駆け出しの冒険者が経験したことのない修羅場を数多く潜ってきている筈だ。
 だからこそ、このような事態に陥っても“あるがままの自分”がブレないのである。
それだけの胆力を彼は長年の経験から培っているのだから。
 個人の感傷に拘泥した挙句、彼の器量を侮ってしまったことがアルフレッドには恥ずかしく思えてならなかった。
 それと同時に、経験と実力に裏打ちされたローガンの肝の太さが一等頼もしい。

「深刻に考えることもあらへんで? ワイはお前たちに骨拾って貰えるだけでええんやから」
「断る。………仲間の犠牲を容易く割り切れるほど、俺は“人間”が出来ていない」
「可愛いこと言うてくれるやん。図太さやったらワイに任しとき! 人より何倍もしぶといでぇッ!」

 野太く、温かい腕でもってローガンがアルフレッドの背中を叩く。
軽率な発言を謝り、また、「そう簡単にくたばったりせぇへんがな」と励ますように、何度も何度も。
 ローガンの強さを感じながらアルフレッドは再び見回りに戻っていった。







 夜が更けゆく中、厳選なる抽選の結果をもって、シェインはフツノミタマと組を作って、見張りの役目にあたっていた。
 とはいえ、アルフレッドらの場合と同様に、特に異変があるわけでもなく、
やはりセント・カノンは武装集団の襲撃からは無関係だといった感じで、極めて静かなものだった。
 非常時に言うべきことではないのかもしれないが、暇なのである。

 余暇を得て初めて故郷への連絡を失念していたことに気付いたシェインは、
一先ずクラップ宛に仮面の兵団が来襲した旨をメールしておいた。くれぐれも注意するように、と。
 今もまだ電話は通じない。メールとて無事に届く保証もないのだが、
いつになるとも知れない電話回線の復旧を待つより遙かに可能性は高い筈だ。
 祈るような気持ちでシェインは送信ボタンを押した。
 一瞬、ベルのことが気に掛かったが、ライアン家にはフィーナのほうから何らかの形で連絡を付けることだろう。
そうしたことに無頓着なアルフレッドには、連絡は全く期待していない。

 メールを打ち終えると、いよいよシェインはすることがなくなった。
かと言って、隣にいるフツノミタマと会話が弾んでいるわけでもない。
 このまま黙っていたままでは間が持たないからなのか、シェインはフツノミタマに話しかけてみた。

「オヤジさ、あいつらはここにくると思うかい? もし来ないならあいつらは次にどこを攻めると思う?」
「バカか、そんな事オレが分かるわけねえだろ。そんな事はあいつら本人に聞けよ。っていってもいねえけどな」
「そういう意味で聞いたんじゃないんだけどな。いや、そりゃその通りなんだけどさあ。
っていうか、子供相手に身も蓋も無い言い方だなあ」
「ああん? 思った事を口に出しただけじゃねえか。それの何が悪いってんだよ? 
オレは超能力者じゃねえんだ、テメェの気持ちまで読めるわきゃねえだろ。
と言ってやりたいてえところだがな、これくらいなら分からなくもねえ。当ててやろうか? 
あいつらがどこに行くのかが分からない。もしかしたら自分の村かもしれない。
そんな事になったらどうしよう、ああ大変だ、困った、困った、ってところか?」
「何だよ、ちゃんと察してるんじゃないか。空気を読めないくせに人の心は読めるんだな。
まったくもう、鈍いんだか鋭いんだか分からないな、このオヤジは」
「だから『オヤジ』はよせっつってんだろ。こっちはまだ二十代だ」
「はいはい、悪うございましたね」

 フツノミタマに自分が思っていたことを的確に当てられたことで、シェインは言わなくても良い口をきく。
 気丈にふるまってはいたものの、やはり動揺は隠しきれるものではなかった。
 ともかく、あの武装集団の次の目標はもしかしたらグリーニャなのかもしれない。
そう考えるとシェインは気が気ではなかった。
 自分の生まれ育った村が何者かによって無慈悲に蹂躙されるなんてことは耐えられるはずも無い。
 さらにはグリーニャにはまだ何も知らないであろう村人たちがいるのだ。
仮に村が襲撃されてしまったとしたら――

 シェインの脳裏には村人たちの顔が浮かび上がった。
カッツェやルノアリーナ、クラップ、それからベル――。
 何故、自分の意識下を占めるベルの割合が増えてきたのかに、
自分を納得させられるだけの理由を与えることも出来なかったシェインは、
内面の意識が引き起こしたえも言われない感情を、外部へと上手く発することができず、しばし下を向いたまま沈黙していた。
 そんな彼の反応が面白かったのか、フツノミタマとしてはもう少しいじめてやろうかという悪戯心みたいなものが湧き上る。
 日ごろからぼろくそに言われ続けてきた意趣返しというつもりなのだろうか、
子供相手に大人げないというか悪趣味というか、それはともかくフツノミタマはさらにシェインへ言葉をかける。

「こんな状況下でテメェみてえなガキが考えることなんざ一つしかねえだろ。
何だかんだ勇ましいこと言っている割にはホームシックか。やっぱりガキはガキだな」

 フツノミタマはそう言ってニヤリと口元を歪めながらシェインを横目で見る。
 大方、彼の言うとおりだったシェインは、返す言葉も無くフツノミタマを睨み付けるだけだった。
 それでも、このままやり込められるのも癪だと、大人しく引き下がるわけにはいかないという思いから、
シェインは半ばむきになってフツノミタマに言い返す。

「それが悪いのかよ。自分が大事に思っている人たちの事を心配して何がいけないんだ? 
あんたはあれか? 大事な人なんか一人もいないから他人をバカにできるのかよ?
やっぱり場の空気も人の心も読めないんだな、あんたは」
「大事なやつ、ときたか…… 今となっちゃ昔の事、ってやつだなあ……」
「どういう事だよ、急に柄にも無く遠い目なんかしちゃってさ。気持ち悪いじゃないか」
「言わせるのかよ、おい。テメェ以前オレに言ったじゃねえか、『行間を読め』ってよ。つまりはあれと同じだ」
「……。悪かったよ、余計なこと言っちゃって……」

 シェインからしてみたら、自分をからかうフツノミタマへのちょっとした反撃のつもりだったが、
しかしその言葉は彼に思わぬ影響を与えてしまった。
 こんなフツノミタマでも知られたくない過去の一つや二つはあるのだろう。
 あれだけ年少者の言葉にも突っかかってくる彼が何も言い返しはしないだなんて、とシェインも言葉に詰まってしまった。
 触れられたくない過去に触れてしまったのか、とシェインは反省した。
そうしてから、少し逡巡した後で、悪い事を言ってしまったとフツノミタマに謝った。
 そういう必要は無かったのかもしれないが、しかしシェインはそうしたくなった。

「そっちこそ柄にでも無いマネすんじゃねえよ。別にテメェが謝ることじゃねえ。悪いっていうならオレが悪いんだ。
オレがしくじったからあいつは……―――」

 半ば独り言のように、呟くように、フツノミタマはぼそっとした声で言うと視線を上に向けた。
 たまに抜けたところを見せるとしても、本質的には冷酷な人間だとばかり思っていたフツノミタマが、
このように気落ちしている姿を見せるなんて、とシェインは意外に思った。
 そして自分の一言が彼をこのように傷つけてしまうとは、と随分と気まずく思った。
 「行間を読め」という言葉もあって、詳しい話を聞くのはどうしたって躊躇われたが、それでも推測はできる。
おそらく彼は昔、大切な人を亡くしていたのであろう。
 長いこと裏の稼業に携わりながら、その間に自らも喪失の痛みを受けていたなんて。
随分と波乱に満ちた人生だと、そんな事を考える余裕は今のシェインには無かった。
 シェインが亡くした“大切な人”は、言わずもがな両親である。
仮に亡くなったのが自分であったら、父母もフツノミタマのような感情に囚われていたのだろうか。
折に触れて亡くした人―――自分へ想いを馳せてくれただろうか。
 遠く…遥か彼方を見つめながら、ガラにもなく寂しげな表情を浮かべているこの男のように。

(前にオヤジは“タテナシ”って言っていた。………それって、亡くした人の名前なのか、な………)

 月下の大橋でアルフレッドと最後に決闘した折、フツノミタマは自分に向かって“タテナシ”と呼びかけた。
 いや、正しくは呼びかけられたわけではない。自分は声の発せられた位置には居たのだが、
しかし、彼の心は間違いなく遠い彼方に飛んでいた。
 あれは誰かに自分を重ねていたのではないだろうか。重なった面影に、その名を呼びかけてしまったのではないか。
 狼狽と動揺を満面に浮かべたフツノミタマは、それだけでも自身の意思であの言葉を発したわけではないのだと判る。
反射的に、無意識の内に、“タテナシ”と漏らしてしまったのだ、と。

「………………………」
「………………………」

 あれこれと考えが頭の中を飛び交って、フツノミタマに何を言うべきなのかまで思考の余地が無かった。
シェインには語るべき言葉が出てこず、二人の間には沈黙が訪れた。

「気持ちは分かる、なんて言うつもりは無いけどさ、残された人の辛さっていうのはキツいもんだよな。
だからこそさ、ボクたちはこの先何があったってあんたを置いてきぼりになんかしないさ。
ボクたちは仲間なんだ、ずっと一緒にいこうじゃないか」

 意を決し、シェインは自分の思いの丈を素直にフツノミタマへぶつけた。
 この言葉が妥当かどうかは分からなかったが、それでも何か言わなければいけないような気がした。

「………けっ、ガキのクセに生意気なこと言うじゃねーか」
「ガキんちょだからこそ、逆に生意気な口をきいてもいいんじゃないかな?」
「おうおう、お子様の特権を振りかざしやがって」

 シェインの精一杯の励ましに、顔を背けつつ、フツノミタマは鼻で笑って返した。
いつもと変わらない言葉使いではあったものの、彼の話ぶりはいつもと違ってどこか柔らかかった。
 何事にも前向きに、困難な状況下でも明るさを忘れないシェインに、
フツノミタマは彼の心の中にある漠然とした説明し難い感情が薄らいでいくように感じられた。

(「生きがい」を無くしちまったっていうなら、また新しい「生きがい」ってのが人間には必要なのかもしれねえな……)




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